一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

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☆親父と母さん

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 愛里が落ち着いて話してくれた。
 心世界が無くなったことを。
 人格が統合されたことを。
 
「やったじゃないか。もう多重人格で悩むことはないね」

 医師が詳しく調べて出した結論でないから絶対じゃない。安心はできないけど、元気がない愛里を励ますつもりで、わざと大袈裟に喜んだ。

 さっき僕がマークⅢじゃないのか、と口を滑らせてしまい、愛里が不安そうな今にも泣きそうな顔になった。
 なにをやっているんだ僕は。大失態じゃないか。
 愛里がどういった形で人格が統合されたのか――、いや、されていない可能性だってある。とにかく何も分からないのに、マークⅢと決めつけてしまったのだ。
 僕は大馬鹿者だ。
 
「勇者さま……」

 泣きそうな声だった。
 
「あたしは……、誰だと思いますか?」

 不安そうに瞳を潤ませる。

「そ、そりゃー愛里ちゃんだろ。愛里ちゃんに決まっている」 

 どう返事していいかわからない。

「そうじゃなくて……、さっきマークⅢって」

 小さな膝小僧の上に置いた愛里の手が震えている。拝むような顔で僕の言葉を待っている。

「だ、大丈夫だよーっ! どうしたんだい? 心配することはないさ。色んな愛里ちゃんが一緒になったんだ。なにかしら不都合が起きても、違和感があっても全然不思議じゃない。無いとおかしいくらいだよ」

「おかしいくらい……」

「そうそう! そうだよ。
 まだ人格が統合されたばかりじゃないか。身体と心がびっくりしちゃっているんだと思うよ。時間をかけてゆっくりと、落ち着いてならしてゆけば大丈夫」

「そ、そっか」

「うんうん」

「びっくりしてたんだ、あたし……」

 愛里は小さな胸を撫で下ろし、やっと笑顔を見せてくれた。
 よかった。元気になってくれたみたいだ。




 もう真っ暗だ。山の上公園の桜の木が見える呉地市の実家。玄関を開けると母さんが出迎えてくれた。

「テレビ見たわよ。ジャッジメントって過激なのねぇ。母さんびっくりしちゃった。でも面白かったわ」

「面白かった?」
 
 いったいアレのどこにそう感じる部分があるのか。

「斬新だわ。アイデアが素敵」

 何を言っているのか分からない。
 
「愛里ちゃん疲れたでしょう。さっ、上がって上がって!」

「おじゃましまーす♪」

 後で母さんはジャッジメントの内容をこう話した。
 
1,ネットに流れたエッチ写真を、僕と愛里ですと宣言した件。
(台本が有るって知っているけど、ちょっとドキドキしたわ。若い子にはウケルのね。番組が始まってのツカミはOKってとこかしら)

2,突然愛里が男性化して暴言を吐く件。
(愛里ちゃんの演技は見事だったわ。でも誰が台本を書いたの? ウソがバレバレじゃないの)

2,興奮した僕が愛里に抱きつく。抵抗されるがキスする件。
(聖、アンタよかったわねーっ! 演技で愛里ちゃんとキスできたのよー! 録画してるからねー、うふふふふ)

3,僕が全国ネットで愛里に告白した件。
(緊張したでしょーさとし。いくら台本通りでも、愛里ちゃんに告白よ? ちょっぴり本音入ってた?)

4,綾小路が老化する件。
(びっくりしちゃったわ母さん。最近の特殊メイクは凄いのね。事前録画と中継を上手く繋ぎあわせて放送したのね) 

 うーん、都合よく受け取ってくれたなー。
 


 
 リビングと呼ぶより『居間』の方がしっくりとくる畳部屋に、愛里が「こんばんわー!!」と元気にお辞儀して入ると、親父が広げた新聞から顔を出さずに「……うむ」と喉を鳴らした。

 親父は寡黙の人だ。無愛想なのだ。外ではそうでもないらしいが、自宅だと遠慮はない。
 しかし、それが小学生の可愛いお客様にもいえることだとは今はじめて知った。

「お、親父……。僕の友人の妹さんでね――」

 微妙に気まずい空気をほぐしたく、愛里がどうしていいか分からないんじゃないだろうかと、僕は紹介を始めたのだけど――。

「岩田愛里といいます!」

 全く動じていない愛里が、親父の横に正座してやりだした。

「トキメキTVのあいりん役もやっている呉地小学校4年生です!」

「……うむ」

 チラリと視線を向けただけで新聞に戻す親父。
 さてはジャッジメントを視て愛里に反感を持っちまったか? 母さんみたいに良い風に受け取ってくれたとは限らない。
 だけど愛里は凹まない。笑顔で親父を観察している。
 
「へ~っ、お顔が勇者さまとそっくり♪」
 
 僕とそっくり。そりゃあそうだ。遺伝元だし親父も僕以上の激怖顔だ。 

「すごいね」

 すごいねって、テクニックで顔を似せたわけじゃないからっ。

「うんしょ!」

「ちょっとちょっと」

 あろうことか愛里は新聞紙と親父の間に顔を突っ込んだ。

 ――なっ、なにやってるっ!!

「へーっ、すごい。肌のブツブツまで同じ……ねっ」

 ねっ、で愛里が顔を傾げて微笑んだ。
 可愛いが、言ってる言葉は失礼過ぎるだろ。親父が「むぅう……」と不機嫌に息を吐く。

「あ、……愛里ちゃん。早くお顔をだそうね~っ」

「もうちょっとだけー」

 親父の顔をぺたぺた触ったり、ほっぺたを引っ張った。

「がさがさしてる。感触もおなじだね」

 おいおい。
 愛里がここまで空気が読めないとは。人格が統合しても、子供は子供だ。

「……むうぅうう……」

 親父は子供が嫌いというわけじゃない。おフザケに目くじらを立てるほど人間が小さくもない。
 僕と同じく何を考えているのか、怖いだけで表情が読み取りにくい顔だが、現在親父はめっちゃ不機嫌だ。相手が子供じゃなかったら、絶対にビンタが飛んでいる。

「そうでした!」

 愛里が何かに気づいたようだ。

「不束者(ふつつかもの)ですが今晩泊まらせて下さーい♪」

 ちゃんとお願いしたのはエライけど、なんで親父の膝の上に乗ったんだ。
 顔近いし。お辞儀したら、ほら、親父の胸に愛里の頭が当った。

「あーっ、笑ってるーゴキゲンなんですねー」

 笑ってなんかないって。不機嫌だって。

「はっはっは」

 えっ! 違った?
 親父怒ってないのか、あんだけいろいろ弄られて?

「よく私の表情がわかったね愛里ちゃん。初対面の人だと、それ以前に怖がっちゃうんだけど」

「うん。得意だもん、お父さま」

 さらっとお父さまって言ったぞ。 
 親父も満更でないみたいだ。おかしいだろう。ツッコめよって、小学生相手に親父がするわけないか。
 それより息子の僕が親父の表情を読み取れなくて、愛里ができちゃうってどうしてだ?
 あ、もしかして、日頃僕を見て経験を積んでいるから。きっとそうだ。

「若かりし母さんのようじゃあないか!」

「そうでしょう。私も愛里ちゃんみたいに可愛いかったからねー」

「似てるのは私の顔を怖がらないってことだから」

「あら、可愛くなかったの?」

「困ったな~」

「お父さまったら~」

「「「あっはっは~」」」

 笑う母さん、笑う親父、すっかりなじんでいる愛里。
 それを見ている僕。

 夕食が始まり、3人とも和気あいあい。
 よかった……。



 
 監督に『無事愛里ちゃんと一緒に実家に帰りました』とメールしておいた。
 直ぐ、『こっちは面白いことになってるぞ』と意味深なリターンがあった。
 短い文面で、しかも通話してこないところを考えると、忙しいのだろう。監督に電話をするのは明日にするか。




 風呂がわいたからどうぞ、と母さんが愛里に進めたけど、今日は入らないという。
 やっぱり他人の家の風呂には抵抗があるのだろう。着替えもないし、シャンプーはこれじゃなきゃダメとか、そういったこだわりもあるのかもしれない。
 愛里は親父と仲良くなってしまい、二人でゲーム対戦を始めた。キャッキャ、騒ぎながら二人とも楽しそうだ。
 
 愛里は親父が僕と似ているから気に入ったのだろうか。だとしたら僕は外見だけの男ってことか?
 それに親父が初対面の小学生の遊びに付き合うなんて、かなり意外だ。もしかして愛里は親父好みだったりして。僕がそうなのだから、好みも同じ可能性が高い。

 バカバカしい。
 親父にやきもちをやいてもしょうがない。寡黙の親父が愛里を気に入ってくれただけラッキーだと思うべきだ。

 愛里を居間に残し、僕は一人風呂の湯船に浸かった。
 以前だったら二階のクローゼットから彼女(フィギュア)を一体連れてゆくのだけど、僕にはもう愛里がいるから癒やしは不要だ。
 それに彼女(フィギュア)を見られでもしたら、『こ、こんなことに使っているの……、子供みたい……』と愛里に白い目で見られるかもしれない。いや、愛里の感性ならむしろ賛同してくれるかも。
 とにかく明日には監督が愛里を迎えに来るんだ。騒ぎは起こさないほうがいい。
 しかし、それまで一つ屋根の下っていうのは、ドキドキするなあ。
 愛里とキスした感触を思い出して頬が緩んだ。ため息が出てしまう。
 中身はK―1だったけど、それでも愛里とキスしてしまったのだ。我ながら大胆な行動をしてしまったと、つくづく思う。

「勇者さまいる? あたし、愛里だけど……、やっぱり入ろうかなーって、いい?」

 脱衣所から無邪気な声が届いた。
 
「えっ? あっ、もう少ししたら出るから」

「あれ、まだ入ったばかりじゃないの。しっかり浸からないとダメですよー」

 お姉さんみたいな口調で(僕は一人っ子で、お姉さんに優しく注意された経験がないからあくまで想像だけど)言って、愛里は遠慮なく衣服を脱ぎだした。
 豊満ではない、ささやかな胸の膨らみと、ややくびれ始めた腰、小さなお尻がすりガラス越しにもはっきりと分かった。

 おいおい僕と一緒に入る気か? 冗談じゃない。僕はまだOKもなにも言ってないぞ。

「ちょっと、待って待って! マズいって」

「もう遅いでがす」

 がすって言ったぞ? 
 がすがす愛里はエロ愛里。人格統合っていろんな愛里の影響が強すぎないか?
 
「間違えた。がすじゃない、です、です!」

「いや、もうどっちでもいいけど、とにかく入っちゃダメ。脱いだ服を着て居間で待っててね」

「気にしないで勇者さまっ! だってもう愛里は全部知ってるもーん♪」

 知ってるってナニ? 
 一部分だけ、おちんちんだけ何度も見られ触られたアレのことか? 
 だからって、お互いすっぽんぽんは死守だ。絶対にいかんっ!

 すりガラスに愛里の手が伸びる。
 マジで入ってくる気だっ!

 急いで湯船から上がり、片足だけで立ちガラス戸を押さえる。
 ――――が、間に合わないっ!

 ――ガラガラガラガラ。
 開かれた。
 戸の取っ手は引き開けられてなくなり、見事空振りした僕は、歌舞伎俳優がよくする六法ろっぽうを踏む、いわゆるおっとっとで仰け反った。
 と同時に両目を強く閉じる。    
 愛里の裸を見るわけにはいかないっ!

 閉じたままなんとか体勢を整え、踵を返し、股間を両手で覆ったのち目を開けた。
 何度も見られているおちんちんだけど、そう安々見せるわけにはいかないっ!
 
 愛里の裸を見ないで、僕も見せない。
 これが唯一の手法。これが最善。 

「勇者さまが恥ずかしがっているーっ。なんか可愛い~」

「こ、困るなあ~、愛里ちゃん」

 直ぐ後ろに愛里がいる。僕の気持を全然分かってない無邪気な愛里がいる。

「まずいって、ほんと」

「うふふふ。もう、勇者さまったら後ろを向いてぇー」

 そう言って胸付近から顔をのぞかせる。

「あれー、手で隠してるー」

「はははは……」

 そりゃ隠すわい。

 なんか以前の愛里と違ってずいぶん積極的になってるじゃなか。
 これって人格統合の影響なのかっ? がすがす言ってたエッチ愛里の成分が混じったか?
 嬉しいような恥ずかしいような。

「あーっ、もしかして、あたしの裸を想像しちゃってた? えっちーぃ!」

 ばっと、愛里が真正面に立った。

 
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