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転生しました
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しおりを挟む「どうした?」
「なんでもないよ。早く行こう」
黙ったままの俺を心配したのか父さんが顔を覗き込んでくる。俺は首を横に振って笑顔を浮かべると父さんの手を取って部屋から出ていった。
(いくら悩んでも答えは出ないし、まぁどうにかなるでしょ)
前世ではもっと卑屈というか慎重というか、こんな楽観的な考えじゃなかったんだけどな。やっぱり性格って両親や周りの環境から出来るんだな。
そんなことを思いながら庭へと向かう。父さんとの修行は専ら家の庭でやってる。まだ筋トレや素振り、軽い手合わせだからそんなに広いスペースも必要ないからちょうど良いらしい。
「じゃあいつも通りにまずは素振りから
その後は筋トレだな」
「はーい」
俺は木の剣を手に取ると型を意識しながら素振りをする。最初は20回振るだけでもキツかったが、今では100回振れるようになった。
筋トレも徐々に回数が増えていき今は100回ずつ。俺の隣では父さんが凄いスピードで筋トレをやってる。俺が1回やる事に2、3回は出来ているから凄い。
「よし、昨日の続きだな。父さんをこの円の中から出してみろ。もちろん剣だけでな」
父さんは自分の足元に人一人分の円を描くと中に入る。先週から始めた手合わせだ。父さんを円の外に出せたらいいのだがビクともしない。父さんも木の剣をもっているが、利き手じゃない左手でもっている。それなのに俺は父さんに一太刀も入れられないし、むしろ軽くぶっ飛ばされてしまう。
「まだまだぁ!!」
「腕の力だけで振りぬこうとするから力が入らないんだよ」
向かっては投げ、向かっては投げを何度も繰り返している。こんな時は前世で何か運動をやれば良かったと後悔する。勉強ばかりで、運動なんて一切やってこなかった。やったところで両親には見向きもされないし。それならと可能性のある勉強ばかりやってたんだった。
いや、今世に影響するかは分からないけどもしかしたら『身体が覚えてた』とかあるかもしれないし。
「今日はこれぐらいにしよう」
空はいつの間にか傾き始めていた。青空だったのが既にオレンジ色の空になっており、少し紺色がかっていた。
「今日もダメだったー」
俺はというと父さんを円の外に出すことなんて出来ておらず。それどころかバランスを崩すことすら出来ていない。どんだけ非力なんだ6歳!!
「まぁ落ち込むな。まだまだこれからだろ。ゆっくり頑張っていけばいいさ」
「はーい」
まだ6年ある。6年もあればステータスを隠す方法なんて隠蔽魔法以外にも思いつくかもしれない。
(案外神様に聞いたら教えてくれるかもしれない)
『僕を呼んだ?』
「へ?」
転生前に会った神様の事を久々に思い出したと思ったら、突然頭の中に声が響き気づいたら真っ白の空間にいた。
『やぁ、久しぶり。藤田明彦君。いや、ソラ君と言った方が良いかな?』
「神様!?」
俺の目の前には先程思い浮かべていた神様の姿が会った。あの時と同じように10歳くらいの見た目だ。あの時は俺の方が大きくて神様を見下ろしていたけど、今では俺が神様を見上げている。以前はよく見えなかった顔も今なら少し見える。と言っても前髪で表情は分からないが、黒髪の間から黒い目がみえている。
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