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新しい街
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しおりを挟む「ハイエルフには相手の属性を見ることが出来るんです。火属性の人は赤、水属性の人は青という風に必ず魔力を纏っているので」
なるほど…それなら全属性の魔法が使える俺は6色にみえるのかな?なんだかごちゃごちゃしてそうだ。
「ソラさんは多分全属性使えるんですよね?魔力の色が虹色なんて祖父に聞いていなければ分かりませんでした」
「ネルのおじいちゃんは知ってたの?」
「はい。800年ほど前には全属性が使える人は珍しくなかったそうですから」
「そうなんだ…」
父さんたちも全属性は言い伝えでしかないって言ってたもんな。その800年前の人たちのことを伝えてたのかな。できれば会ってみたかったな。
「怒らないんですか?」
「なんで?」
ネルの質問の意図が分からない。なぜネルの事を怒る必要があるんだろうか。特に嫌なことをされた覚えはないんだけど
「その…勝手に属性を把握していたことや、説明もなしに解呪をさせたり…」
「ハイエルフなら誰でも見えるんだろ?それに対して怒っても仕方ないし、それに解呪の事だって驚きはしたけど説明されててもやってたと思うよ」
「でも…」
「ネルはでもでも言い過ぎ。でもは禁止ね。俺が良いって言ったらいーの!!」
「……わかりました。ありがとうございます」
俺の言葉に何かを言おうとしたが、少し考え頭を下げるネル。チームを組むならネルにも話しておかないとと思ってたしいい機会だ。
俺はライドと同じようにネルにもスキルや加護について説明した。
初めは驚いていたネルだったが、何となく俺が凄いスキルを持っていたことに気づいていたそうだ。
そりゃあ醤油や味噌などこの世界に無いものを作ってたらおかしいと思うよな。
次からは気をつけないといけない。
「そう言えばネルは里に帰らなくていいの?」
10年も違法奴隷にされていたのだ。家族も心配しているだろうし、1度里に帰ったほうがいいのではないか。しかし俺の言葉にネルはゆっくりと首を横に振る。
「実は…里の場所が分からないのです。里は人間から隠れていましたし、人間たちに捕まった時も目隠しをされ馬車に乗せられたので」
「そっか…」
「お気遣いありがとうございます。里に帰りたい気持ちはありますが、到底帰れないので諦めています。それに両親も里の掟を破った私を許すわけないですし」
ネルはどこか寂しそうに話している。里に帰りたい気持ちがあるのなら1度は帰らせてあげたい。時間がかかってもハイエルフなら寿命も長いし、ネルのご両親が死ぬことはないだろう。
何か少しでもヒントになるものがあればいいんだけど…
「ネルが連れ去られた時、初めて行った街の名前とか知らない?」
「そうですね…もう10年も前なので曖昧なのですが…確か、デル?デルタ?そんな名前だったと思います」
「デルタ?」
名前を聞いたのはいいもののこの世界の街についてほとんど知識がなかったんだった。俺はグーフ神の加護を使いこの世界の街について調べた。全てを調べると膨大な量が一気に入ってきて頭が痛くなるため(実証済み)デルとつく街だけを調べている。
「全部で3つかな。デルート、デルカ、デルタ。これがデルのつく街みたい」
「ソラさん?」
「これを調べていったらネルの里についてわかるかもしれない。そしたら里に帰れるよ」
「ソラさん…私のために調べていただいているのはわかります。けれど今は里に帰るつもりはないんです」
「ネル…」
「すみません。里の事はもう何もしないでください」
ゆっくりと俺に頭を下げるネルを見ると「わかった」と言うしかなかった。ネルは俺の返事を聞くとゆっくりと部屋から出ていく。
俺はネルが里に帰ることが出来れば喜ぶと思っていた。誰だって帰郷する場所があると安心するんだって。でもそれは俺だけの思いなのかな。人の気持ちなんて分からないよ。こんな時神様のように人の気持ちが覗けたら、人の考えがわかってもっとスムーズにいくのかな。
「ソラ?聞きたいことがあるんだけどって、その顔どうしたの?」
「え?」
「え?じゃないわよ。何落ち込んでるのよ」
ドアをノックするも返事をする前に部屋に入ってくるサリア。いつも思うけどノックの意味がないと思う。そんなサリアの言葉に俺は初めて落ち込んでいることに気がついた。
「何があったの?話ぐらいなら聞いてあげるわよ」
「人の考えてることが分からなくて怖いんだ。俺が良かれと思って提案したことが相手にとって迷惑だったんだ。俺が相手の考えてることが分かれば提案すらしなかったのに。相手の考えてることが分からないから、平気で相手の嫌なことをしてしまう。人の考えてることが分かればいいのに」
俺の言葉を静かに聞いていたサリアだったが、全て話終わると俺の方を向いてデコピンをしてきた。
「ソラは真面目ね。それに優しい。優しいから相手を傷つけたくないんでしょ?だから人の心がわかりたいんでしょ。でも私は人の考えてることがわかる方が怖いわよ。私は臆病だから相手の思っていることがわかりたくないわ」
「でも相手を傷つけるかもしれない…」
「あのね、人は1度傷つけたぐらいじゃ死なないの。まぁ傷の深さにもよるんだけどね。そんなに傷つけることを恐れていたら誰とも関われなくなるわよ」
「でも…」
「そんなに気になるなら1度本音を聞けばいいじゃない。バカ正直に本当に思ってることを教えてくださいって。あのお姉さんもそうしたら教えてくれるわよ」
そうだろうか。ネルは俺に呆れてないだろうか。サリアの方をチラッとみるとガッツポーズをしている。
「わかった。正直に聞いてくる」
俺はサリアに礼を言うとネルに会うために部屋からでる。
sideサリア
「やっぱり大切な人なのかな」
夕方ソラが連れてきた女の人はとても綺麗だった。背が高くて胸もあってすれ違うと誰もが振り返るような美人。そんな綺麗な人がソラに敬語を使って話している。
それにソラも満更ではなさそうな顔をしていた。チームメンバーと話していたけど本当にそれだけ?
今もあの女の人との関係を聞きたくて部屋まで来たのに、何故か背中を押してしまった。あんな泣きそうな顔をしていて、放置することなんてできないよ。
「あー!!気になる。気になるけど……」
そろそろ休まないと明日も家の手伝いがある。このままソラが来るまで部屋の中で待っていることも考えたけど、明日のことを考え私は部屋に戻った。
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