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38.墓
しおりを挟むランク:E
依頼者:墓地の管理人
期限:本日まで
報酬:銅貨3枚
依頼内容:
南にある郊外の墓地に不気味な何かが居座っているという噂があり、墓参りができずに困っている等の苦情が複数きている。なので現場に向かってもらい、発見したら即刻追い出してもらいたい。報酬は早い者勝ちということで。
「よし、今度はこれにするか」
「「「ええっ……!?」」」
次に俺が選んだのはこの依頼だ。アイシャ、ルアン、ジェシカがドン引きしてることからもわかるようにEランクの中でも特に報酬がしょぼいが、こういういかにも受けたくないなっていう依頼こそ福が隠れてるもんなんだ。
それに、何より住人たちから苦情が届いているというのが大きい。その上報酬が少なくて誰も受けたがらないっていう。前回もそうだがこうした依頼を攻略するのは、ギルド協会にとっては評判が上がることにつながるわけでかなり助かるはず。
ってなわけで早速俺たちは南にあるっていう墓地へと向かい、すぐに到着したものの、早朝という時間帯で薄暗くさらに曇り空ということもあってなんとも不気味な空気が漂っていた。
「朝の墓地っていうのも中々不気味なもんだな……」
「で、でしゅねえ……正直、死にそうでふ……」
「……」
アイシャはずっと俺にしがみついてるからそうなんだろう。
「アイシャは怖がりでいいなあ。俺もキャーって言いながらラフェルに抱き付きたいけど、別に怖くねえかな」
『これでも怖くないんですの?』
「「「っ!?」」」
ジェシカが幻で自身の幽霊っぽいのを作り出したのでなんとも心臓に悪かった。アイシャなんて俺を掴んだまま白目剥いちゃってるし……。
「て、てめえ、またぶん殴られてえのか!?」
『ホホッ。幻に拳なんて効かねえでございますのよ?』
「こらこら、二人とも喧嘩はやめるんだ。これでよしっ、と……」
「――あっ……」
アイシャに回復術を施して起こしてやる。こうした気付け、というものは簡単そうに見えて実は結構難しいんだ。下手に起こそうとすると意識障害、さらには記憶障害につながる恐れがあるので慎重かつ大胆にやらないといけない。
俺はジェシカに向かって微笑んでやった。こっちのほうが怖いだろうと思って。
「アイシャはジェシカの作り出した幻を見て気絶してしまったんだ。謝ろうか」
「も、申し訳ありませんでした、こん畜生、でございますわ、アイシャ……」
「ジェシカてめえ、こん畜生が余計だっての!」
「いえいえっ。私のほうこそ怖がりで、みなさん心配をおかけしました。もう大丈夫ですっ……!」
こうして俺たちはまた普段通り歩き始めたわけだが、ふとルアンが思い立った様子で口を開いた。
「てか、幽霊よりもアイシャの出すホムンクルスのゴーレムとかのほうがよっぽど怖くね?」
「確かに……」
「同意したくありませんが、ルアンの言う通りですわねえ」
「あの子たちは怖いというより可愛いんですっ!」
アイシャは頬を膨らまして納得がいかない様子。
――ガサガサッ。
「「「「っ!?」」」」
今、風も吹いてないのに近くの茂みが大きく揺れた。あそこに何かいるのか……?
◇◇◇
「「「「……」」」」
【聖なる息吹】ギルドの面々の目元には揃って隈ができており、ろくに眠れていない様子だった。
というのも、彼らは金がなかったがためにフェリオン郊外の墓地で野宿していて、当然熟睡できるはずもなかったのである。
「はあ……眠れねえ。ここが野宿するにはベストだって思ったんだけどよお……」
「ふわあ……まったくもう、最低。いくら泥棒に武器とか服を奪われたくないからって、こんな不気味なところで寝られるわけなかったのよ……!」
「そうですよ……いくらなんでもセンスなさすぎじゃないですかねえ……」
「ただより高いものはないって、まさにこのことだねえ……」
エアル、ケイン、カタリナの白い目はいずれもマスターのクラークに向けられていた。
「しっ、仕方ねえだろうが! おめーらも依頼内容見ただろ? 壊れた家だの武器だの直してほしいとか、そういう俺たちじゃどうしようもねえクソみてえな依頼しかなかったんだからよ!」
「「「……」」」
「な、なんだよおめーら! まだ文句あんのか!? ってか、なんで揃いも揃ってそんな驚いた面してんだよ! あー、そうか、お化けが出たとかで驚かそうとしてんだな!?」
「「「あ、あの茂みに何か……」」」
「はあ? んなもん誰が引っ掛かるかよ――」
馬鹿馬鹿しそうに振り返るクラークだったが、まもなくメンバーの指差していた方向にある茂みが大きく揺れた。
「「「「――ひいっ……!?」」」」
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