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16.精霊術師、涼む

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『ウゴオオオオオォォッ!』

 氷の洞窟にて、俺が振り下ろした杖の一撃により、スノーゴーレムが断末魔の悲鳴を上げながら崩れ落ちる。

 フレイムタートルと比べるとタフだが、それでも防御力を無効化させた上で、たった3回殴るだけで倒すことができた。

 炎の鎧のおかげで身体能力も上がってるし、ゴーレムの動きが鈍いってのもあって楽勝だ。

「あっ、レオン、見てっ、何か落ちたよー!」

 モンスターがドロップした、をエリスが拾い上げてはしゃいでいる。

 彼女は収集品をいちいち拾ってくれるし、集めたものを一時的に消せるだけでなくいつでも取り出せるので、最高の荷物係でもあるんだ。

「見て見て。これ、宝石みたいですっごく綺麗ー!」

「それが目当ての氷の結晶だよ」

「へえー!」

 スノーゴーレムを倒したあと、自然消滅せずにたまに残るのがこのキラキラと輝く氷の結晶だ。

 ボスのように強い力が宿っているものは、倒さずとも削ったものが消えずにそのまま残ることが多いが、そこら辺の雑魚モンスターの場合は削ったものも消失するので、倒したあとにドロップしたものを拾うことになる。フレイムタートルの甲羅も同じ理屈で、ドロップしたものを回収しているんだ。

 ただ、甲羅に比べると結晶のドロップ率は少し低いらしく、五匹倒してようやく1個手に入れることができた。あと19個、なんとか頑張って集めるとしよう。

「「――ふう……」」

 あれから俺とエリスはしばらく狩りをしたあと、さすがに疲れたこともあって休憩することに。

 疲労も無効化できたらいいんだが、さすがにそれはできなかった。そういうわけで、モンスターの奇襲に対応できるように見渡しのいい通路で壁を背に座り込んでいた。

 こっちには強力な物理耐性があるとはいえ、それに慣れて胡坐をかいてしまうようだと、今後出てくるボスや強敵に対応できそうにもないしな。

 結晶集め自体は18個拾ったのであと2個で終わりなんだが、もうそろそろ100匹倒すことになり、ボス部屋に突入しそうなのでその前に少し休もうってことになったんだ。

 ちなみに、一度ダンジョンの外へ出れば100匹倒したことはリセットされるので、ボスと戦いたくなければ一旦外へ出て洞窟に入り直せばいいんだが、エリスが戦いたいとねだるのでついでに倒すことにした。

 それにしても、以前ここへ来たときは黒魔術師マールの火魔法があっても寒くてしょうがなかったというのに、炎の鎧を着て戦ってると体がカッカしてきて涼みたいという気持ちにさえなる。

「うっ……?」

「えへへっ」

 おでこがやたらと冷たいと思ったら、エリスにただの氷片を当てられていた。

「レオン、汗も出てたし熱そうだと思って……ひゃっ!?」

「はははっ」

 俺はお返しとばかりに、エリスの太腿に氷片を当ててやった。無の上位精霊とはいえ、意識しなきゃ属性攻撃は無効化できないみたいだしな。

「むー……こんな悪い子は食べちゃえっ」

「あっ……」

 エリスが俺の当てた氷片を奪い取ったかと思うと、むしゃむしゃと食べ始めた。相変わらずこの子は突拍子もないことをやるもんだな……って、あれ、エリスが急に泣き始めた。

「ど、どうした、エリス、どこか痛むのか……? あんなもん食べるから……」

「う、ううん。違うの。わたし、嬉しくて……」

「嬉しいって……なのにどうして泣くんだ?」

「ずっと独りぼっちだったとき、いつかこんな日が来たらいいのにって思ってたの。レオンと一緒にいるのがこんなに楽しいんだなって……」

「…………」

 そうか、エリスは誰とも契約できずに長らくあの古びた神殿にいたんだよな。それも、彼女を見守っていた神官がミイラになってしまうほど。

 どれくらい寂しかったんだろう。追放されて一人になった程度で落ち込んでいた俺には到底想像がつかない。無の精霊じゃなければとっくに気が狂っててもおかしくないんじゃないかな。そう考えるとこっちまで胸が締め付けられる思いになった。

「エリス……これからは俺がずっと側にいるから、泣くなよ」

「うん……」

「さあ、しんみりして涼んだところで、そろそろボスを倒しに行くか!」

「だね!」

 俺はエリスと一緒に立ち上がり、笑い合った。泣く姿も綺麗だけど、彼女にはやっぱり笑顔のほうがよく似合う。
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