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ふたりの約束

41.最後の逢瀬(5)※

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「ぁあんっ! あ、あっ!」

 後ろから抱き締められるような姿勢で突き上げられながら、乳頭も刺激される。指の先でかりかりと掻かれて、サフィアは咄嗟に腰を引いてしまい、より結合が深くなった。

「はうっ! ん、んぁあっ……!」

 二点を責められ、サフィアの手足ががくがくと震える。特に胸を愛撫されるのは久しぶりだからか、より体の奥まで響いた。

「ぁ、ぁぁあっ……」

 サフィアの腕は自分の身体を支えきれなくなり、上体をシーツに沈ませた。アーサーの手はサフィアの胸から離れず、ベッドと挟まれながらもその指は止まらない。弾くようになぶり、それに反応して締まる中を陰茎が擦り上げる。次第に脚も力が入らなくなり、ずるずると開くようにして腰を落としていった。そしてシーツと下腹部が接触しそうなところで、アーサーのもう片方の手が滑り込む。そしてベッドとサフィアの恥骨に挟まれたその手は、サフィアの最も敏感な豆粒大の神経の塊を二本の指で挟みこんだ。

「きゃうっ! あう、はあ、あ、あん、ぅううううっ!」

 こりこりとなぶられ、サフィアの腰がかくかくと上下した。胸と秘核と中の三点を責められて、サフィアの身体が快楽を逃がそうと反射的に動いてしまうのだ。いつの間にかアーサーの腰は止まっていて、サフィアが自分で動いている状態になっていた。アーサーにかりかりと先端を掻かれる乳頭も、二本の指の間で擦り潰される秘核も、それだけで死んでしまいそうなくらいに気持ち良い。ずっと快楽の絶頂から下りられないでいる。なのに無意識のうちに腰を動かして膣壁とアーサーの陰茎を摩擦させ、さらに自分を追い込んでいた。

「ああ、サフィア……っ」

 アーサーは熱くとろけた声色でサフィアの名を呟き、そのうなじに顔を埋めた。サフィアを愛撫する手はそのままに、高く整った鼻で桃色の髪をかき分け、首の後ろに吸い付く。興奮からアーサーの先端からは先走りが次々と分泌され、サフィアの中で愛液と混ざり合っていた。

「すまない……辛いかもしれないが、こんなに乱れる君の姿を見たら、我慢できない……っ」

 サフィアは後ろから聞こえるアーサーの言葉に、下腹部を熱くさせた。それだけアーサーが自分で興奮しているというのが、素直に嬉しかったのだ。
 アーサーは後ろからサフィアを抱き締めると、腰を動かし始めた。サフィアの奥にある、今回の性交ですっかり熟した子宮口をノックされる。その度にお腹が溶けそうなほどの熱が弾けて、サフィアは呼吸をするのも大変なくらいだった。全身が熱くて、ひ、ひ、と浅い呼吸しかできなくて、苦しい。首筋にはアーサーの荒く熱い息がかかり、身を捩ろうとしても身体に巻き付くがっしりとした腕に拘束されていて、それもできなかった。まるで大型の獣に襲われる小動物のようだと気付き、サフィアの背筋にぞくぞくとしたものが駆け上がる。

「ふ、うぅうう、ううううううーっ!」

 人の身でありながら獣のように性に浸っているからなのか、アーサーの奥底にある本性を垣間見た気になったのか。最早どうしてかは分からないが、サフィアはもう何度目なのか分からない絶頂へと押し上げられた。

「っ……だ、すぞ……!」

 アーサーも歯を食い縛り、ぎゅうっと吸い付いてくるサフィアの中に射精した。
 どくどくと自分の中で震えるアーサーを、サフィアは瞼を閉じて感じていた。身体の疲労感はとてつもなかったが、その心は晴れ晴れとしていた。最後にアーサーの全てを受け止められた気がして、もう、サフィアに悔いはなかった。

「んっ……」

 ずる、とアーサーが抜けていき、その後を追うように白濁が流れていく。見ていなくても感覚でそれが分かり、サフィアは慌てて脚を閉じた。

「サフィア、拭かないと」

 アーサーに脚を開かれそうになり、サフィアはふらつきながらもベッドの上に座った。

「じ、自分でやるわ。大丈夫……」
「そうか? じゃあ……薬を取ってくる」
「お願い」

 男性用の避妊薬は性交をする一時間前には飲んでいないといけないのだが、当然二人はしようと示し合わせていなかったので、飲んでいないのだろう。そうなれば、事後に飲んでも効果がある女性側が飲むしかないし、それがこの世界でのスタンダードな避妊法だった。
 アーサーから布を受け取って、サフィアは自分の中から溢れてくるものを拭き取っていく。そうしているとアーサーが薬と濡れた布を持ってきてくれたので、薬を飲んでから身体を拭いた。アーサーも自分を拭いていて、背中はお互いに拭き合った。
 サフィアはアーサーの背中を拭き終わると、寄りかかって頬をくっつけた。

「どうした?」
「ううん……なんとなく」
「俺はこっちの方が良い」

 アーサーが振り返って、サフィアを抱き締めた。サフィアが抱き締め返すと、頭を撫でられる。

「……すまなかった。ちゃんと優しくしようと思っていたんだが……我慢できなくて」
「謝らないで。別に痛くもないし、嫌ってわけじゃなかったから」

 むしろ、たまにならああいうのもいいのかもしれない……と思ったところで、自分たちに次はないのを思い出した。

「むしろ、嬉しかったっていうか……優しいアーサーも好きだけど、わたしだって、アーサーを我慢させたいわけじゃないし……。だから、謝らないで?」
「ありがとう。その…………すごく、よかった」
「ふふ」

 サフィアは笑って、アーサーの胸に額をつけた。恥ずかしくて、そのまま「わたしもよ」と小さく答える。途端、両頬を大きな手のひらに包まれて顔を上に向けさせられ、口付けが降ってきた。
 互いの存在を確かめ合うように、別れを惜しむように、二人は何度も唇を触れ合わせていた。
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