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57話 神様
しおりを挟む【擦り抜け】に加えて、【殺意の波動】もあるので、僕は出現するモンスターをほぼ無視して縦横無尽に古城の一階層を跳び回ることができていた。たまに二種類のモンスター――死霊騎士、リザードマン――の塊があって、邪魔だからそれをまとめて片付ける程度だ。
おまけに【鑑定士】はその受動的効果によって見るだけで何かあるか調べられるから、隠し通路を発見するのも時間の問題――だと思ってた時期も僕にはありました。
なんせ、ただでさえ広い上に構造が変わるのが結構早くて、似たような景色ばかりで霧も分厚いもんだから、これは相当運にも左右されちゃいそうだと感じたんだ。
「「「「――な、なんだっ!?」」」」
「……」
それでもなんとか秘密の通路を見つけたくて必死に探し回ってると、冒険者パーティーとすれ違ってなんだなんだと驚いた顔をされることも増えてきた。確かに壁や柱から僕がいきなり出てきたら肝を冷やすかもね……。
うーん、どうしようか。先にダンジョンの攻略を済ませてからにしようかな……そう思い始めたとき、僕は何か違和感を覚えるのがわかった。
あれ……今、自分の中で何かが変化したような感覚が確かにあった。なんだろう? 疲れが溜まってきたのかもしれないと思ったけどそうでもないし……ステータスを調べてみようか。
名前:カイン
レベル:47
年齢:16歳
種族:人間
性別:男
冒険者ランク:S級
能力値:
腕力S+
敏捷B
体力S
器用A
運勢S
知性S+
装備:
ルーズダガー
ヴァリアントメイル
怪力の腕輪
クイーンサークレット
活力の帯
エンシェントロザリオ
スキル:
【削除&復元】B
【ストーンアロー】C
【殺意の波動】B
【偽装】C
【ウィンドブレイド】C
【鑑定士】A
【武闘家】B
【瞬殺】E
【亜人化】E
【難攻不落】E
【進化】F
【擦り抜け】E
テクニック:
《跳躍・大》
《盗み・中》
《裁縫・大》
ダストボックス:
アルウ(亡霊)
ファラン(亡霊)
重圧12
緊張8
鎧の欠片65
盾の欠片39
槍の欠片24
トカゲの尻尾18
トカゲの肉14
斧の欠片11
疲労3
頭痛2
「……」
うーん、レベルが1上がったくらいでどこも特に変わりはないような――って……ステータスを閉じようとしたところで、僕は【鑑定士】スキルがBからAに上がってることにようやく気付いた。
そうか……このスキルには見るだけで敵の弱点や隠し通路を調べられるような受動的効果があるし、【削除&復元】よりもずっと使ってることになるからいち早くAまで上がったってわけだね。
よーし、これで【鑑定士】の熟練度がAになったから【進化】スキルを適用できる。どんな風になるのか楽しみだなあ。というわけで早速使ってみるっ……!
スキル名:
【鬼眼】
効果:
【鑑定士】スキルが【進化】スキルによって大幅に成長したもの。視野が格段に上昇し、全体を遠くまで見通すことが可能。
「――お、おおっ……!?」
そのとき、僕は世界が変わる瞬間をはっきりと実感することができた。前方だけでも普通は見えないところまではっきり見渡せるし、濃厚な霧だってその先が透けて見えるほどだった。
それに、後方とか絶対に見えないはずの場所でも、記憶してるっていうのもあるんだろうけど、なんとなく景色がわかるというかすぐに浮かんでくる上、敵がどこにいるのかも大体読み取れるから物凄く万能感があった。
使用した覚えなんてないから、おそらくクアドラの【調和】みたいに【進化】させた時点でスキルが常に発動状態になるってことなんだろう……って、この状態を維持できてる間に隠し通路を早く探さないと……。
「――うはあっ……な、何これっ……!?」
思わず声が出てしまうほど、僕は爽快な気分を味わっていた。【殺意の波動】+【擦り抜け】+【鬼眼】+《跳躍・大》=神様状態といっても過言じゃないくらい、僕は古城ダンジョンの一階層のほぼ全てを見通しながら大胆に進むことができていたんだ。
それでもまだまだ見えないところはあるし、これの熟練度を上げていったら一体どうなっちゃうんだっていうレベルだ。凄すぎて正直癖になりそう……って、酒も飲んでないのに酔ってきちゃったのでそれを削除する。
「――あっ……」
今、ちょうど周囲の構造が変化したわけなんだけど、そこで壁の一部がぼんやりと輝いてるのがわかった。《跳躍・大》で一気に迫って光っている箇所を押してみると、【擦り抜け】を使ってないのに手がスッと壁の中に入っていった。もう間違いないね。ここが隠し通路だ……。
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