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第十一話 怖がり

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 所持思念2:【鋼鉄の意思】
 追体験:物理ダメージの連続
 効果:心身の消耗&俊敏さを代償に物理耐性100%上昇

「…………」

 残留思念の追体験が終わり次第、俺は天への祈りによって、今回収集した新しい思念の効果を確認する。

 その名の通り、物理耐性が格段に上がるものだった。副作用としてスピードが遅くなるとのことだが、これも場合によっては凄く使えそうな思念だと感じる。

「テッドよ、大丈夫か?」

「うっ……」

 アントンに心配そうに顔を覗き込まれたが、なんせいきなり目の前に髑髏が現れたもんだから心臓に悪かった。

「失礼じゃのー。テッドは一見なんともなさそうに見えて、内心はかなり苦しそうじゃったから、わしは心配したんじゃぞ? これが魂集めとやらのスキルの代償か。壮絶じゃのお……」

「やっぱりアントンには隠し事できないな……」

 普通の人間には、これが楽をしてるように見られてしまうんだからな。どうやら俺とアントンとの相性は抜群に良いらしい。

「ふぉっふぉっふぉ。褒めてもわしからは何も出らんぞい」

「強いて言えば骨くらいかな?」

「骨もやらんぞ!」

「ははっ……そういえば、アントン、ここにモヒカンの髪型をした囚人ってまだいる?」

「そ、それはまさか……」

「え?」

 急にアントンが震え始めた。

のことか……」

「あのお方……?」

 そこで急に周囲からどよめきが上がるとともに、俺がいるこの中央の席に向かって誰かが悠然と歩いてくるのがわかった。

 あれは……追体験でも見た例のモヒカン頭だ。

「「「「「ジャック様……!」」」」」

 あいつの名前はジャックっていうのか。現在もなお夢中で食べ続けるワニ頭を除き、囚人たちが揃って頭を下げる中、モヒカン頭が不敵な笑みを浮かべながら近づいてくる。

「テ、テッドよ、早くここから離れるんじゃ。確か、怪力じゃったかな、パワー系のスキルを持つあのお方はとにかく攻撃的で、このFエリアで今一番恐れられている囚人なんじゃよ。わしもつい最近、なんにもしとらんのに『不気味なんだよ骨野郎』と難癖をつけられ、一瞬でバラバラにされたんじゃ……」

「それは災難だったな、アントン。でも、やつの特徴については俺もわかってるから大丈夫だ」

「テ、テッド……?」

 追体験であのジャックという男の攻撃性は嫌というほど味わったしな。なるほど、怪力か。道理で椅子を軽々と片手で持ち上げられたわけだ。

「おいコラッ、見ない顔だが、そこが誰の席かわかってんのか? 俺の席だぞ、あぁっ!?」

「…………」

 ジャックが触れるほど顔を近付けてきたかと思うと、鬼の形相で凄んできた。わかりやすいやつだ。

「おい、なんとか言えってんだよ! それともビビッてんのか? あぁっ!?」

「グランにビビッていた男の台詞とは思えないな」

「な、何ぃ……!?」

 俺の台詞に対して、殴られたような顔をするモヒカン頭のジャック。あの体験はこの男にとってもトラウマになってそうだな。

「て、てめえ、俺を知ってるっていうのか……? おい、一体何者だってんだよ!?」

「俺は……グランの関係者だ」

「あっ……! そ、そうか……。あの男は親友に裏切られた間抜け野郎だって噂を聞いたことがあるが、今頃来やがったのか。しかもこんなガキだったとは……」

 何を思ったのか、ジャックがニタリと嫌らしい笑みを浮かべた。

「へっ……遅かったな、やつは俺が無惨に殺してやった。俺の踏み台として、ボコボコにしてやったよ。死ぬ間際に泣きながら命乞いをしてきやがったが、この手で無慈悲にとどめを刺してやったぜ……」

「…………」

 俺が追体験で見た光景とは随分かけ離れてるな。

「おい、ビビったか!? あ!? クソガキはとっとと消えろ! 俺はお前の薄汚ねえ面を拝みに来たんじゃねえんだよ!」

「飯の前に喧嘩はしなくていいのか?」

「あ……? 誰とやんだよ。まさかお前みたいなガキとか? 笑わせんな。ま、ちょうどあと一回勝ちゃあ三回勝利だからこのFエリアから出られるけどよ、看守もいないんじゃお前をぶちのめしても勝った回数はカウントされねえしなあ……」

「そうか。じゃあお前にその機会を与えてやる。アントン、看守を呼びに行ってくれ」

「わ、わしが……?」

「ああ。頼む」

「か、かしこまりなのじゃっ!」

「……て、てんめえ……ガキが……【腕力50%向上】のスキルを持つこの俺に勝てるとでも思ってんのか……?」

 この男、よっぽど俺をビビらせたいのか、自ら所持スキルを打ち明けてしまった。

 アントンが立ち去り、ジャックの顔色がどんどん赤くなって額に青筋まで浮かぶのがわかる。だが、怒りは恐れの裏返しでもある。それが見え見えなんだから本当にわかりやすいやつだ……。
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