上 下
4 / 32

4.真価

しおりを挟む
「お、終わりましたあ……」

「……」

 司祭様の発言で緊張がさらに高まる。鑑定の儀式が終わったみたいだし、僕のスキルはやっぱり平凡なのか、あるいはそうでないのか、これではっきりわかるってわけだ……。

「わたくしの予想通り、見落としていたみたいです……」

「見落とし……?」

「はい。あなたにスキルを付与した方は、見落としてしまっていたのですよお。セインさんのスキル【スコップ】の真の力を……」

「え、えぇっ……!?」

「神スキルといってもいいくらいの効果でしたよお」

「か、神スキル……」

 ただのゴミスキルだと思ってたものが、まさか神スキルだったなんて……。
 
「それについて、これからセインさんに詳しくお話しますねえ……」

「は、はい……」

 そういうわけで、僕は司祭様にスキルについての説明を受けることに。楽しみだなあ。まさか自分のスキルについてワクワクする瞬間が来るなんて夢にも思わなかった。

「――と、こういうわけなんですよぉ」

「……」

 想像以上の効果だった。驚きのあまり、開いた口が塞がらないとはこのことか。司祭様の説明によると、僕のスキル【スコップ】はができるらしい。

 まず一つ目は、以前からやっていた、念じるだけで地面を普通に掘るというもので、二つ目は同じ要領で埋めることができる、というもの。

 僕ができると思っていたのはここまでで、これから先は未知の領域だ。

 三つ目はランダム掘りといい、色んなものを無作為に掘り出せる効果で、四つ目は関連掘りといって、掘り出したものに関係する様々なものを発掘できるんだそうだ。

 五つ目はクオリティ掘りといって、確率は低くなるけど掘り出した何かの質の高いバージョンを発掘できる。六つ目は封印といい、掘り出したものを無効にすることができ、七つ目は封印解除という名称で、封印させたものを即座に復活させられるんだとか。

 いやー、これは凄い。まさに神スキルじゃないか……。

「じゃあ、早速ランダム掘りを――」

「――ダメです……」

「えっ……?」

「セインさんは生き埋めにされちゃったんですよぉ? スキルは精神力を消耗しますし、今日くらいはゆっくりとお休みして、明日からにするべきです……」

「な、なるほど……」

 確かにそうだよね。司祭様の言う通り今日はゆっくり休んで、【スコップ】スキルを試すのは明日からにしようか……。



「――う、うーん……」

 それから僕は風呂に入ったあと、司祭様にキノコご飯をご馳走してもらってから床に就いたわけなんだけど、彼女と同じベッドで寝るってことで興奮しまくったせいかすぐに目覚めてしまった。そりゃ美人だし胸も大きいしで、僕も一応男だからね……。

「ふわあ……」

 ろくに眠った感じがしない上、窓から見える外はまだ薄暗いけど、早くスキルを使ってみたいしもう起きちゃおうかな。体はあっちこっち痛むものの、司祭様が看病してくれたおかげかもう普通に動けるし。

 あと少しだけ寝てからにしようかとも思ったけど、もういいや。早速試してやろう。

「くうぅ、くうぅ……」

「……」

 気持ちよさそうに寝ている司祭様を起こさないよう、僕はそっと小屋の外へ出る。大きいものとか掘り出した場合、小屋の中だと迷惑になるだろうし。

「すー、はー……」

 いざ【スコップ】スキルを使おうとすると緊張してきたので、深呼吸してリラックスする。よーし、そろそろ始めるとしようか。逆転人生への第一歩だ……。

 ちなみに、何かを掘り当てるのに特別なことをする必要はないみたいで、とにかくなんでもいいので掘り出したいと念じてみることに。多種多様のものを偶然に任せて発掘できるというランダム掘りってやつだ。

「……」

 あれ、中々出てこないな。やり方が間違ってたんだろうか? それとも、司祭様に嘘をつかれちゃったとか……。で、でもそんな出鱈目を言うような人には見えなかったし、その必要も――

「――あっ……」

 そこで僕ははっとなる。もし司祭様が少年愛好家とかだったら……。い、いや、助けてもらっておいてそんなことは考えたくない。きっと試行回数が足りないんだ。そう思って掘っていくと、まもなく足元にヤカンが出現した。傷跡や凹みが目立つ古いヤカンだ。

「お、おおおっ……」

 本当に掘り出せたので、こんなものでも僕は頬ずりしてしまうほど感動していた。よし、次に試すのは関連掘りだ。ヤカンを足元に置き、これに関連するものを掘ることにする。さあ、出てこい……!



「――はあ……」

 いくらやっても何も出てこないこともあって、溜め息が代わりに僕の口から出てきた。

 うーん、かなり頑張ったんだけどなあ。多分、百回は掘ったと思うんだけど、疲れるだけでそれ以外の変化は訪れなかった。

 関連掘りに関しては、低確率とは聞いてないんだけどね。なんでだろう……。まさか、これくらいの確率でも普通とか、あるいはこのヤカンは最初から足元にあったもので、僕が気付かなかっただけとか……。

 いや、それだけはないと思いたい。とにかく疲れたし、二度寝しようかな。このヤカンも、あとで関連掘りするために小屋の中に持っていこう……って、あれ? めっちゃ重い……。

「……」

 妙だ。最初に頬ずりしたときより明らかに重くなってる。まさかと思って傾けてみると、水らしき液体が勢いよく出てきた。

 ということは、僕は知らずに水を掘り出していて、ヤカンの中にたっぷりと溜まっていたのか……。休もうかと思ったけど、成功してたってことで嬉しくて眠気が覚めてきた。

 これは、確実に流れが来てるね。水を発掘しただけに……。

 さらに頭も冴えてきたのか、僕はあることを思いついて小屋の中に走ると、コップを取り出してヤカンの水を入れてやった。これに関連掘りをすれば、可能性がグッと広がっていくんじゃないかって思ったんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夜霧の騎士と聖なる銀月

羽鳥くらら
ファンタジー
伝説上の生命体・妖精人(エルフ)の特徴と同じ銀髪銀眼の青年キリエは、教会で育った孤児だったが、ひょんなことから次期国王候補の1人だったと判明した。孤児として育ってきたからこそ貧しい民の苦しみを知っているキリエは、もっと皆に優しい王国を目指すために次期国王選抜の場を活用すべく、夜霧の騎士・リアム=サリバンに連れられて王都へ向かうのだが──。 ※多少の戦闘描写・残酷な表現を含みます ※小説家になろう・カクヨム・ノベルアップ+・エブリスタでも掲載しています

道具屋のおっさんが勇者パーティーにリンチされた結果、一日を繰り返すようになった件。

名無し
ファンタジー
道具屋の店主モルネトは、ある日訪れてきた勇者パーティーから一方的に因縁をつけられた挙句、理不尽なリンチを受ける。さらに道具屋を燃やされ、何もかも失ったモルネトだったが、神様から同じ一日を無限に繰り返すカードを授かったことで開き直り、善人から悪人へと変貌を遂げる。最早怖い者知らずとなったモルネトは、どうしようもない人生を最高にハッピーなものに変えていく。綺麗事一切なしの底辺道具屋成り上がり物語。

ハクスラ異世界に転生したから、ひたすらレベル上げしながらマジックアイテムを掘りまくって、飽きたら拾ったマジックアイテムで色々と遊んでみる物語

ヒィッツカラルド
ファンタジー
ハクスラ異世界✕ソロ冒険✕ハーレム禁止✕変態パラダイス✕脱線大暴走ストーリー=166万文字完結÷微妙に癖になる。 変態が、変態のために、変態が送る、変態的な少年のハチャメチャ変態冒険記。 ハクスラとはハックアンドスラッシュの略語である。敵と戦い、どんどんレベルアップを果たし、更に強い敵と戦いながら、より良いマジックアイテムを発掘するゲームのことを指す。 タイトルのままの世界で奮闘しながらも冒険を楽しむ少年のストーリーです。(タイトルに一部偽りアリ)

俺は不調でパーティを追放されたがそれは美しい戯神様の仕業!?救いを求めて自称美少女な遊神様と大陸中を旅したら実は全て神界で配信されていた件

蒼井星空
ファンタジー
神の世界で高位神たちは配信企画で盛り上がっています。そんな中でとある企画が動き出しました。 戯神が尻もちをついたら不運な人間に影響を与えて不調にしてしまい、それを心配した遊神が降臨してその人間と一緒に戯神のところへ向かうべく世界を巡る旅をする、という企画です。 しかし、不運な魔法剣士であるアナトは満足に動けなくなり司令塔を務めるパーティーから強引に追放されてしまいます。 それでもアナトは遊神との旅の中で、遊神に振り回されたり、罠にはまったり、逆に遊神を文字通り振り回したり、たまにちょっとエッチなことをしたりして、配信の視聴者である神々を爆笑の渦に巻き込みます。 一方でアナトを追放したパーティーは上手くダンジョン探索ができなくなり、様々な不幸に見舞われてしまい、ついにはギルドから追放され、破滅してしまいます。 これは、不運な魔法剣士アナトが神界を目指す旅の中で成長し、配信されたご褒美の投げアイテムによって最強になり、自称美少女女神の遊神やとても美しい戯神たちとラブコメを繰り広げてしまう物語です。 ※なおアナトは配信されていることを知りませんので、ご注意ください。

パーティー追放された者同士で組んだら、全員魔剣士だったけど割と万能で強かった件

微炭酸
ファンタジー
勇者見習い職とされる“冒険者”をしていたハルトは、ある日突然パーティーを追放されてしまう。 そして同じくパーティーを追放されたマナツ、モミジ、ユキオの3人とパーティーを組む。 しかし、4人の職業は全員“魔剣士”であった。 前衛も後衛も中途半端で決して良い待遇を受けない魔剣士だけのパーティー。 皆からは笑われ、バカにされるが、いざ魔物と闘ってみるとパーティーボーナスによって前衛も後衛も規格外の強さになってしまい―― 偏った魔剣士パで成り上がりを目指す冒険ファンタジー! ※カクヨム様・なろう様でも投稿させていただいています。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

【完結】家庭菜園士の強野菜無双!俺の野菜は激強い、魔王も勇者もチート野菜で一捻り!

鏑木 うりこ
ファンタジー
 幸田と向田はトラックにドン☆されて異世界転生した。 勇者チートハーレムモノのラノベが好きな幸田は勇者に、まったりスローライフモノのラノベが好きな向田には……「家庭菜園士」が女神様より授けられた! 「家庭菜園だけかよーー!」  元向田、現タトは叫ぶがまあ念願のスローライフは叶いそうである?  大変!第2回次世代ファンタジーカップのタグをつけたはずなのに、ついてないぞ……。あまりに衝撃すぎて倒れた……(;´Д`)もうだめだー

ノーアビリティと宣告されたけど、実は一番大事なものを 盗める能力【盗聖】だったので無双する

名無し
ファンタジー
 16歳になったら教会で良いアビリティを貰い、幼馴染たちと一緒にダンジョンを攻略する。それが子供の頃からウォールが見ていた夢だった。  だが、彼が運命の日に教会で受け取ったのはノーアビリティという現実と不名誉。幼馴染たちにも見限られたウォールは、いっそ盗賊の弟子にでもなってやろうと盗賊の隠れ家として噂されている山奥の宿舎に向かった。  そこでウォールが出会ったのは、かつて自分と同じようにノーアビリティを宣告されたものの、後になって強力なアビリティを得た者たちだった。ウォールは彼らの助力も得て、やがて最高クラスのアビリティを手にすることになる。

処理中です...