上 下
26 / 78
新しい街

4

しおりを挟む
 

「この辺りだったよな」

ギルドを出て数分。地図と睨めっこをしながらキースさんに教えてもらった宿屋を探す。

「お、あれだな」

目の前に目的の場所を見つける。二階建ての木造の宿だ。少し汚れているが風情がある。

「失礼します」

扉を開けて中に入る。見た目と同じように中も木造だが外とは違い中はとても綺麗になっている。見た感じ食事処なのか丸テーブルと椅子がたくさんある。

「はいはーい。あら?小さい子ね。お客さん?」
「ち、ちいさい…」

奥から女の子が1人やってくる。見た目は俺よりも少し年齢が高いぐらいだと思う。俺を小さいと言っていたが、目の前の女の子は確かに身長が高い。俺は150cmぐらいあるとおもうけど、目の前の子は160cmはありそうだ。

「コラ!!サリア!お客さんになんてことを言うの!!」
「いた!!もう~お母さん」

呆然としていると奥からもう1人女の人が出てくる。サリアと呼ばれた子のお母さんみたいだ。サリアと変わらない身長で横にも幅がある。

「娘が失礼したね。アンタはお客さんかい?まだわかいようだけど」
「俺はソラです。ギルドのキースさんに教えてもらいました。ここには客としてしばらく泊まらせて欲しいんですけど、良いですか?」
「へぇ、キースの。なら冒険者ってことかい?」
「はい。といっても今日登録したばかりなので依頼を何もしてないですけど」
「そうかい。まだ若いのに頑張るねぇ。ところで何日泊まるんだい?」
「取り敢えず1ヶ月ぐらいを考えてます」

しばらくはこの街を拠点にし依頼をしていきたいと思ってるし、そのぐらい必要だろう。依頼で金を稼いでいけば宿代も払えるだろう。

「あいよ。朝夕の食事付きなら1日銀貨3枚、食事無しなら1日銀貨2枚だよ」
「食事付きでお願いします。お金は日払いでも良いですか?」
「いいけど、最初の1週間分だけは纏めて払ってもらえるかい?アンタを疑ってる訳じゃないけど、信用も兼ねてんだ」
「わかりました」

俺は1週間分の金貨2枚と銀貨1枚を渡す。食事付きで1日3000円くらいか。地球であればとても安いぞ。こんなに安く泊まれるのはやっぱり物価が地球とは全然違うんだろう。その辺もちゃんと勉強していかないとな。

「ちゃんと貰ったよ。今更だけど私はマーサでさっきの子は娘のサリア。もう1人旦那がいるんだけど料理のために厨房に籠ってることが多いからね。なにかあれば私かサリアに言いな」
「よろしくお願いします」

この場にサリアさんは居ない。先程のマーサさんに部屋の掃除をするように言われて2階に行ったからだ。
見た感じ1階は食事処で、2階は宿屋って所かな。汚くなければどんな部屋でもいいんだけど。

「お母さん。部屋の掃除終わったよ!!」
「ならソラ君を部屋に案内しな」
「わかった!ソラ君こっち!!」

俺はマーサさんに挨拶するとサリアさんについて2階へと上がった。案内されたのはベッドと机、クローゼットのある部屋だ。荷物もそんなに要らないし、このぐらいがちょうど良いだろう。

「それにしても冒険者って荷物少ないの?ソラ君そのカバン以外持ってないよね?」
「この街に来て買おうかと思ってたんです。荷物になると思って」

荷物は少しは持ってきてるけど、防具や武器は持っていないし嘘はついてない。一応家から少しだけ服を持ってきてるけど、アイテムボックスの事はあんまり言いふらさないでおこう。

「ソラ君冒険者になったってことは12歳以上なんでしょ?ならもっと気軽に話そうよ。私も12歳なんだ」
「えっと…わかった。よろしくサリア」
「よろしく!!ソラはこの街初めて?私が案内してあげる!!」
「でも仕事があるんだろ?」
「大丈夫よ。ねぇおかーさん!!ソラ君に街の案内してあげてもいいー?」
「いいけど、夜の営業までには戻ってくるんだよ」
「はーい!!」

サリアは部屋のドアから顔だけ出すと大きな声を出してマーサさんに話しかけている。マーサさんも大声を出しており俺にまで返事が聞こえる。
返事を聞いたサリアは満足そうに俺の顔を見ると、急いで俺の手を掴み走り出した。
俺はマーサさんに挨拶をするとサリアについて行く。

「ソラ君は行きたいところある?」
「取り敢えずキースさんに薦められたお店かな。武器と防具を買いたいし」
「なんてお店?」
「確かこのお店」

俺はギルドで購入した地図をカバンから取り出すとサリアに見せる。確かキースさんオススメのお店はこの当たりだった気がする。

「ならあそこね。ついてきて」

前を歩き出したサリアに着いていく。道中色んな話をした。サリアも12歳になったばかりで宿屋で仕事をしているらしい。あの宿はギルドからの紹介も多いらしい。たまに難癖つける冒険者もいるそうだが、サリアの父親が元冒険者らしく力でねじ伏せてるそうだ。
なんて男らしい…

「ここだよ」

サリアに案内された先には剣と盾の絵が描かれた白いレンガ調の建物が目の前にあった。
どうみても高そうな雰囲気がするんだけど。ここで所持金スッカラカンにはならないよね?

「本当にここで合ってる?高そうなんだけど」
「大丈夫。ほら入るよ」

意を決して建物の中に入る。外観通りに中も広く綺麗だ。それに防具も剣もたくさんある。
こういうのを見ると男心がくすぐられる。とてもワクワクする。

「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」
「あ、えっと、剣と鎧が欲しくて」
「見たところ冒険者になったばかりという感じですね。ではこちらに」

執事服のようなものを着た男の人に話しかけられる。見た感じが凄くセバスチャンっぽい。なんとなくだけど…

案内されたのは店の一角に無造作に置かれた剣や盾、鎧がある場所だ。
先程までは一つ一つ丁寧に置いてあったのに凄く差がある。

「こちらは街の無名の鍛治職人が作ったものです。安く手に入りますが効果の程は確証出来ません。有名な職人が作った武具は先程見ていただきましたが、あちらは最低でも金貨10枚からです。こちらは銀貨1枚から買えますので初心者にオススメでございます」
「ありがとうございます」

俺はセバスさん(仮)にお礼を言うと目の前の剣に目を向けた。そのまま鑑定をかけると武器名、攻撃力、耐久力などが表示される。
あまり攻撃力の高いものはなく、10ぐらいが平均だ。ちなみに素手で戦うと大体5ぐらいと思うといい。
俺はそのまま鑑定していると、一つだけ攻撃力の高い武器を見つける。

名前:ロングソード
攻撃力:100
耐久力:100
加護:耐久力上昇、攻撃力上昇

耐久力上昇:壊れにくくなる
攻撃力上昇:攻撃力が上昇する

これだけ能力値がすごく高い。作った人の名前は…あるかな。
俺は名前がないか確認すると持ち手のところに小さく名前が書いてある。ライドさんか。他にもこの人が作ったものがあるかもしれない。
俺は目の前の山からライドさんの名前が付いてあるものだけを鑑定できるようにする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ
ファンタジー
主人公の沖 紫惠琉(おき しえる)は会社からの帰り道、不思議な店を訪れる。 その店でいくつかの品を持たされ、自宅への帰り道、異世界への穴に落ちる。 落ちた先で紫惠琉はいろいろな仲間と穏やかながらも時々刺激的な旅へと旅立つのだった。

婚約破棄しろと迫られまして。

えんどう
恋愛
 国民から愛され、絶世の美女と謳われている王女・アリアナに呼び出された侯爵令嬢のシャルロット。  突然の招待に緊張していると、王女から告げられたのは、シャルロットの婚約者であるアルフレッドと王女は想い合っているが、昔からの婚約者のシャルロットがいるせいで自分たちは結ばれないのだということ。  政略的な婚約でありながらもアルフレッドを慕っていたシャルロットが考えたのは、失恋のことよりも、新たな婿養子をどうするかだった。

乙女ゲームに悪役転生な無自覚チートの異世界譚

水魔沙希
ファンタジー
モブに徹していた少年がなくなり、転生したら乙女ゲームの悪役になっていた。しかも、王族に生まれながらも、1歳の頃に誘拐され、王族に恨みを持つ少年に転生してしまったのだ! そんな運命なんてクソくらえだ!前世ではモブに徹していたんだから、この悪役かなりの高いスペックを持っているから、それを活用して、なんとか生き残って、前世ではできなかった事をやってやるんだ!! 最近よくある乙女ゲームの悪役転生ものの話です。 だんだんチート(無自覚)になっていく主人公の冒険譚です(予定)です。 チートの成長率ってよく分からないです。 初めての投稿で、駄文ですが、どうぞよろしくお願いいたします。 会話文が多いので、本当に状況がうまく伝えられずにすみません!! あ、ちなみにこんな乙女ゲームないよ!!という感想はご遠慮ください。 あと、戦いの部分は得意ではございません。ご了承ください。

悪役令嬢は努力します。

月島
恋愛
目が覚めたらファンタジー世界。 前世ではまっていた乙女ゲームの公爵令嬢リオン・クウォーツに転生していた主人公。しかしリオン・クウォーツは悪役令嬢で物語の最後には婚約破棄され国外追放される人物!5歳から始まる物語、主人公は努力して無事人生を全うできるのか!? 主人公がひたすら努力して周りとの関係改善していく中でのラブファンタジー。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

義妹が勝手に嫉妬し勝手に自滅していくのですが、私は悪くありませんよね?

クレハ
恋愛
公爵家の令嬢ティアの父親が、この度平民の女性と再婚することになった。女性には連れ子であるティアと同じ年の娘がいた。同じ年の娘でありながら、育った環境は正反対の二人。あまりにも違う環境に、新しくできた義妹はティアに嫉妬し色々とやらかしていく。

処理中です...