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☆衣装部屋に残されてしみじみ
しおりを挟む愛里が慌てて僕の膝から下りて、とことこ衣装部屋から出て行ってしまった。
1人残された僕。
長椅子に座ったまま、しばし呆ける。
夢だったのではないだろうか……。
幸せ過ぎて、このまま死んでもいいかもしれない。
……だけど、だけど、
なんだろうこの気持ち……。
むなしい……。
ものすごく、むなしい。
愛里は着ぐるみをキノコロボットと勘違いしただけで、僕だとは思いもしていない。
いろいろしてくれたのは愛里の好奇心。見たこともない物に興味を示しただけ。
キノコが可愛いから抱きついたわけで、僕にじゃない。
愛里が好きなのは、気に入ったのは、キノコの着ぐるみなんだ……。
しかし、おちんちんを見ても分からない、知らないとは……。
愛里ママがかなり厳しく、見せていい情報とダメな情報を区別し愛里に見せているのだろう。
うーん。愛里を大切にするがゆえの行為か。気持ちは分かるけど、無知なのもどうかと思う。
そういえば、岩田家には誰でも気軽に入れないルールがあったな。
監督の真面目で変わった性格がうかがい知れる。
だけど、そんな監督に大事に育てられた愛里を……。
そんな愛里を……、純粋な子供心を……。
わああああああああああああっ!!
僕は利用してしまった――っ!
悪用だ。
嬉しく気持ちいいものだから、黙っていじられてしまった――っ。
わくわくしながら、快楽を味わっていたのだ。
可憐な妖精愛里を汚してしまった……。
ある意味犯罪じゃないのか。
いや完全な未成年へのいたずらだ。
幼い少女の間違いを止める立場の僕が、ウハウハヒーヒーとか悪意ある行動だ。
岩田家のトイレで愛里にやらかした行為も犯罪物だが、さっきのはそれ以上だろう。
唯一の救いは、僕がイッちゃわなかっただけ。我ながらよく我慢した。
しかしどうする。どうすればいいのだろうか。
正直に言って謝るか……?
出来ない。出来るわけがない。
黙ってやり過ごすか?
今はいいだろう、今は。
しかし愛里は忘れない。
大きくなって、真実を知った時に愕然とする。驚愕だ。
自分が知らない男のおちんちんをいじっていたのだから。
あああ、どど、どうすればいいのか?
出来るならタイムマシンに乗り、愛里がカバーを外す前に戻りたいっ!
心の中で頭を丸めていたら衣装部屋のドアが開いた。
「オッケー出たわよ、坂本くん……」
セナさんが戻ってきた。
「……あらっ!」
ぱっと顔が明るくなったセナさん。慌てて股間を両手で覆ったが、おちんちんカバーがないわけで、元気モードがバレバレなのだ。
辺りに転がっているカバーを探したが見当たらない。
椅子の下にでも落ちたか?
セナさんがぴっちぴちのキャミソールの胸をぶるんぶるん揺らし、ニヤニヤしながら近寄ってきた。
「なに、これ……?」
指を下に向けた。
「いや、あのその、これはですねー」
セナさんは僕の手を強引にどかしマジマジ観察した。
「……凄いねーっ」
褒められても嬉しくないんだけど……。
「1人でシコシコヤッてたの?」
「えっ?」
思わず違うと否定しそうになって止めた。
愛里が来たとか言えるわけない。
「もしかして坂本くんは個室とかで興奮する人? 女子更衣室のロッカーに入りたいとか?」
「そんなんじゃないです!」
「じゃー着ぐるみフェチ? 変装すると欲情するとか?」
「違いますって!」
「あっ、そっかー! あいりんね。あいりんに会えるから、先にねー。そっか、先にやっとくわけかー」
「……、……」
否定する気にならなかった。
セナさんは哀れんだような顔をして頷いた。僕の何を悟ったというのだ。
躊躇いもなく手を股間に伸ばしてきたので両手で阻止。
「あら?」
「いやいや」
「なんなら手伝うわよ?」
「結構です」
セナさんは僕の手をかいくぐろうとする。
止めてくれ。それはマズい。
諦めないセナさんの両手を握ったまま力比べクラッチングスタイルになった。
「遠慮しないでいいから」
「いえいえ、ほんとに」
「そう言わずに」
「その気持ちだけでじゅうぶんですから」
「まーまー。ウチ得意だから」
お互いが譲らない。ギリギリとレバーを出したまま攻防は続いた。
「あら。収まったみたい」
ごたごたしてると、レベル1に戻っていた。
「勿体無いなー」
「……」
◆
セナさんが言うには、
監督がトキメキTVのプロデューサーに話しをして、僕がキノコの着ぐるみで収録参加が決まったそうだ。
「遠慮しときます」
「なに言ってんの! あいりんと共演出来るのよ~っ! ファンならやるっきゃないでしょ! 間近で触れ合えるかもよ!」
愛里とはもう僕のレバーが触れ合った後だ。
それに……、
「ケースが見当たらない」
「あ~っ、そんなことぉ? ほらコレ」
「……これ……」
渡されたのは天狗のお面だった。
おちんちんケースの代わりは鼻が伸びた天狗のお面。
「これで隠せばー」
何故に天狗……。
「縫ってあげるからね」
「ダメだ。逆に卑猥だ。子供番組じゃなくなるって」
「仕方ないわねー。じゃ、これ」
「なにこれ?」
「ピノキオのお面」
「どうして鼻が伸びたのばかりをチョイス?」
「文句多いわねー、坂本くん。どんな物にでも意欲的にぶつかっていく強い気持ちがないと、世の中渡っていけないわよ!」
「そうですね。股間に覆う物以外だったらそうします!」
「おーい。そろそろ打ち合わせするから、準備はOKか?」
スタッフの人が呼びに来た。
「はい、いま行きます」
勝手にセナさんが言った。
「しゃーないわね。じゃーコレでも着たら?」うさぎの着ぐるみを差し出してきた。
「はい?」
実のところ収録に使う着ぐるみは可愛いものだったら、どんなのでも良かったのだ。
セナさんが僕に意地悪して喜んでいただけとは、やれやれ。
僕はうさぎの着ぐるみを着て、セナさんに誘導されながら⑥スタジオに入った。
即、愛里を発見。
出演する幼い子どもたちと話しをしている。
オーラーが違うというか、可愛いから目立つのだ。
しかし――、
その手に握られていたのは、おちんちんケースだった。
あっちゃー!
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