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2章
最終審査 その2
しおりを挟む「そうであるが……、しかし、いったいこれは、どうやって食べるのだ?」
「はい。そのまま手で持って、ガブリと。一口でもいいですし、二口でもどうぞ」
審査員の1人が不安そうにかぶりつき、咀嚼するのを待ってから、残りの人が口へ運んだよ。
数名の眉が歪み、口元がねじれる。
「なに、この米に油っぽいものは。口に合いませんな」
「たしかに、サラダでもなく、これは」
「魚を生で食すのは美味かったが、これはやり過ぎ」
「海苔にライスは合わん」
「色んな魚の味が混ざって、流石に」
「下卑た味だ。バランスが悪い」
不評だなあ、俺の異世界版・巻き寿司。
「クックックッ……」
ヤンキー料理人があからさまに笑う。
「あーいや、悪い悪い。有名なヒジカタさまがやっちゃったもんだから、おかしくって、イッヒッヒ」
嫌なヤツだなあ。
まあ、とにかく、相手にしない。
しかし、俺の巻き寿司。
本当は粘り気がある日本米で巻けば良かったんだけど、この世界にはパサパサした米しかないんだよね。
仕方なく、少しでも水分を含ませるため、大量の水で茹でてみたよ。
出来上がりは、やっぱりパサパサ。
パサパサのお米はチャーハンにピッタリ。
そこで閃いたよ。
チャーハンを作り、冷ました後海苔に敷いて、アボガド、サーモン、本マカト、レタス、タマネギ、卵、キュウリ、ドレッシングを乗せて巻いてみたよ。
命名するなら『チャーハン海鮮巻き寿司』かな。
近所の子供たちや、魚屋店主と奥さんには好評だったし、俺もけっこう美味しいと思って食べたんだけどね。
審査員には突飛すぎたかな。
「余を待たせおって」
国王がやって来て、チャーハン海鮮巻き寿司をむんずと掴んで口に入れたんだけど。
「……むううう……」
速攻で口を尖らせ、困ったような顔をしたぞ。
やっぱり、口に合わなかったか~。
この世界の味覚の好みは難しいなあ。
「やれやれ、王もマズイのを我慢しなきゃいけねーから、たいへんだ~、ああ~たいへんだ♪」
ヤンキー料理人、ウザいんだが。
「……み、水」
なんだ。国王は喉に詰まっただけか。
審査員が急いで渡した水をゴクゴク飲んでから。
「なかなか、絶品ではないか!」
……絶品。
あれあれ?
ざわつく審査員たち。
ヤンキー料理人アシダダムも立ち上がったぞ。
みんながテーブルに集まり、俺の巻き寿司を食べ始める――。
最終候補の料理人たちが、飲み込みもせず咀嚼をやめたよ。
「な、な……う、美味い」
感動しているみたい。
料理人は良さが分かったみたい、よかったー。
アシダダムだけが俺を睨みつけてるんだけど。
「……そ……そ、そうでございましょう、やはり国王も……」
「たしかに、言われて見れば――」
「後から旨味が――」
「さっきは、前の食べ物と合わさって味覚がおかしかったのかもしれん」
「米に油っぽいのがクセになる――」
「斬新な発想だと、ワシは思って――」
審査員が手の平を返した発言を始めたよ。
「流石は王さま。最高の舌を持っておられる」
「まことよ。まことよ」
「素晴らしい品だ。私も同感!」
「私も絶賛させてもらうぞ」
「実は、最初の一口で見ぬいていたぞ、ワシは」
あのなあ。
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