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2章

モテてる? その2

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 一方、使徒たちは、そんな俺を気に入らないみたい。

「ヒトミと朝帰りしやがった……」
「誰の奴隷だと思ってるんだ?」 
「一番良いので遊びやがって」

 別の意味でザワついてるぞ。
 さらに。

「ヒトミはファザコンだったのか」(ヒソヒソ)
「美人なのに趣味わるう」(ヒソヒソ)
「んじゃあ、俺でもいけるか」(ヒソヒソ)

 ヒトミさんがくすっと笑ったよ。
 心が丸見えだから。

 食事中だった大司教さんが俺に気づいた。
 慌ててはしを置き、俺の側まで小走りでやってきたよ。

「これはこれは、ヒジカタさま。わざわざ、ありがとうございました」

「こちらこそ、ヒトミさんを長い間お借りして、申し訳ない。おかげで助かりました」

「ヒジカタさまなら、いつまででも結構ですよ」

 いつまでも……って。
 問題発言だよ。
 奴隷さんと使徒たちがザワザワしている。
     
 まあ、とにかくみなさん、元気そうでなによりだね。
 呪縛の法術除去後、いきなり可愛くなった奴隷さんたちに、使徒たちがエッチなことをするかもしれないって心配だったけど、彼らは曲がりなりにも神に仕える人たちだもん、俺の取り越し苦労だったみたい。
 まあ、美人だからちょっかいは出してくるだろうけれど、普通の男性なら当然だろうし。
 節度を守った接し方ならOKだよね。 

「ヒジカタさま。よかったら召し上がりませんか? 我がヴァーチェ国ならではの食事ですが」

 複雑な模様のレースが敷かれた長テーブルの上には、日本でお馴染みの、お椀に味噌汁、茶碗にホカホカご飯、湯のみに緑茶、日本酒の香り漂う徳利とっくりさかずきが置かれ、メインの金目鯛らしき煮物がお皿に盛られ、小鉢に刺し身まであった。
 
「い、いいんですか!」

 実は、部屋に入った時から釘付けだったんだよね。

「もちろん、ですとも。
 我は生涯何処にいようとも、ヒジカタさまに感謝の念を捧げますぞ。
 ああ……どんなに言葉を並べても足りない」

 大司教さんが、俺に向かってお祈りポーズをする。

「いや、もう、それくらいで」

 慌てて止めてもらったけど、見逃さなかった使徒数名。

 大司教さまが感謝するほど、この庶民ヒジカタがすこいのか? どこが? 信じられん。
 そんな感情で使徒たちに注目されている俺。
 
 奴隷さんたちも聞き逃さなかったみたい。
 熱い視線で見つめられ、中にはうっとりする娘、ため息を洩らす娘、俺と視線がぶつかり、ぽん! と蒸気が出そうなほど紅潮した娘もいる。
 みんな、そわそわしたような、俺に何かしら期待を孕んだオーラを膨らませているけど。
 まさかモテてるわけないよね。
 35歳のイケメンでもないこの俺が。

「ささ、ヒジカタさま、こちらへ!」

「すいませんね、司教さん」
 
 俺は大司教の隣の席で、日本に似た食事をご馳走になったよ。

 久々に箸で食べる和食は、懐かしくて感動。
 でも綺麗な奴隷さんたちに、チラ見され緊張もしたね。

「あれ? 司教さんの左隣は」

「ああ、ここは……」

 テーブルに並べられた料理の量だけど、俺や司教さん、他の誰と比べても器の数が3倍で、それに酷く食い散らかした感じ。 
 使徒の誰かが、『どか食い5歳児の仕業だろ』と呟いたよ。
 
 どか食い5歳児?

「まさか、ランちゃん……」

「いやー」

 申し訳なさそうに苦笑いした大司教さんが言うには、俺が来たと知った瞬間、超スピードで帰ったそうだよ。
 


 ヒトミさんは、メグミさんたちと一緒に食事。 
 ちゃっかりケイジが隣の席に陣取って、ヒトミさんにしつこく話しかけているね。

 ヒトミさんが、俺の方を向いて苦笑い。
 あ~、なるほど。
 どうして、昨夜帰って来なかったんだ? なんて言われてるのかな。

 ふと、1人の奴隷少女だけが箸を置いたまま怖い顔して、ヒトミさんとケイジの様子を睨みつけるように見ていた。
 身長は150センチくらいかな。
 小顔で大きなブルーの瞳が印象的。
 オレンジ色の花柄ワンピースを着ていて、透明感溢れる色白美少女だ。  


 ◆


 アンフィニ大司教さん御一行は、『ツェーン結界強化完成祝賀会』を終えたら、ヴァーチェ国に帰るそうだ。
 ヒトミさんがキキン国にいるのは、後3日か……。

 食事を終え、ヒトミさんに挨拶して帰ろうと思ったら、姿がなかった。
 トイレかな?
 
 妹のメグミさんがいたので訊ねたら、ヒトミさんは使徒のケイジに散歩に誘われたそうだ。
 昨夜の食事をすっぽかしてるし、断り切れなかったらしく、10分前に出かけたと言ったよ。

「散歩か……」

「心配ですか、ヒジカタ様」

「いや、まあ」

「いいな~、いいな~♪ お姉ちゃんだけ素敵な彼氏ができて」

 彼氏と思われてるんだ。
 うれしいね。

「メグミさんだって直ぐに彼氏ができますよ、ヒトミさんに負けず劣らず美人だからね」

 否定せずに『メグミさんだって』と言っちゃったよ。
 超、恥ずかしいね。

「へーっ、じゃ、メグミにもあるんだ~チャンス」
 
 小悪魔ぽく、ウインクした18歳のメグミさん。日本だったら女子高生だよね。
 じゅうぶん過ぎるほど発育した胸を押し付けてきて、首に手までまわしたけど……。

「……チャンス?」

「うん♪ 立候補してもいいよね? ヒジカタ様の奴隷ちゃんに~」

「え、ええっ!?」

 よく見たら、メグミさんの両隣からも、愛くるしい奴隷さん2名がニコニコしながら近寄ってきてる。

「大司教さまも一目置かれるヒジカタさま……わたしたちも、いいでしょうか」

 あのねえ。
 
 逃げるように食堂を出た俺は、豪華ホテルみたいな真っ赤なカーペットを走ったね。
 なんでって?

「あ~ん。メグミも追いかけちゃう♪」

 だからだよ。
 横の通路に入り、天井に張り付きスライム化して高速移動。

「あれ~、いないよ、ヒジカタ様~。メグミのヒジカタ様~」

 弱るなあ。

「奴隷は何人いても法律に触れないんだよー」

 
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