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ミニキノコ
しおりを挟むノブナガが新しい住処にした洞窟の真上だった。
直径10cmの小さな穴があちこちにある。
その穴からパラパラと土が落ちていた。
独立した空洞だと思っていたが、上部にも空間があり、そこへイタチやネズミなどの小動物がいるのだろうか。
だとしたら、自分たちに被害が起こる前に対抗策を立てる必要がある。
考えたノブナガは、さっそくミニキノコを1匹作って偵察に向かわせた。
『いってらっしゃ~い! ミニパパー』
手足をカギ状にして壁をクライマーのように登る全長2cmのキノコ。
小さくても能力はノブナガと同じだ。
穴の入り口に到着した。
構わず入ると、暗くて分からない。
直ちに《猫目》を発動させて確認すると、マンホール状に長く上まで続いていた。
どんどん登らせる。
リモコン操作をしている感覚。
10分くらい進むと、ミニキノコは大きな洞窟に出た。
ノブナガたちが住む空洞と同じサイズの空間が上部にあったのだ。
更に、奥へと続く穴があり、突き当りの場所には天井から陽の光が帯状に差し込み、丸っこい生物を照らしていた。
ミニキノコの画像からだけでは、丸っこい生物の正確な大きさは分からないが、近くの枝木と比較して、2階建てバスと同じくらいだろう。
金色の鱗に覆われた玉子型の胴体で、そこから2本の首が伸びた先に竜のような頭が2つ。
ファンタジー世界や昔話しに登場する架空の生物のよう。
ミニキノコを接近させる。
こっちは2cmのキノコだ。気づくわけない。
大岩を避け(実はちょっとした小石)、巨大な谷を下って登り(単なるみぞ)、遥かに遠い道のりを進んだ(10mくらい)。
近寄るほどに、戦車のキャタピラみたいな金色に輝くウロコは目立つ。
本当に金(ゴールド)だったりして。
突然、竜頭がこっちを向いた。
即ミニキノコ停止。
見つかった?
たまたま向いた先に俺がいただけ?
不思議な生物は巨体を揺らして近寄ってくる。
長い首を下ろし、2cmのキノコをクンクン嗅いだ。
クソでかい口が側にある。
こんなキノコによく興味を持ったな。
てか、よく見つけたな。
食う気?
でもよかったー、本体でなくて。
やがて排泄物を尻の穴から零しつつ、のしのし巣穴に戻ってゆく。
やれやれ。
下の階層は巨大生物が移動するたびに、天井からぱらぱらと土が落ちる。
あー、なるほど。
この良い感じの腐葉土って、あの生物のうんちだったんだー。
知らなければ良かった真実……。
ねねが、『ちょっとマジでー、超ヤなんですけどー』と文句を言った。
ミニキノコを停止させていたが、巨大生物が襲ってこないのでアタックを再会する。
時間をかけ生物の背後、垂れる金色のしっぽをハシゴがわりに登った。
生物は動く気配がない。
くすぐったくない? まあいいけど。
調子に乗り、背中から首に生えるふさふさの毛を掴んで竜頭まで登る。
分裂個体なのでやりたい放題だ。
2本生える角の間に立った。
見晴らしが良いなー!
『日本まんが昔ば◯し』みたいに『ぼうや~良い子だ♪』と聞こえてきそう。
どうも巨大生物にとってキノコは、そこら辺に生える雑草と同じで、どうでもいい存在なのだろう。
それとも、さきほどキノコの臭いを確認したおり、体内に含んだ刺激成分にやられ、食欲を害したか。
どっちにしても、俺たちにとって、この巨大生物は大いに利用価値がある。
さっそくミニキノコに頭部から《胞子散布》をさせた。
上の階層は差し込む光量が少ないが、じゅうぶんキノコは成長できる。
どうせなら上の階層も俺たちケンジンノコでいっぱいにしようじゃないか!
ここは良い。とても良いぞ。
不思議な生物のお陰で、近寄る生物はいないだろう。
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しばらく様子見ですか。
この先、丸ごと書き直しでリメイク改稿する事があったり、話を派手にするなら先ほどの
投稿ではありませんけど、世界設定は良いとして持っている能力は派手にした方が良いかなと思います。
菌糸伸ばして生命体を乗っ取るとか?
最強に至る話が、少しだけ強くなるまで数十話も掛かるようだと確かに厳しい。
最底辺からゆっくり展開で強くなる話って最近あまり読まれないですもんね。
人間スタートならそれでも良いんでしょうが、人外だと。
七さん、コメント再びありがとう!
ご指摘、参考にさせて頂きますね。
豚人間は豚人間で彼らなりに文明や理屈があって
その価値観の中でまっとうに生きようとしているのはとても面白いと思う。
人間に飼われてる豚や鶏からしたら人間もこんなもんだろうなと。
ちょっと話の要素に暗いものがこの先もたくさんありそうなので
話の爽快感という意味では人気が出てくるかは不安もありますが……。
今のところ悪役の豚を殺しても爽快感が無いので。
胸がスカッとするかというと特にそういう事も無く。
なんだろ、菌なのが地味なのかな?
風の谷のなんちゃらの粘菌や腐海ぐらいに派手になったらそういうのも解消される?
キノコでありながらもいろんな特性を取り込めるという設定ですが
そこは慎重に脱線せずにいって欲しいと思います。
こういう人外転生系統のお話は、いろんな事ができる結果
「ん?この話キノコじゃ無くても良いじゃん」的な技を使い出す事が
良くあるのでそこはご検討願いたい。
応援しています。
七さん、コメントありがとう!
おっしゃるとおり、本作品、全然人気なくて、地味過ぎるんでしょうね、鬱要素もあるし。
作品のストックがちょうど昨日で切れたので、投稿はとうぶん、見送る予定にしております。
と言っても、気が変わって書き出すかもしれませんし、自分でもよくわかりません。
応援コメントに対して、いい加減な返信で、ごめんなさいね。