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四五話
しおりを挟む遥か遠くにあるというエルの都を目指し、俺たちは最初の村を発つことになった。
ちなみに次の村までは、休憩等を入れたとして四日くらいは必要なんだとか。そういった名も無き村を幾つも越えて、ようやく目的地の都へ到達できるのだという。
なんか、こうなると学校が懐かしく感じるな。オークデビルたちが攻めてくるまで時間があるからまだ戻るつもりはないが。
「ユート、なんでもこの世界にはよ、村を除いても全部で千の都があるらしいぜ」
ファグが馬車を操作しながら意気揚々と語り始める。へえ、都が1000もあるのか。果てしなく広大な世界なんだな。
「リーダー、またその話ー? もう聞き飽きちゃったよ」
「うむ。ミアの言う通り、欠伸が出そうじゃ」
「ホントね。耳にタコができちゃうわ」
「お、おいおい! そりゃ、お前たちはそうだろうけど、ユートにしてみたら初めてなんだからよー。なあ、ユートもそう思うだろ?」
「あ、うん……」
それからも、俺は延々とファグの冒険に対する熱い思いを聞かされる羽目に。話の途中、何度も自分の欠伸を『サイレント』で封印したほどだ。
「な、すげーだろ? しかもこの世界はなあ――」
「…………」
ファグの話、まだ終わらないのか。なるほど、ミアたちが飽きるのもわかる。
彼の話で理解できたのは、この世界ではたった一つの都に辿り着くことでさえも困難だってこと。
実際、S級冒険者のファグたちですら、その1000の内の一つの都にさえ行ったことがないっていうんだからな。
それに関しては、虐殺級やら災害級やら、とんでもないモンスターがいきなり登場してくることからもよくわかる。
例えるなら、最初の村付近でスライムじゃなくていきなりドラゴンと遭遇するようなもんだろう――
「――ジジジッ……」
「「「「「……」」」」」
なんだ? 今の、虫の鳴き声みたいなのは。
そう思ったら、俺たちの目の前に火花を纏う黒鳥が現れ、その頭上に詠唱ゲージが出た。
な、なんだこいつ、モンスターか?
「あーあ、もう終わりかよ……」
「え?」
ファグだけじゃなかった。ミア、キーン、リズも同様に、全てをあきらめたような、そんな空虚な顔つきになった。
「ぐすっ……残念だけど、みんなと夢を見られたから……僕、楽しかったよ……」
「そうじゃな……。みんな、来世で会おうぞ!」
「生まれ変わっても、このメンバーで冒険したいわね……」
「…………」
おいおい、なんだよこの湿っぽい空気は。俺が言いたくないことだが、まるで葬式みたいなムードだ。
もしかして、このモンスターがヤバイ魔法を唱えてくるのかと思ったが、ゲージを見れば発動までまだかなりの時間があるし、逃げようと思えば逃げられるはず。
なのにこの絶望的な雰囲気はなんなんだってことで、俺は【慧眼】でモンスターのステータスを確認することに。
__________________________
名前 デストロイ
種族 バード族
HP 9999/9999
MP 9999/9999
攻撃力 3500
防御力 5220
命中力 7700
魔法力 5900
所持能力
『魔法無効化』
『物理無効化』
『自爆』
ランク 大災害級
__________________________
な、なんじゃこりゃ……。魔法も物理も効かないって無敵かよ。特に『自爆』っていうのが気になって、調べてみると半径1キロ以内を焦土化するとあった。おいおい、おいおい……!
さらに、やつの詠唱はもうそろそろ終わりつつあった。このままだと全員死ぬかもしれない。俺は『ワープ』で逃げられるし、ここにいてもステータスが高いから生き残るかもしれないが、さすがに仲間を見捨てるのは……ってそうだ。
俺は思い立って、馬車ごと【ダストボックス】に収納してみることに。
よし、収納できる枠内だったのか全部いけた。これでやつは勝手に自滅するだけになるってわけだ……。
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