上 下
51 / 62

五一話

しおりを挟む

「「「「ユートッ……!?」」」」

「あ……」

 俺が『ワープ』で『アバター』のいる地点に戻った瞬間、血相を変えたファグたちの面々が見えた。どうやらずっと呼びかけていたらしい。

「よ、よかった。ユートが目覚めた。どうなることかと思ったぜ……」

「ホント、よかったぁ。ユートの肩を揺さぶっても全然起きないんだもん……」

「ユ、ユートよ、わしが耳元で叫んでも反応がないから、てっきり死んじまったのかと思ったぞい!」

「ユート、生きてたのね。死んだように眠ってたから、心臓に悪いわ……」

「ど、どうしたんだ、みんな? そんなに慌てて……」

「それが、慌てるのも当然なくらい、後ろからが来てやがるんだ!」

「とんもでないやつ……?」

 また恐ろしいモンスターでも現れたのかと思って、俺は急いで後方を確認したわけだが、そこには追いかけてくるもう一台の馬車があった。

 なんだありゃ、盗賊かなんかか……?

 ただ、それにしてはやたらと装飾が豊かだし、自分たちの馬車と比べると一回りもサイズが大きい。

「ヒャッハー!」

「「「「「っ!?」」」」」

 威勢のいい声が聞こえてきたと思ったら、後ろの馬車の窓から髭面の男が身を乗り出してきた。やたらと恰幅のいいやつで、トルネ〇みたいな感じだ。

「おい、冒険者ギルドの雑魚ども、耳の穴かっぽじってよく聞けっ! その馬車もろとも私に木っ端微塵にされたくなければ、さっさと馬車を停めて女と持ち物を全部置いていけっ!」

「…………」

 こいつ、見た目の割りにとんでもないことを要求するもんだな。

 それにしても、冒険者ギルドの雑魚だって? 俺たちは一応S級冒険者なんだけどな……。

「あ、あいつは、商人ギルドのやつだ。ユート、気をつけろ……」

「商人ギルド? ファグ、それって冒険者ギルドより強いのか?」

「もちろんだ。ユートはこの世界の人間じゃないしわからねえと思うが、商人ギルドの連中は冒険者ギルドよりも遥かにつええやつが多い」

「うん。ユート、リーダーの言う通りだよ。商人ギルドって、ほとんど石板持ちらしいしね」

「なるほど……」

 ミアの説明もあって、なんとなく事情が読めてきた感じだ。

 石板持ちってことは、異次元通販で良い物を購入できるだけの財力があるわけで、金で強いスキルを買ったやつがそれだけ多いってことか。異世界の沙汰も金次第なんだな。

「うむ。ユートよ、この世で強いのは、モンスター、人外種族、王族、貴族、商人、冒険者、一般人の順番だといわれておるのじゃよ」

「へえ……」

 そういや、キーンの言葉で思い出した。確かに王族のプリンと貴族のホルンのステータスは滅法強そうだったしなあ。

「結局あたしたちなんて、下から数えたほうが早いくらいなのよね。だからこそ、違う世界から来たユートが希望の星なの……」

「そ、そっか……」

 リズが俺のすぐ近くに立って胸を当ててくるんだが、これってわざとなのか、それともただの偶然なのか……。

「あー、リズったら、抜け駆けする気!?」

「ん、ミア、なんのことかしら?」

「しらばくれちゃって! こうなったら僕もっ……!」

「…………」

 おいおい、今度はミアが俺に胸を押し当ててきた。リズに比べると小振りだが……って、俺は何言ってるんだか。

「じゃあ、わしもっ!」

「ちょっ……!」

 キーンに抱き付かれてしまった。これじゃ身動きが取れないんだが。

「おーい、俺のユートに手出すなよ!」

「…………」

 ファグまで……。

「おいこらっ! 雑魚ども、聞いてるのか!? これ以上私の言うことを無視するなら、本気で潰すぞ! いいのか!?」

「「「「「……」」」」」

 っと、そういや騒がしい先客がいたな。とっとと片付けてやるか。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...