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竜神教会
6.一緒にご飯(1)
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今日は馬上訓練の日だったので、サフィアは朝食を終えると馬小屋に向かった。
闇竜討伐の旅は馬で移動するので、馬を操る技術はもちろんのこと、馬で走っているときに魔物の襲撃を受けた時のために馬上でも戦闘ができるようになる必要があるのだ。
馬小屋では既に兵士が何人か集まっていた。アーサーの姿もあって、ベテラン兵と馬を見ているようだ。
「おはようございます」
「おはようございます、聖女様」
「おはよう」
挨拶すると、ベテラン兵とアーサーが振り返った。武器を選んだ日から、なんとなくアーサーの雰囲気がやわらかくなった気がしてサフィアの頬が緩む。
「何してるの?」
「馬を選んでいるんだ。俺は乗ったことがなくて」
「そうなの。初めは慣れないかもしれないけれど、頑張ってね」
「ああ」
「じゃあ、勇者様をよろしくお願いします」
「ええ、お任せくださいませ」
邪魔してはいけないと、サフィアは自分の愛馬の元へと行った。
準備をしながらアーサーの様子を窺うと、動物に慣れているのか怖がっている様子はまったくなく触れ合っていたので、たぶんすぐに慣れるだろう。
教会内の訓練場は馬上訓練には狭いので、大教会がある街から少し離れたところにある草原で行う。
兵士のみんなと街の外に向かって馬を歩かせていると、民衆たちが邪魔にならない程度に集まってくる。
「聖女様だ!」
「あの人、初めて見るわ。勇者様?」
「そうじゃない? 服も教会兵のみなさんと違うし」
「紋章見えるかな?」
「勇者様ー!」
サフィアは手を振る民衆たちに手を振り返していたが、ベテラン兵の馬に同乗しているアーサーは無反応だった。サフィアたちはアーサーが無愛想な人物であることを知っているが、そうでない街の人々は少し戸惑っている様子だった。それでもこれは凱旋でも何でもないただの移動なので、サフィアたちはいつもどおり街を出て、草原へと向かった。
草原に着くと、それぞれの練度に合わせた訓練をする。サフィアは馬上に慣れている兵士たちとともに模擬戦をし、アーサーはベテラン兵に馬の操り方を習っているようだった。アーサーは器用なのかその身体能力の高さゆえか、昼頃には自由自在に馬で草原を駆け回っていたので、その上達っぷりにはサフィアも一緒に訓練してた兵士も驚いた。
昼食は、わざわざ教会に戻って食べるのは時間がもったいないため草原で持ってきたものを食べることになっている。兵士たちは布を敷いてその上で食べるが、聖女であるサフィアは簡易ながら用意されたテーブルと椅子で食べる。同席するのは、今までは騎士団長や兵士長であるベテラン兵たちだけだったが、今回は勇者であるアーサーも一緒だ。
「いやあ、午後には勇者様も模擬戦に参加できるかもしれませんなあ」
「そうか」
「馬に乗ったことがないというのが信じられないほどですよ」
「嘘ではない」
「ああいえ、勇者様を疑っているわけではなく……失礼いたしました」
「別に良い」
サンドイッチを食べながら話す。初めは笑顔で話しかけていた団長も、アーサーのつれない態度に顔が曇っていた。アーサーに悪気があるわけではなく、ただ彼はまったく愛想のない人なだけだろう。サフィアやベテラン兵は今まで関わっていてそれを分かっているので気にしないが、団長は戸惑っているようだった。困った様子でベテラン兵に視線を送っている。
見かねて、サフィアがアーサーに話しかけた。
「馬に乗ってみてどうだった? 楽しかった?」
「ああ。ここにきて一番楽しかったかもしれない。動物は好きなんだ」
「なら良かったわ。わたしは初めて馬に乗る時、怖くて怖くてしょうがなくて……かなり苦戦してたのよ」
「普通はそんなものじゃないだろうか。何歳くらいのときだったんだ?」
「十歳だったかしら」
「それは怖くて当たり前だろう。君ももっと小さかっただろうし」
「ふふ、そうね。そう言ってもらえて、なんだか安心したわ。あのときは本当にどうしようって悩んでいたから」
アーサーとそこそこ会話が続いて、サフィアは嬉しくなった。せっかく現れた勇者だから、仲良くなりたいのだ。
闇竜討伐の旅は馬で移動するので、馬を操る技術はもちろんのこと、馬で走っているときに魔物の襲撃を受けた時のために馬上でも戦闘ができるようになる必要があるのだ。
馬小屋では既に兵士が何人か集まっていた。アーサーの姿もあって、ベテラン兵と馬を見ているようだ。
「おはようございます」
「おはようございます、聖女様」
「おはよう」
挨拶すると、ベテラン兵とアーサーが振り返った。武器を選んだ日から、なんとなくアーサーの雰囲気がやわらかくなった気がしてサフィアの頬が緩む。
「何してるの?」
「馬を選んでいるんだ。俺は乗ったことがなくて」
「そうなの。初めは慣れないかもしれないけれど、頑張ってね」
「ああ」
「じゃあ、勇者様をよろしくお願いします」
「ええ、お任せくださいませ」
邪魔してはいけないと、サフィアは自分の愛馬の元へと行った。
準備をしながらアーサーの様子を窺うと、動物に慣れているのか怖がっている様子はまったくなく触れ合っていたので、たぶんすぐに慣れるだろう。
教会内の訓練場は馬上訓練には狭いので、大教会がある街から少し離れたところにある草原で行う。
兵士のみんなと街の外に向かって馬を歩かせていると、民衆たちが邪魔にならない程度に集まってくる。
「聖女様だ!」
「あの人、初めて見るわ。勇者様?」
「そうじゃない? 服も教会兵のみなさんと違うし」
「紋章見えるかな?」
「勇者様ー!」
サフィアは手を振る民衆たちに手を振り返していたが、ベテラン兵の馬に同乗しているアーサーは無反応だった。サフィアたちはアーサーが無愛想な人物であることを知っているが、そうでない街の人々は少し戸惑っている様子だった。それでもこれは凱旋でも何でもないただの移動なので、サフィアたちはいつもどおり街を出て、草原へと向かった。
草原に着くと、それぞれの練度に合わせた訓練をする。サフィアは馬上に慣れている兵士たちとともに模擬戦をし、アーサーはベテラン兵に馬の操り方を習っているようだった。アーサーは器用なのかその身体能力の高さゆえか、昼頃には自由自在に馬で草原を駆け回っていたので、その上達っぷりにはサフィアも一緒に訓練してた兵士も驚いた。
昼食は、わざわざ教会に戻って食べるのは時間がもったいないため草原で持ってきたものを食べることになっている。兵士たちは布を敷いてその上で食べるが、聖女であるサフィアは簡易ながら用意されたテーブルと椅子で食べる。同席するのは、今までは騎士団長や兵士長であるベテラン兵たちだけだったが、今回は勇者であるアーサーも一緒だ。
「いやあ、午後には勇者様も模擬戦に参加できるかもしれませんなあ」
「そうか」
「馬に乗ったことがないというのが信じられないほどですよ」
「嘘ではない」
「ああいえ、勇者様を疑っているわけではなく……失礼いたしました」
「別に良い」
サンドイッチを食べながら話す。初めは笑顔で話しかけていた団長も、アーサーのつれない態度に顔が曇っていた。アーサーに悪気があるわけではなく、ただ彼はまったく愛想のない人なだけだろう。サフィアやベテラン兵は今まで関わっていてそれを分かっているので気にしないが、団長は戸惑っているようだった。困った様子でベテラン兵に視線を送っている。
見かねて、サフィアがアーサーに話しかけた。
「馬に乗ってみてどうだった? 楽しかった?」
「ああ。ここにきて一番楽しかったかもしれない。動物は好きなんだ」
「なら良かったわ。わたしは初めて馬に乗る時、怖くて怖くてしょうがなくて……かなり苦戦してたのよ」
「普通はそんなものじゃないだろうか。何歳くらいのときだったんだ?」
「十歳だったかしら」
「それは怖くて当たり前だろう。君ももっと小さかっただろうし」
「ふふ、そうね。そう言ってもらえて、なんだか安心したわ。あのときは本当にどうしようって悩んでいたから」
アーサーとそこそこ会話が続いて、サフィアは嬉しくなった。せっかく現れた勇者だから、仲良くなりたいのだ。
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