A級ギルドから追放された回復術師、無自覚なだけで元から最強の回復能力を有していた

名無し

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43.熱狂

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 名前:ラフェル
 年齢:20
 性別:男
 ジョブ:回復術師
 冒険者ランク:S
 所属ギルド:【悠久の風】※ギルドマスター
 ギルドランク:B

「おおっ……」

 ギルドランクのBという文字が一層輝いて見える。あまりにも眩しくてよく目を開けてられないくらいだ。あの幸運を絵に描いたような依頼達成により、俺たちのギルドは特例によってここまで昇格できたってわけだ。

 ギルド協会じゃ冒険者たちが我が事のように盛り上がってて、俺たちは歩くたびに指を差されてラフェルだのアイシャだのと名前を呼ばれたり、急に握手を求められたりと、最早ここで俺たちのことを知らない人間はほとんどいないんじゃないかと思えるほどの人気振りだった。

「あ、あのっ、困りましゅう!」

「おいおい、そんなに囲まれたら歩けねえって! ぶん殴るぞ!?」

「そこをどきやがれ愚民どもですわあぁぁっ!」

「「「「「ワーッ!」」」」」

「「「ひいっ」」」

「ははっ……」

 みんなの熱狂ぶりにはルアンの脅しやジェシカの罵倒でさえも火に油を注ぐ格好だな。まあこれも有名税ってやつで、特例でこれだけ利益を上げてるんだしある意味仕方ないだろう。俺自身、中身はまだ伴ってないと思ってるからなんともくすぐったい話なんだが。

「――あの、ラフェル様方、ちょっとお時間よろしいでしょうか?」

「「「「え?」」」」

 俺たちは神妙な表情の受付嬢に直々に呼ばれることとなった。一体なんの用事だっていうんだろう……?



 ◇◇◇



「「「「うっ……?」」」」

 屋敷内の茂みの中で目覚めたギルド【聖なる息吹】の面々は、互いにしばらく呆然と顔を見合わせたのち、我に返った様子でマスターのクラークを筆頭に入口のほうへと走っていった。

「――おーい、誰か、いるならここを早く開けてくれっ! 俺は聖騎士のクラークっていうもんだ! 俺たちが銅像を運んだんだからよっ!」

 クラークが叫びながらドアを叩き、やがて使用人の男が訝し気に出てくると、いかにもつまらなそうに目を細めてみせた。

「はあ? もうあの依頼についてはほかの冒険者様によって達成されましたゆえ、どうぞ早々にお引き取りを」

「「「「えっ……!?」」」」

「では――」

「――いや、おめーよお、ちょっと待てって! なあ、あれは銅像じゃなくて実際は人間が入ってて、俺たちはそれに奇襲されて酷い目に遭ったんだぞ!?」

「これはこれは、とんだご冗談を……。それでは」

「「「「……」」」」

 呆れた表情を隠さなくなった使用人によってバタンと扉が閉められ、施錠された音がしてからまもなく、クラークたちがいずれも赤い顔でわなわなと肩を震わせる。

「お、おめーら……あれは手の込んだ悪質な悪戯に違いねえっ! あんな重い甲冑を着込んでたんだしそう遠くへは行ってねえだろ。みんなで手分けして、まずこの屋敷の敷地内を隈なく探すぞっ!」

「「「了解っ!」」」

 スピードがアップするエアルの補助魔法を受け、いつになく気合が入った様子で自分たちが運んだ甲冑姿の人物を探し回るクラークたち。

「――いっ、いましたっ! ここです!」

「「「おおっ!」」」

 まもなく大声を上げた剣士ケインの元に駆け寄っていくクラーク、エアル、カタリナの三人。

「さすがケイン、気配を察知する能力だけは長けてるな!」

「ほんと、ほかのことに関してはダメダメだけどそれだけは凄いわねえ」

「あとは、いかにもむっつりスケベそうな顔も含めて最悪だけどねえ」

「「「あははっ!」」」

「……僕、もうギルド抜けていいですかね?」

「「「ちょっ!」」」

「冗談です……。僕がいなくなったらこのギルドは終わりでしょうし。で、どうしましょうかね、これ……」

 ケインが剣で指し示したのは、噴水の上で騎士の銅像であるかのように座り込み、寝息を立てる甲冑姿の人物だった。

「こ、この野郎……おそらくだがよ、こいつは依頼人とグルになって悪戯してやがったんだ。んで屋敷の窓から俺たちが苦しむ様子を見下ろしてゲラゲラ笑ってたんだろうよ!」

「うあっ……それマジ最低……」

「とんでもないやつですねえ……」

「拷問してやらないと気が済まないねえ」

「「「「……」」」」

 互いに凄みのある笑顔を見合わせてうなずき合うクラークたち。それからほどなくして、噴水へと飛び込んだ彼らの痛々しい悲鳴が周囲に響き渡るのであった……。
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