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四七話
しおりを挟むあのあと、俺たちは焦土化した道を馬車でしばらく走ることになった。
ファグによると、この惨状を生み出したデストロイはバード族の中では中位の少し上のほうだってことで、改めてこの世界のモンスターがどれだけヤバいかがよくわかる……。
こうなったら、ニンジンを二本食べるとスーパーサイ〇人化するラビを連れて行こうか、なんてことも考えたが、暴走されても困るのでこのままでいくことに。
俺自身、絶影剣の強化によって物理でも無双できるようになったわけで、ある程度刺激があったほうがいい。
「――あっ……」
どうやら学校にいる分身のほうに何か変化が生じたらしい。
「「「「ユート?」」」」
みんなの視線が俺に突き刺さる。またどこか行きやしないかって心配するような顔だ。
そうだな、ここにも俺の分身を一つ置いていくか。
「物凄く眠いから、ひと眠りするよ。何か異変があったら起こしてくれ」
「「「「了解っ!」」」」
ファグたちがホッとした様子で返事するのを尻目に、俺は【隠蔽】スキルと『アバター』の魔法を使用して『コントロール』で眠らせ、即座に『ワープ』で学校へと飛んだ。
「…………」
2年1組の教室に戻ると、なんともいえない懐かしさに包まれる。ここを離れてそんなに経ってないはずなんだが、それだけ異世界の衝撃が大きかったってことだろう。どよめきが上がってるから、天の声がした直後のようだ。
『その残念なお知らせというのは、学校内で通り魔をしている方がいるということです……』
おいおい、通り魔だって? さては獲得したスキルかあるいは武器か、それとも仲間の力を試そうってわけか。
いずれにせよ、下手をすれば逆に命を狙われる立場になるわけで、かなりリスクのある行為に思えるが、まだ捕まってないんだろうし相当な手練れか。
『オークデビルの魔の手が迫っていて、学校が混乱している最中を狙っているということで、これは決して許せる行為ではありません……』
確かに、やり方があまりにも外道すぎるな。通り魔の中でも畜生度は高ランクだろう。
『これ以上、救世主候補の皆さまに被害が出ないように気を付けてもらいたいというのと、通り魔を見つけたら是非捕まえてほしいです。それでは……ハ……ハックションッ……し、失礼いたしましたっ!』
「…………」
頭に血が上るとくしゃみが出るって聞いたことあるし、天の声の人、相当怒ってるみたいだ。ほんわかとした声色だからわかりづらいが。
そういえば、今回の犯人は通り魔だし、あいつらがやった可能性もあるな。というわけで、俺は虎野たちの会話を盗み聞きすることに。
「ふむ。こんなときに通り魔だと? オークデビルが来る前に力を使い果たすとは、愚かな」
「ボスウ、俺もそう思ってたぜ。雑魚は雑魚同士で勝手に殺り合ってろってんだ!」
「本当よね。混乱を利用した通り魔って、陰キャの如月君がいかにも考えそうなセコいやり方。虎君みたいに堂々と殺せばいいのに」
「確かに、浅井さんの言う通りだぜ……。ただ、クソ優斗が通り魔なんかしたら、逆にぶっ殺されそうだけどよ……」
「それどころか、弱すぎて子供が駄々をこねるレベルで、通り魔判定すらされないでしょう! アヒャッ!」
「「「「「どっ……!」」」」」
「…………」
不良グループがいちいち俺の名前を出すのも困ったもんだな。やれやれ。よっぽどお仕置きされたいらしい。
『レイン』の魔法はもう飽きたし、『タライ』を何度もやるのは不自然ってことで、別のやり方を試すことに。そうだなー……よし、アレでいこう。ってなわけですぐに新たな魔法を作成し、虎野たちに使用する。
「「「「「ぶっ……!?」」」」」
連中の頭上にこれでもかと塵が降り注ぐ。その名も『ダスト』。汚れるし咳き込むしで酷い有様なもんだから失笑が上がってる。塵が舞うくらいなら『タライ』よりも自然だしな。
「「「「「げほっ、げほぉっ……!」」」」」
俺はやつらの無様な姿をたっぷりと堪能したあと、自分の笑い声を『サイレント』で掻き消しつつ、通り魔を退治するために教室を出た。
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