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1章
闇の世界のはずなのに?
しおりを挟む光が差し込まない洞窟の奥。
ずいぶん進んだけど、何故か薄暗いままだったよ。
そう言えば生まれ育った洞窟の中も闇なのに、ちゃんと見えていたっけ。
スライムって、そういう生物なんだろうね。
試しに人間の姿に戻ったら視界ゼロ。何にも見えないや。
じゃあ、下半身だけスライムに戻すと……?
へ~、人間の目では闇だけど、下半身に作った眼から見ることはできるんだ。
まてよ、それなら、人間の姿のままで、右手だけスライム化してみたらどうだろう。
右手に作った眼から20メートルぐらい先まで……見ることができるね。
ちなみにスライムの眼は体表を自由に移動、作成できるんだよ。
ふと後ろを見ると、SSたちが俺のマネして上半身だけ人間に姿を変えていた。
「キモいから、それ止めようね」
「「「はーい」」」
◆
100メートル進むと、洞窟が二手に分かれていたよ。
2匹づつに分かれて進むのは心細いな。
SSたちも『うんうん』言っているから揃って右の穴へ進んだね。
人がひとり通れるくらいの狭く歪な穴を50メートルほど行くと、野球場3つ分くらいの広い池の辺りに出たよ。
洞窟の天井からは岩柱が伸びていてる。
水面からピチャピチャと音がするから、魚でもいるのかな。
池に入ってみると深さ1メートルくらい。
「塩っぱい」
海水が染みこんでできた塩だまりなんだな。
中央の岩場には、いかにも宝箱って感じの箱が見える。
罠かな?
「だとおもう」
「やめようよ」
「あぶないよ」
SSたちは触手を伸ばし、俺の身体を摘んでクイクイ引っ張る。
俺と同じで臆病者なんだな。
「でも無視するのは、ちょっと勿体ないな。俺が確認してくるから、お前たちはここで待ってなさい」
「「「ええ~っ」」」
触手を払って岩場に向かったら、SSたちがピッタリついてきていたよ。
玉ねぎがプカプカ浮いているみたいなんだけど。
ゴツゴツした岩の隙間のあちこちから、シュシュシュと擦るような音が聞こえてきたよ。
なんだろう……尾びれの音じゃない。
黒い影が水中をうねりながら、向かってくる。
「……蛇か?」
いや……、全長50センチほどの上半身が魚で下半身が……蛇。
べーゼ・ラミアフィッシュ Lv 4
生命力 45/45
ステータス
攻撃力 32
素早さ 15
知能 3
運 14
1,強靭なアゴは鋼鉄の剣でも砕く。
2,尻尾に巻き付かれると圧迫死、あるいは骨が砕ける。
「モンスターなんだ! 蛇と魚が混じったモンスターか。ちょっと数が多いな」
背後から「はやく、戻ろうよ」とSSたちが言ってる。
俺だけなら、ラミアフィッシュの攻撃を躱して、なんとか宝箱まで行けると思う。
SSでも可能かもしれないが、ここは初めての水の中だし、戦闘未経験のレベル1。
それに、こんなに怖がってちゃあねえ。
「陸に上がってなさい、お前たち」
そう言って、ダッシュした途端、SSたちに引っ張られ――。
コケた。
「「「いっしょがいい」」」
「ええーい、うっとおしいッ!」
「「「でも」」」
言ってるうちに、ラミアフィッシュに囲まれてしまう。
ほらガンガン襲ってきたよ。
咄嗟に俺は身体中に眼を増やし、360度全部の視界を把握。同時に無数に出した触手で応戦したよ。
倒しても倒しても襲ってくる。
ピラニアみたいに獰猛だ。
SSたちはビビッて俺の頭の上に避難しており、なんだかトーテムポールみたい。
「グラグラ揺れるんだけど」
「お魚さんが、どんどん刺されていくねー」
「ほんとだー」
「あっ、半分になったよ」
「触手が剣みたいになってるー」
聞いちゃいないなあ。
「「「すごーい」」」
一匹が俺のマネをして触手を作り、海面から飛び上がって来たラミアフィッシュを一発で串刺し。
「ボクにもできた!」
へ~っ、これが、生まれて初めて触手を作ったスライム?
才能あり過ぎだよ。
俺が初めて触手を出した時なんか、酷いもんだったね。
「上手い上手い!」
「ほめられた。うれしい」
「揺れるから、ぴょんぴょんしない」
「ボクもやってみる……あ、できた」
「じゃボクも」
ザクザクザク。
SSたちは上手にラミアフィッシュを倒している。むしろ競い合っているんだけど。
「もう怖くないだろ?」
「「「うん。たのしい」」」
「そろそろ、降りてやってくれない?」
「「「はーい」」」
10分後。
まだ刺しているよ。
何匹倒したかもう分からないね。
なんだか、モグラたたきしているみたいだな。
やがて、ラミアフィッシュは襲ってこなくなった。
静かな海面には俺たちスライムと、腹を上にしてプカプカ浮いている無数のラミアフィッシュたち。
全滅かな?
レベルアップッ!!
『レベルアップ レベル4』
『レベルアップ レベル5』
『レベルアップ レベル6』
『レベルアップ レベル7』
『レベルアップ レベル8』
突然、長々とテロップが流れ出してびっくりしたよ!
俺が倒しただけじゃなく、SSたちが獲得した経験値と同じだけ俺にも注がれるから、レベル8になったんだね。
でもステータスを確認して、もっと驚いたよ。
――――――――――――――――――――
SSSレア・スライム LV 3 → 8
生命力 40/40 → 1280/1280
ステータス
攻撃力 12 → 384
素早さ 356 → 11392
知能 12 → 384
運 12 → 384
『変形』
『ステータス確認』
『アイテム収納庫』
『分裂』
その他多数(詳細)
――――――――――――――――――――
いや、もう、倍々で増えるからだろうけどステータス値凄い。
特に素早さは5桁。能力表記も多すぎるから、その他多数ですませちゃってる。
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