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★お友だち5人と その1
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翌日の日曜日。
いよいよです。いよいよ明日は山柿さまと。
「さいかい~、さいかい~、さいさいさいかい~♪」
おもてなしのケーキの材料を買いに、スーパーに向かっていました。
前回は好評のクッキーでしたが、今回はケーキとホットカルピスで攻めてみようかと。
『クッキーも美味いかったけど、このケーキも凄いねー』なんて褒められたりして。うふふふふ。
それに狙いがあるのです。
付けるホークとストローを、使い捨てにして、勇者さまが使用された後……えーと、つまりその、あれです。
愛です。
愛なのです。
たぶん報われない愛だからこそ、記念が欲しいのです。貴重な記念グッズがあたしには必要なのです。
全然変じゃありません。
女の子が好きなアイドルのグッズを集めるのと全く同じで、あたしも正規のルートで入手しようとしているだけ。
それにお家のホークだと食器棚に戻しておかないと、後でママにバレちゃ……いや、困るでしょうから。
あたしは普通の小学三年生です。うんうん。
「さいかい~、さいかい~、さいさいさいかい~♪」
山の上公園の入り口に、小学生が五人たむろしていました。
仲良し三人組と、見かけない男の子二人。
双眼鏡を持っているので、フランケンハウスを覗きに行くのでしょう。
他人のプライベートを観察をしてどこが面白いのでしょうか?
覗きは好きじゃないし、関わりたくもないです。
「あっ! 愛里ちゃん」
路地に入ろうとしたら、見つかってしまい、無視もできず一応挨拶しました。
「何処行くの? よかったらあたしたちと来ない?」
女の子たち3人はニコニコしていて、これからする覗きに罪悪感はありません。
「岩田さんも来るのか」
側の男子が顔をほころばせました。
「ちょっとちょっと。愛里ちゃんが来たら急にそわそわしちゃって、もう」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
「じゃーなによ。どうせ、岩田さんが可愛いから照れてるんでしょっ!」
「ばば、ばかっ! ちがわいっ! そんなんじゃねーんじゃわい」
名前がわからない男の子は、女の子から突かれて嬉しそうですね。
「どーせ嘘だと思っているからだよ。お前たちが学校で騒いでたフランケンってーの。どーせプロレス選手みたいな男を見て、オーバーに表現しただけだろーが」
「あら違うわよ」
「違わないね」
「ふん。まあ、今から見ればわかる事だから。さっさと見て、謝りなさい、あたしたちにっ!」
フランケンで盛り上がってますねー。
たしか映画に出てくる怖い人造人間ですよね。映画は観たことないですけど。
興味は少しありますが、やっぱり人の家を覗くのは気乗りしません。
「あの、あたし、お買いものに行く途中なので……」
「「えーっ。イイじゃん。イイじゃん。ちょっとくらいっ!」」
「え。でも……今日は忙しいんで、あたし」
「ちょっとだけだからね。ちょっとだけ」
お願いしているわりに、女の子二人に両側から腕を強引に組まれてしまいました。
「おい! 岩田さんが嫌がっているじゃないかっ!」
男の子が両サイドの女の子を押しのけてくれました。
いい人ですね。ここはレディらしく感謝の言葉「ありがとう……」と男の子の顔をじっと見て、レディのお手本――ママがよくする少し顔を傾けての微笑みのお返し――を繰り出してみました。レディはぐちゃぐちゃ言葉を発しない。基本中の基本なのです。
すると、
「えっ! ……は、ははは。いや、なんの、なんの、何て事ないぜっ、こんなのっ……」
ほら。とても喜んでくれています。よかったー。
「ちょっと! なに愛里ちゃんの前でカッコつけてんのよ。デレデレじゃない。あー嫌だ」
「そうよそうよ」
「ほんとに、可愛い子が来たら男ってイイカッコするんだから」
「そ、そんなんじゃーねーよ。なあ、岩田さん」
「はあ……」
どうでもいい会話。
「岩田さんだって、見に行かないとは言ってないんだ」
――え?
「用事があるからって言っただけで、フランケンを見た後で、買い物に行けば良いだろ。俺が買い物に付き合ったっていいんだから」
「『買い物に付き合う』ですってーっ! 下心見え見えっ」
「バカヤロー」
ギャーギャー騒ぎながら、「じゃ、いこー」「凄いんだからーっ!」とか言われ、うやむやに山の上公園に上がってしまいました。
びゅ――――っ、と強い風が木の葉を巻きながら通りぬけ、無人のブランコが微かに揺れていました。
高台なので肌寒く、あたしは身体を縮じめました。
こうなったら少しだけ見て、逃げるしかなさそうです。
五人に連れられ、立ち入り禁止の雑木林に入り、じめじめとした日陰を進んで、あたしがムカデとヤスデの違いを力説した場所に到着しました。
家々の屋根が連なり、向こうには商店街、そのずっと向こうには呉地駅が見えます。
「みんなっ! 隠れて」
女の子の号令で、みんながしゃがみ込みました。
「愛里ちゃんもよ!」
言われて、はいはいと見習うあたし。
見降ろすと、問題の家の二階は丸見えで、カーテンは引かれていません。
いよいよです。いよいよ明日は山柿さまと。
「さいかい~、さいかい~、さいさいさいかい~♪」
おもてなしのケーキの材料を買いに、スーパーに向かっていました。
前回は好評のクッキーでしたが、今回はケーキとホットカルピスで攻めてみようかと。
『クッキーも美味いかったけど、このケーキも凄いねー』なんて褒められたりして。うふふふふ。
それに狙いがあるのです。
付けるホークとストローを、使い捨てにして、勇者さまが使用された後……えーと、つまりその、あれです。
愛です。
愛なのです。
たぶん報われない愛だからこそ、記念が欲しいのです。貴重な記念グッズがあたしには必要なのです。
全然変じゃありません。
女の子が好きなアイドルのグッズを集めるのと全く同じで、あたしも正規のルートで入手しようとしているだけ。
それにお家のホークだと食器棚に戻しておかないと、後でママにバレちゃ……いや、困るでしょうから。
あたしは普通の小学三年生です。うんうん。
「さいかい~、さいかい~、さいさいさいかい~♪」
山の上公園の入り口に、小学生が五人たむろしていました。
仲良し三人組と、見かけない男の子二人。
双眼鏡を持っているので、フランケンハウスを覗きに行くのでしょう。
他人のプライベートを観察をしてどこが面白いのでしょうか?
覗きは好きじゃないし、関わりたくもないです。
「あっ! 愛里ちゃん」
路地に入ろうとしたら、見つかってしまい、無視もできず一応挨拶しました。
「何処行くの? よかったらあたしたちと来ない?」
女の子たち3人はニコニコしていて、これからする覗きに罪悪感はありません。
「岩田さんも来るのか」
側の男子が顔をほころばせました。
「ちょっとちょっと。愛里ちゃんが来たら急にそわそわしちゃって、もう」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
「じゃーなによ。どうせ、岩田さんが可愛いから照れてるんでしょっ!」
「ばば、ばかっ! ちがわいっ! そんなんじゃねーんじゃわい」
名前がわからない男の子は、女の子から突かれて嬉しそうですね。
「どーせ嘘だと思っているからだよ。お前たちが学校で騒いでたフランケンってーの。どーせプロレス選手みたいな男を見て、オーバーに表現しただけだろーが」
「あら違うわよ」
「違わないね」
「ふん。まあ、今から見ればわかる事だから。さっさと見て、謝りなさい、あたしたちにっ!」
フランケンで盛り上がってますねー。
たしか映画に出てくる怖い人造人間ですよね。映画は観たことないですけど。
興味は少しありますが、やっぱり人の家を覗くのは気乗りしません。
「あの、あたし、お買いものに行く途中なので……」
「「えーっ。イイじゃん。イイじゃん。ちょっとくらいっ!」」
「え。でも……今日は忙しいんで、あたし」
「ちょっとだけだからね。ちょっとだけ」
お願いしているわりに、女の子二人に両側から腕を強引に組まれてしまいました。
「おい! 岩田さんが嫌がっているじゃないかっ!」
男の子が両サイドの女の子を押しのけてくれました。
いい人ですね。ここはレディらしく感謝の言葉「ありがとう……」と男の子の顔をじっと見て、レディのお手本――ママがよくする少し顔を傾けての微笑みのお返し――を繰り出してみました。レディはぐちゃぐちゃ言葉を発しない。基本中の基本なのです。
すると、
「えっ! ……は、ははは。いや、なんの、なんの、何て事ないぜっ、こんなのっ……」
ほら。とても喜んでくれています。よかったー。
「ちょっと! なに愛里ちゃんの前でカッコつけてんのよ。デレデレじゃない。あー嫌だ」
「そうよそうよ」
「ほんとに、可愛い子が来たら男ってイイカッコするんだから」
「そ、そんなんじゃーねーよ。なあ、岩田さん」
「はあ……」
どうでもいい会話。
「岩田さんだって、見に行かないとは言ってないんだ」
――え?
「用事があるからって言っただけで、フランケンを見た後で、買い物に行けば良いだろ。俺が買い物に付き合ったっていいんだから」
「『買い物に付き合う』ですってーっ! 下心見え見えっ」
「バカヤロー」
ギャーギャー騒ぎながら、「じゃ、いこー」「凄いんだからーっ!」とか言われ、うやむやに山の上公園に上がってしまいました。
びゅ――――っ、と強い風が木の葉を巻きながら通りぬけ、無人のブランコが微かに揺れていました。
高台なので肌寒く、あたしは身体を縮じめました。
こうなったら少しだけ見て、逃げるしかなさそうです。
五人に連れられ、立ち入り禁止の雑木林に入り、じめじめとした日陰を進んで、あたしがムカデとヤスデの違いを力説した場所に到着しました。
家々の屋根が連なり、向こうには商店街、そのずっと向こうには呉地駅が見えます。
「みんなっ! 隠れて」
女の子の号令で、みんながしゃがみ込みました。
「愛里ちゃんもよ!」
言われて、はいはいと見習うあたし。
見降ろすと、問題の家の二階は丸見えで、カーテンは引かれていません。
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