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2章
アンフィニ大司教さん
しおりを挟む「アシダダムよ。
お前が商売で勝負してくるなら、俺も商売で戦おう。
魚の調理や刺し身の技術でなら、それも良いだろう。
ただな……、市場に根回しして魚を仕入れさせないようにしたり、俺の身内を拉致したり、戦士2名と魔法使い2名で健全な魚屋さんを殺そうとしたり――」
「ど、どうして、そんなことまで……知ってんだ、お前??」
「――お前が、商売とかけ離れた部分で挑んでくるのなら……」
少しだけ、ほんの少しだけ、理解してもらおうかな。
前に立っているのは、お前に相手できるような生き物じゃないってことを。
シュン!
「……こんな感じで、お前の根性もきれいにしてあげるよ」
「え? あ……、……あ、あ、あああああああああああああああああ!!!」
アシダダムが腰を抜かして地べたに座り込んだよ。
黄ばんでいた白衣を、真っ白にしてあげたからね。
どうやったかって?
はい。
まずアシダダムに近寄って白衣を脱がし、その白衣を持って魚屋店舗まで帰り、裏庭でゴシゴシ洗濯したよ。
汚れが落ちたら、高速ダッシュで町を2周して乾かし、ここに戻って来てアシダダムに着せたわけ。
ざっと0,02秒かな。
「裾がほつれていたから、ついでに縫っといた。有りがたく思えよ」
「お、おまい……」
「お前だろ」
「どうやって……」
「だから、魔法だって言っただろう。記憶力ないのか?」
「まっ……魔法でこんな芸当ができるわけないだろ!」
この世界の魔法が、どんな芸をするのかはしらないよ。
そうだなあ、分かりやすく例えれば――。
「俺のは、時を止める魔法だよ。
お前が止まっている間に、いろいろしたわけね」
ナイス言い訳。
辻褄が合ってるね。
「と……時を止める……だとぉおおおおお!?」
リアクション凄いな。
「そうだね。俺の魔法は止める事、全般にできる。
例えば、聞き分けのないヤンキー料理人の、息の根も止める事もできるけど」
アシダダムが、ごっくん、と固唾を呑んだね。
クイクイ、とSSランちゃんが俺のズボンを引っ張ったよ。
「あきた」
「そうだな。店に戻ろうか?」
「うん♪」
「じゃ、アシダダム。明日、うちの店主が魚市場に行ったら、以前みたいに買い付けが出来るよう、手続きしておいてね」
アシダダムが、むぐぐぐぐ……、と下唇を噛んだよ。
ふと気づけば、俺とアシダダムの周りには人だかりが出来ていた。
「時間停止魔法……」
「聞いたことねえな」
「とにかく、すげえ。マジだ」
「ガチで大魔法使いじゃねえか、このおっさん」
「只者じゃねえ、とは思っていたが……」
「とんでもねえ魚屋だ」
なんか照れるなあ。
しかし……、どんどん人だかりが増えていく。
なんか、やってくれ、などと注文も入ってくる始末。
「やだわ、あたち、こんなに人気者になっちゃった」
ランちゃん、勘違い凄い。
「ごめんなちゃい。お店のお外でサロンシップはだめなの」
スキンシップじゃないだろうか……。
「ちょっと、ごめんね。通して下さいな~」
ランちゃんの手を引いて輪を抜けたよ。
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