一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)

文字の大きさ
上 下
18 / 221

★お友だち5人と その2

しおりを挟む
「あれか?」

 男子が訊ねます。

「そう、まだ化け物はいないけど、今日は勉強するはずだから、そろそろ登場するわよ」

 化け物って……ちょっと酷い言い方。相手は人間でしょ。
 それに『今日は勉強するはず』って、相手は学生さん? やたら詳しいけど……。

「あの……。まさか毎日覗いているの?」

 あたしが訊ねると「毎日じゃないわよ。暇な時だけよねー」「「ねー」」と他の二人の女の子と顔を見合わせ笑いました。

 それって毎日じゃない。
 この子たちは塾もクラブもしてないから毎日暇。嫌な趣味しています。
 もう戻ろう。スーパーでお買いものしているほうが、ずっと楽しい。

「あっ! 電気が点いたわ。でるわよ。でるわよ」

 女の子がはしゃいで二階の窓に注目し、あたしの隣の青い眼の男子が双眼鏡を覗きました。
 やれやれ。
 
「ほら。あれよ。化け物は」

 笑う女の子が顎で示した先。その人は学習机に座ってお勉強を始めたのです。
 兄さんと同じK大入試勉強……。
 
「わっ。本当だ。すげー顔っ!」

「でしょーっ。盗撮してチン百景に投稿しちゃおうかしら」

 女子三人トリオは楽しく笑い合い、批判的だった男子も「おっ、すげー」と大興奮、隣の女の子の双眼鏡を借りてます。 
 青い瞳の男子も流されるように笑っていて、「ほら。君もみてみなよ」と双眼鏡をあたしの手に乗せました。

「……、……」

 黙って受け取り覗くと、怖いお顔がアップに。横顔だけど十分じゅうぶん凛々しいお姿。素敵です。
 ここだったのですね。
 ついに発見勇者さまの本拠地。あたしのお家から近くとは知りませんでした。
 だけど見るだけで、近寄ることはできません。高いこの場所から見下ろしているだけ。
《ドラクエの隣村の入れないほこら》
 勇者の剣が入っている宝箱が見えているだけで、鍵かクエスト完了しないと無理……みたいなものでしょうか。
 本当なら嬉しくて、喜びのダンスをしたいところですが、今は心が重くて動けません。 

「悪魔みたいな顔をしているね」
「違うわ、凶悪犯よ」
「そうね悪い事をしてそうね」
「化け物だと思う」

 聞いたようなセリフ。
 何が楽しいのでしょうか。だからどうしたと。いい加減にして欲しい。
 瞳の奥がじーんとしてきて、勇者さまの勇士が滲んでしまって。

「ほら、あそこ。大きいクローゼットが怪しいのよ。誘拐した女の子を監禁していると思う」

「ええっ! それって犯罪じゃん」

「そう……。だけど証拠はないわ。だから、あたしたちがこうやって見張っているのよ」

「かっこいい」

「一度だけクローゼットが開いたのを目撃したわ。扉が邪魔で手前だけど、変な人形がたくさんあった」

「そうそう、透明なケースの中だったわ。奥には、監禁された女の子が酷い事をされているんだわ」

 言いたい放題。酷い。酷すぎる……。
 
 好きで生まれた容姿じゃないのだから。何も悪いことしていないムカデを、毛嫌いしているのと同じじゃない。踏み潰そうとするのと同じじゃない。
 
「これ、ありがと」

 言葉だけの感謝と一緒に、男子に双眼鏡を返しました。ここには居られない。早く去りたい。
 男の子のニコッとする青い瞳が、急に驚きに変わりました。  

「どうしたの。何かあった!?」

 突然叫んだので、皆があたしに注目しました。

「え……なんで? 大丈夫。愛里ちゃん」
「なになにやだ。愛里ちゃんどうしちゃったのっ?!」

 途端に騒ぎ出し、何故かお口を手で覆っていたりして。 
 どうしたの? 何を驚いているのかしら。
 自分の頬が濡れた感触がして、指の腹で目を触れると、ぽろぽろこぼれました。
 なんだ。だからか。だからなのか。
 でも……違う!
 気を使うのはあたしじゃない! 
 傷付いたのは……。傷付けようとしていたのは……。
 拳をぎゅっと握りしめ、立ち上がりました。そして、

「ばかぁ――――っ!」

 思いっきり叫んだら、皆んなはきょとんとしていて、それがまた腹が立って、肩が身体が震えて。
 胸の中から、何かがざわざわと囁いたような気がしました。

「ばかばかばかばかああああぁぁ――――――――っっ!!」

 皆はお口を半開き、全然意味が分からないのでしょう。 
 女の子の双眼鏡を奪い取り、青い眼の男子のも持って、駆け出しました。

「えっ? あっ! ちょ、ちょっと待って、愛里ちゃ――ん」

 後ろから叫ばれましたが、無視無視無視。
 知らいない知らいない知らいない知らいない――っ!
 双眼鏡がこの世からなくなればいいのにっ!
 地面の木の葉を蹴散らし、全速力で薄暗い雑木林を走りました。
 あたし絶対に止まりませんからっ! 
 でも、双眼鏡を二つも持っているので上手く走れません。5人が後ろから追い駆けて来ます。

 このままじゃ追いつかれそうで、だから前の石を蹴りました。ひっくり返った石の裏面。双眼鏡を側に置いて手当たりしだいに石をひっくり返しました。

 いない。いない。いない。今日に限って何故かいない。
 湿気ているから絶対に居るはず。お友だちの足音が近づいてきて、ようやく発見。鷲掴みにして、後ろへ投げつけました。

「「きゃ――――っ!! ムカデっ!!」」

「ヤスデさんですって」

 女の子たちは大騒ぎです。
 あたしは地面に落ちたヤスデさんに、どうぞ踏まれないで下さいねと祈りつつ、つづいて連続で見つけた虫さんたちを、片っ端から投げました。

「「ちょっと、止めてっ! 愛里ちゃん!」」

 お友だちは大喜びです。
 律儀に気持ち悪いものに叫ぶ女の子たちを逆手に取った作戦。男子たちも一緒になって混乱しているのは想定外でした。
 確かに怖がる女の子は可愛いく見えますが、あたしには出来そうにありません。
 これが女子力と呼ぶのでしょうか、だったらあたしはレベル1。あぁ勇者さま~っ。初心者でも温かく見守ってくれるますよね。

 そんなどうでもいい悲観的な想像を僅か二秒で駆け廻らせたあたしは、混乱しているお友だちを横眼に公園の階段を駆け降り、そのまま歩道を走りました。だいぶ後方からまだ追ってくる五人はもうへろへろみたですが、それでも「どうしたの~~ぉ? 愛里ちゃん~」としぶといです。

 真っ直ぐ走り続けると、あった小さな交番にあたしは入りました。

「すません! 落し物拾いましたっ!」



しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...