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1章

新生活 

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 SSたちを連れて近くの民家を訪ねたが、誰も子供たちの顔を知らない。
 そりゃそうだよね。

「断言できませんが、隣国の子かもしれませんね。
 もう夜も深いし、子供たちは本部で寝てもらい、明日からは身元が分かるまで一旦孤児として、施設に預けるしかないんですが……」

「いやです」
「おじちゃんがいい」
「ヒジカタの近くにいるの」
「はなれない」

 俺にひっついている子供たち。 
 
「ヒジカタさんにしかなつかないのも珍しい」

 ロアンくんが困っている。

「あの……子供たちの身元がはっきり分かるまで、俺の部屋に住まわせたらダメでしょうか?」

「えっ? そうしていただけるのが1番良いとは思うのですが、迷惑ではありませんか」

「いえ、子供は好きですし。ただ店主さん。どうかな?」

 笑った店主がオッケーのサインをしたよ。

「ありがとう、本当にありがとう」

「なに言ってるんだよ。ヒジカタさんには、魚の調理から管理まで教えてもらって、俺はとても感謝している。子供が6人増えたくらい、どおってことないさ」

 
 ◆


 魚屋店舗の3階。

 12畳ほどの俺の部屋は、6人のSSたちでいっぱいだよ。
 勝手気ままに行動されたら大変だから、決まりを作ってみた。

1,人間たちにスライムだと知られてはいけない。
2,一般的な人間の子供として振る舞う。
3,全力で走ってはいけない。


 早朝。
 剣を受け取りにやってきたアハートさんを、俺の後ろから興味深く見つめるSSたち。
 アハートさんが微笑むと、いちおう微笑み返しするけど。 

「ヒジカタさまは優しいから子供になつかれるのですね。私って自分では優しく接しているつもりでも、子供から見たら、やはりそうじゃないのだわ」

「そ、そんなことないです! アハートさんはとても優しいし、す、素敵ですよっ」

「……ありがとうございます、ヒジカタさま」

 アハートさんに見つめられて照れてしまう俺を、SSたちがじぃ~~っと注目。
 頼むよ、ざわつかないで。


 朝食。
 2階の店主と奥さんの部屋に6人を引き連れてお邪魔したよ。
 ちゃぶ台を2つくっつけ、9人でアジとホッケの塩焼きを食べる。

 人間の口から食物を投入する食事スタイルは、SSたちにとって初めてなのに、普通の子供のよう上手に食べてくれたので安心したよ。
 SSたちは物覚えが良いみたい。


 1階店舗で仕事中。
 俺が調理販売しながら新人教育をするのを、SSたちは店の前から見ているよ。
 俺の姿が見えれば安心なんだね。
 ついでに「いらっしゃいませー」と呼び込みをして貰っているお陰で、今日は魚がよく売れる。
 
 お昼を過ぎた頃になると、SSたちは製氷猫をつついたり、店前で遊びだしたよ。
 馴染んだみたい。
 お客さんに飴を貰い、口の中で転がして楽しむのも覚えたよ。

 
 夜。店舗3階。 
 夕食を頂いた後は寝るだけ。
 人間化すると夜は眠くなるようで、布団に仰向けになった俺の周りにSSたちが群がって寝ている。
 
 一日の流れはざっとこんなものかな。


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