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新しい街
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しおりを挟む「こっちだな」
北の方を指さしゆっくりと歩いていく。1キロほど離れていても分かるんだな。凄いとライドに伝えると少し照れたような顔をしている。
「ゴブリンは特に異臭がするからな。わかりやすいんだ」
昨日は特に感じなかったがそうなのか。俺はライドの後ろにいながら鑑定もしつつサンシの葉も摘んでいく。少しでもお金になるんだからチリツモだ。
順調に歩いていたが10メートル程手前でライドが止まる。薬草採取に集中していた俺はぶつかりそうになったが、すんでのところで止まることができた。
「ソラ見えるか?」
目の前には五体のゴブリン。手にはそれぞれ鳥やうさぎなどを持っている。あれは食料なのだろうか。
反対の手には木の棒に石を括りつけた武器のようなもの持っている。
「ああ見える。五体だな」
ライドがコクリと頷く。
ゴブリンはたいして強くない。ライドがどのくらい強いか分からないが、俺だったらこのまま行って全てを倒すことが出来る。けれど自分の強さを隠している俺は公にゴブリンを倒すことは出来ない。
「囲まれると危ないからソラは遠くから風魔法で援護してくれ」
「大丈夫か?」
「この間だってここにいる倍以上のゴブリンを相手にしたんだぞ。五体なんて楽勝だ」
「わかった。じゃあライドが囲まれないように援護する」
「頼むな。なら気づかれないようもう少し近づくぞ」
ゆっくりと気配を消しながらゴブリン達に近づいていく。さすが獣人族だけあって気配を消すのが上手だ。
残り5メートルのところで合図をすると一瞬で詰め寄るライド。速度強化のスキルを持っているためほんとに一瞬だ。
突然の襲撃者に対応出来ないゴブリンたちはその場に立ち尽くしている。その間に二体のゴブリンを倒していく。
攻撃されたことを理解したゴブリン達は獲物を捨て、ライドを見ている。けれど統率の取れないゴブリンは各々が攻撃してくるため速度強化をしているライドの速度についていけず一体ずつ倒されていく。
「俺必要ないんじゃ…」
最後の一体が倒される。俺は何も手出しすることなく終わってしまった。
隠れていた場所から立ち上がるとライドの方へと近づいていく。
「ライドお疲れ様ー」
「おう。余裕だっただろ?」
「まぁねッーー!ライド危ない!!“風よ!!”」
ゴブリンの耳を切り落としていくライドに向かって矢が2本飛んできた。咄嗟に魔法で風の壁を作り、ライドをまもる。すぐさま探索をすると100メートルほど離れた位置にゴブリンを二体見つける。
「“風よ”」
すぐさま風魔法を使い矢を打ってきたゴブリンに攻撃をする。ライドの方へ走っていき周囲を注意深く見ても攻撃されることはなく、探索をしても先程の二体以外のゴブリンは見つからなかった。
「助かったソラ」
「ライドを守るのが俺の仕事だったからね」
五体のゴブリンの耳を切り落とすと俺が倒した二体の元に行く。こちらもゴブリンだったようだ二体とも死んでいる。
こちらも耳を切り落とすとライドに渡す。
「流石だな。簡略詠唱だし、威力も申し分無い。ソラは才能あるんだな」
「そんなことないよ。村の警護をして何度も練習してたんだよ」
そういえば俺が退治してたのってオオカミだよな。白狼族的には俺は仲間を殺した敵になるのか?言わない方がいいな。
「そうか。でもソラの年で簡略詠唱なんて珍しいことなんだから誇っていいぞ」
「うん。ありがと。さて依頼も達成出来たしそろそろ街に帰る?」
「そうだな。帰りも薬草採取していくか」
「まだ取るの?」
「だって金になるだろう?」
「はぁ。あまり取りすぎると次の依頼が遅くなる可能性もあるし、他の冒険者が採取出来ない可能性もあるんだよ。もう100枚ぐらいあるんだから今日は終わり」
「えー。まぁソラが言うなら従うかな」
俺の言葉に納得してくれたのかライドは薬草採取を諦めてくれた。行きと同じ道を通り街へと帰ってくる。
そうして寄り道せずにギルドへと向かった。
「おかえりなさい2人とも」
「「ただいま」」
俺たちに気づいたキースさんが声を掛けてくれる。返事をするとそのままキースさんのところで依頼を達成出来たことを告げ、サンシの葉とゴブリンの耳を取り出す。
やっぱり並ばなくていいって良いな。他の冒険者は列に並びながら自分たちの番を待っている。
「はい。全てサンシの葉だし、ゴブリン討伐も確認できたよ。サンシの葉が104枚だから銀貨5枚と銅貨2枚、ゴブリンが七体だから銀貨7枚ね」
俺は貰った袋から銀貨4枚を貰うと残りを全てライドに渡す。
「おい、俺貰いすぎだって。もう少し取っていけよ」
「ゴブリンをほとんど倒したのはライドなんだし、俺はこれぐらいでいいよ」
「それなら薬草採取はソラの方が頑張ったんだから、もう1枚ぐらいもらっとけ」
そう言って袋から銀貨1枚を取り出すと俺の方へと投げる。返そうかと思ったが既にライドはいなくなっていた。どうやら速度強化を使って急いでギルドから出ていったみたいだ。
俺は貰ったお金をカバンへ仕舞う。
「そういえばキースさん。ゴブリンって弓もつかうんですか?」
「弓?ここでは聞いたことないな。ゴブリンは拾った武器や簡易的に作ったもので戦うし、あの森にいるゴブリンは知能が低いから魔法や弓は使えないはすだけど」
「そうですか。実はーー」
俺は森の中で100メートルほど離れた位置からゴブリンが弓を使ってライドを倒そうとしたことを伝えた。
「100メートルも離れている場所から弓を撃てるなんて相当な力が必要だし正確さもいる。もしかしたら知能の高いゴブリンがいるかもしれない。有益な情報をありがとうソラ君」
「いえ。役に立てたのなら嬉しいです。じゃあまた来ます」
ギルドを出て宿を目指す。知能の高いゴブリンか。あの森にはいないってことは他のところにはもっと強いゴブリンがいるってことだよな。どんなゴブリンなんだろ。俺にも倒せるのかな。
「おーいソラ君ー!!」
前から声を掛けられる。宿の一人娘のサリアさんだ。どうやら買い物帰りらしく両手にはたくさんの荷物を持っている。
「サリア。はんぶんもつよ」
「ありがとう」
サリアから食材の入った袋を貰うと宿の方へと歩いていく。サリアに依頼はどうだったのか聞かれたので、今日あったことを説明する。
「そんなゴブリンがいるんだね」
「アカギの森では珍しいことみたいだけどね」
「そうなんだ。ちょっと怖いね」「大丈夫だよ。そのために俺たち冒険者がいるんだから。何かある前にちゃちゃっと倒してくるよ」
「ふふっ。ソラ君頼もしいね」
「だろ」
そんな話をしているといつの間にか宿についた。俺はテーブルの上に袋を置くとマーサさんに話しかけられる。
「さっきライドって男の子が来てね。次は2日後に9の鐘がなる頃にギルドに集合だってさ」
「ありがとうございますマーサさん」
「いいよ。こっちも手伝って貰ったみたいだしね。夜ご飯まではまだ時間があるから休んどきな」
「はい。じゃあねサリア」
「うん。ありがとうソラ君」
2人に挨拶をすると自室に戻る。そういえばこの宿に泊まって何日か経ってるけどまだ旦那さん見たことないんだよな。今度ご飯美味しかったですって伝えよう。
マジックバスで身体を綺麗にして服を着替えると食事の時間まで休んだ。
「明日は丸一日休みだし、昨日作った魔法でも練習するかな」
そんな事を考えているとサリアがご飯の時間を伝えに来てくれた。夕食はやっぱり美味しかったし、旦那さんにも声をかけることが出来た。マーサさんの旦那さんだから恰幅の良い男の人を想像してたけど、思ったりも細く背の高い人だった。サリアが背が高いのは父親譲りかもしれない。
旦那さんはリンドさんというらしく本当に寡黙な人だ。料理がとても美味しかったことを伝えるととても小さな声で感謝の言葉を言われた。それだけいうと厨房に篭ってしまったので2人に挨拶をして部屋に戻る。
「あんまり寝てなかったから眠た…」
昨日は魔法を創造することに熱中してしまい睡眠時間が取れなかったせいか、ベットに横になると直ぐに寝てしまった。
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