一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

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★ニイタカヤマノボレ その1

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「か、かわいい……」
 
「「……、……」」

 あたしは石化しておりました。
 突然の勇者さまの発した会心の一撃で、魂だけ口から抜け出して、ふわふわ漂っておりました。

 ――かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。

 勇者さまが間違いなくあたしにそう仰ったのです。
 意味はわかりません。どうして言ったのかもわかりません。でもいいのです。
 渋い声でリプレイされ続けるあたしの脳みその中。うっとりとして、気持よくて、幸せ。 

「何に言ってやがる。や、山柿、てめえっ!!!」

「はいっ?!」

 兄さんの怒号にふわふわは木っ端微塵に粉砕。プチ幽体離脱は解けました。
 そんなのどうだっていいのです。それより、

 どうして兄さんが日本刀を構えているのっ――――!!

 鬼の形相で山柿さまに強い気を放っているのです。
 あたしは慌ててキッチンに避難しました。
 うそうそ、あの穏やかな兄さんが激怒? 勇者さまを斬るつもり? あぁ、止めて兄さんっ!
 
 山柿さまが可愛いとおっしゃっただけで、こんな事をするなんて。益々兄さんにあたしの気持ちを知られるわけにはゆきません。絶対に秘密にしなくてはいけません。

 兄さんは『愛里が付き合うなら、兄ちゃんが相応しい男を見つけるから』といつも言っているのです。
 つまり山柿さまは相応しくないのでしょうか。
 どこが悪いのかさっぱり分かりません。お優しい心と怖カッコイイお顔をされているのに……。


 少しして山柿さまの渾身の説得で、兄さんは落ち着きを取り戻しました。 
 あの兄さんを説き伏せてしまうお姿。凛々し過ぎて……あぁ、ホームビデオで残しておきたい所でしたっ!

 やがて二人は仲直りしたようで、お勉強を始めてくれました。

 やれやれです。
 自宅のリビングが惨劇になるかと気をもみました。
 
 ホットカルピスを作ってふうふうしながら、兄さんとの約束通り離れたキッチンから恋する人を眺める事にしました。
 大きな身体を小さくまるめて、小さなお目々は更に小さくさせてお勉強をする凛々しいお姿。素敵過ぎです。ぽっ。
 十分くらいでしょうか、じぃ~っと見ていたら、山柿さまがチラリとコンマ五秒くらい、あたしに視線を向けたのでした。

 はああっ!!

 いま目が合いました。
 偶然でしょうけどね。
 でも嬉しくて、じぃ~っと見つめ続けていると、また山柿さまが視線を一秒以上も。

 まあっ! どうしてどうして? 
 キッチンになにかご用があるとは思えないし、やっぱりあたしの事を……っ!

 嬉しいやら恥ずかしいやらで、身体が勝手にくねくねしてしまいます。
 再びの視線を期待して、ぎゅいぃ~~んと視認モードを最大にしていると、

 ――――きゃあぁぁっ!! 

 今度は三秒はゆうにありましたっ!
 もうチラ見の領域ではなく、ほとんど見つめ合い。あたしたちは恋のやり取りをしている関係確定?
 溜まらず太ももをすりすりです。身体のくねくねも合わさって、それはもう不思議なダンスに見えるでしょうが構いません。
 しつこく、ぎょわぁぁ~~~っと凝視していると、またまたまた視線が五秒以上。

 もしかして……。

 ここでやっと答えが降りてきました。意味が分かったのです。
 山柿さまはあたしを見たいからではなく、おトイレ……。さっきピカピカにしたおトイレで《待ってて欲しい》のサインでは。 
 兄さんのいるこのリビングではあたしとチクチクはできません。ですからあたしが先におトイレで待機してて、後から山柿さまが入場なさるという時間差作戦。こうすれば兄さんにはバレないのです。
 たぶん、いえ絶対におトイレへGOO。ニイタカヤマノボレです。
 流石は山柿さま、完璧な読み筋。

 それに視線交換だけで、ここまで通じ合えるというあたしたちって、ベストカップルに違いないのではないでしょうか。

 あたしは予め作っておいたケーキとお湯を注いだホットカルピスを二人のテーブルに置いてから、山柿さまのお顔に視線を向けます。

「うむ。ありがとう」

「ありがとうね。美味しそうだな」

 兄さんに続いて笑顔をくれる山柿さま。その怖いお顔からは何も読み取れませんが、はい、もう、言わずとも心得ておりますとも。
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