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三三話

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「フフッ、さあ、たっぷりと楽しもうじゃないか、うぶな子猫ちゃん。僕が夢の楽園へ連れていってあげるよ……」

「……ひっく、ぐすっ……」

 すすり泣く少女の制服を、今まさに偽仮面が脱がそうとしたとき、俺は【隠蔽】スキルを解除してみせた。

「そこまでだ」

「「「「「だ、誰っ!?」」」」」

「んー……?」

 女子たちには警戒されたが、偽仮面は自信を取り戻したらしく、悠然と俺のほうに振り返ってきた。

「なんだ、また偽物が性懲りもなく現れたのかね。死にたくなければとっとと立ち去るがいい」

「そうよ、消えなさいよ、偽物!」

「ここからいなくなれ、ブサイク!」

「さっさと失せろってんだよ、雑魚っ!」

「…………」

 これでもかと煽ってくるが、まったく気にならない。ここで問題なのは、俺が暴れることで襲われていた少女も被害を受ける可能性があるってことだ。

「いなくなるのは、こんな非道なことをしてるお前らのほうだよ。俺が本物なんだからな。さあ、そこの人、こっちへ」

「……え、えっと……」

 少女は驚いた表情で、しばらく俺と偽仮面のほうを交互に見ていた。

「そんなやつの言うことを信じるな! 僕こそが本物だ!」

「た……助けてください!」

 彼女は少し迷った様子だったものの、まもなく俺のほうへ駆け寄ってきた。

「ぐぐっ……。偽物を選ぶとは、覚悟はできているのだろうな? 食らえええぇっ!」

「きゃああぁぁっ――!」

「――大丈夫。こんなのまやかしだ」

 悲鳴を上げる少女を抱きしめつつ俺はそう呟く。

「えっ……?」

 炎の中、少女は不思議そうに瞳をまたたかせる。

「あ、熱くない……?」

「な、言った通りだろ?」

「は、はい……!」

「こ、こいつら、僕の魔法を受けているのに逃げないなんてどうかしている! 早く逃げろ! ほら、死ぬぞ!? 死んでもいいのかねっ!?」

「残念ながら、もうバレてるんだよ。お前もこの魔法も全部偽物だってな」

「うっ……! バ、バカを言うな! それは、わざと手加減したのだ! ぼ、僕は優しい男だから――」

「――それじゃあ今すぐ本気を出してくれよ。できないんだろ。そうだ、俺がお手本を見せてやろうか?」

「えっ……」

 俺はやつらの前で『ヘルファイヤ』の魔法を発動し、10000度の熱を凝縮させた炎の槍を宙に浮かべてやる。

「さあ、俺のほうが偽物だと思うならこれに触れてみろ。できるだろ?」

「ぐっ……こ、こんなの偽物だっ、偽物に決まっているううううぅっ。ぎっ!?」

 偽仮面はそれを握ろうとして、またたく間に右手を蒸発させてしまった。バカか、こいつ……。

「うっぎゃあああああぁぁっ! 僕の右手がっ、右手がああああああぁぁっ!」

 やつは小便を垂れ流し、泡を吹きながら気絶してしまった。とりあえず『エリクシルヒール』を使って起こしてやる。

「うっ……? な、なんだ、夢か……はっ!?」

 全回復したためか、偽仮面は悪夢でも見ていたと思ったようだが、欠けた右手に視線を送るなり見る見る青ざめていった。欠損が治るようにはまだ作ってないし、この状況だとむしろ都合がよかった。

「偽仮面よ、お前は嫌がる少女たちを無理矢理犯してきたそうだな?」

「し……ししっ、してないです! 嫌がる子を犯そうとしたのは、さっきの子が初めてです。信じてください!」

 土下座してみせる偽仮面。本当かな? 一応『コンフェッション』という、自白させる魔法を作ってこいつに使用することに。

「ところで、お前はこの子を犯したらどうするつもりだった?」

「あ、はい。それが終わったら、いつものように取り巻きの女たちに命令し、窓から谷底に落として始末するつもりでした。これ以上、僕の悪い噂が広まったら困るので。最初に犯した女も、殺しておけばよかったと心底悔やんでるくらいです……」

「…………」

 偽仮面は、自分が何を言っているか信じられないといった顔で全ての悪事を白状した。これでこいつらの運命は決まったな……。
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