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27.怪しい団体
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私はアキヲから渡された記事を、慌てながら、貪るように読んだ。
「大学生、謎の怪しい団体「癒しの会」に巻きこまれたか?!
9月に東京都在住の大学生が2名、行方不明になっている。警察は、事件と事故の両面から捜査していたが、聞き込みをしているとある怪しい団体が浮上してきた。その団体は、「癒しの会」と名乗る、黒衣を纏った4.5人程のグループだ。男女のどちらかはわかっていない。「癒しの会」と名乗る団体は、最近、都内の新宿や渋谷など繁華街に出没しているのを目撃されている。彼ら彼女らの目的はまだわかっていないが、少年少女たちの手を引いているところや、病院の近くでうろついているのを見たという、住人の目撃証言がある。また、インターネットの自殺サイトを利用して、何らかの犯罪に関わっている可能性がある。警察は、この「癒しの会」と行方不明になった大学生が自殺サイトを通じて関わりがあったのではないかと考え、怪しい団体の正体を追っているとのことで....(続)」
私は、記事の概要を読み終え、吐き気がしてくるのを感じる。
「どういうことなの?私もアキヲも、自分の意思でこの村に来たのよね?なんで、癒しの会が、私たちに犯罪を犯したことになっているの?」
私の手が、わなわなと震えてきているのがわかる。これは、怒りなのか、動揺なのか、何の感情なのかわからなかった。
「だけど、俺たちは、自分の意思できたと思っているけど、実はそう仕向けられたのかもしれない。俺たちの弱味につけこんで、この村の犯罪に加担させようとしている可能性が高い」
アキヲは、私を説得するように、私の目を見て、私の肩を揺すり、力強い声で言った。
アキヲは、癒しの村が犯罪組織であると確信してしまっていた。私が何を言っても、揺るがないように思えた。
「でも、ねえ、アキヲ、私たち、麻薬なんて何も見ていないわ!ただ、あのプレハブが怪しいっていうだけで、見たわけでも、紗羅さんから直接聞いたわけでもない」
しかし私は、アキヲに冷静になるように、説得するしかなった。
「何言ってるんだ!記事も読んだだろ?子どもたちも、孤児でなくて、普通の家庭の子を誘拐してきてるのかもしれない!あのプレハブからは、怪しい匂いしか感じられない!」
アキヲは、私が目を覚ますように、私の過ちを正そうとしていた。
それは、下界の人たちが、例えば私の母や父が、いつも私に言い聞かすようにするのと同じように聞こえた。
(「リサちゃん、あなたは病気だと思い込んでるのよ。青春や若いときは、傷ついたり、裏切られたり、色々な人と関わって自分を見つめていくしかないの。現実に目を向けてちょうだい」)
母は私がリストカットをすると、悲しそうに、いつも、そう言っていた。
私の病気を、決して現実として、受け入れなかった。
「アキヲ、聞いて。縄が、蛇に見えることがあるっていう話、覚えてる?」
私は、アキヲもまた、母のように現実から逃げているように感じられた。何か、社会の闇や隙間を理由にして、自分がこの村に自主的に来たことから、逃げている。
「インドの思想だろ?今は、そんなことを言っている場合じゃない!蛇をただの縄に見ているのは、リサのほうだ!」
アキヲは、苛立だしそうに、声を荒げて言った。
彼の口調の強さから、今はアキヲに、何を言っても駄目だと思った。
同時に、私が間違っているのだろうかという、一点の疑問も生じる。
もしかしたら、記事に書かれたことが真実で、癒やし村は、犯罪組織なのかもしれない。
私は、何が正しくて、何が間違っているのかわからなくなった。
「とにかく、俺はこの村の犯罪をつきとめる!きっとあのプレハブに何かあるはずだ!」
アキヲはそう言って、部屋から飛び出して行ってしまう。
私の脳裏に、紗羅さんの顔が浮かぶ。
紗羅さんに、聞いてみよう。
私もアキヲと同じように、部屋から飛び出して、無我夢中で紗羅さんの元へ走った。
「大学生、謎の怪しい団体「癒しの会」に巻きこまれたか?!
9月に東京都在住の大学生が2名、行方不明になっている。警察は、事件と事故の両面から捜査していたが、聞き込みをしているとある怪しい団体が浮上してきた。その団体は、「癒しの会」と名乗る、黒衣を纏った4.5人程のグループだ。男女のどちらかはわかっていない。「癒しの会」と名乗る団体は、最近、都内の新宿や渋谷など繁華街に出没しているのを目撃されている。彼ら彼女らの目的はまだわかっていないが、少年少女たちの手を引いているところや、病院の近くでうろついているのを見たという、住人の目撃証言がある。また、インターネットの自殺サイトを利用して、何らかの犯罪に関わっている可能性がある。警察は、この「癒しの会」と行方不明になった大学生が自殺サイトを通じて関わりがあったのではないかと考え、怪しい団体の正体を追っているとのことで....(続)」
私は、記事の概要を読み終え、吐き気がしてくるのを感じる。
「どういうことなの?私もアキヲも、自分の意思でこの村に来たのよね?なんで、癒しの会が、私たちに犯罪を犯したことになっているの?」
私の手が、わなわなと震えてきているのがわかる。これは、怒りなのか、動揺なのか、何の感情なのかわからなかった。
「だけど、俺たちは、自分の意思できたと思っているけど、実はそう仕向けられたのかもしれない。俺たちの弱味につけこんで、この村の犯罪に加担させようとしている可能性が高い」
アキヲは、私を説得するように、私の目を見て、私の肩を揺すり、力強い声で言った。
アキヲは、癒しの村が犯罪組織であると確信してしまっていた。私が何を言っても、揺るがないように思えた。
「でも、ねえ、アキヲ、私たち、麻薬なんて何も見ていないわ!ただ、あのプレハブが怪しいっていうだけで、見たわけでも、紗羅さんから直接聞いたわけでもない」
しかし私は、アキヲに冷静になるように、説得するしかなった。
「何言ってるんだ!記事も読んだだろ?子どもたちも、孤児でなくて、普通の家庭の子を誘拐してきてるのかもしれない!あのプレハブからは、怪しい匂いしか感じられない!」
アキヲは、私が目を覚ますように、私の過ちを正そうとしていた。
それは、下界の人たちが、例えば私の母や父が、いつも私に言い聞かすようにするのと同じように聞こえた。
(「リサちゃん、あなたは病気だと思い込んでるのよ。青春や若いときは、傷ついたり、裏切られたり、色々な人と関わって自分を見つめていくしかないの。現実に目を向けてちょうだい」)
母は私がリストカットをすると、悲しそうに、いつも、そう言っていた。
私の病気を、決して現実として、受け入れなかった。
「アキヲ、聞いて。縄が、蛇に見えることがあるっていう話、覚えてる?」
私は、アキヲもまた、母のように現実から逃げているように感じられた。何か、社会の闇や隙間を理由にして、自分がこの村に自主的に来たことから、逃げている。
「インドの思想だろ?今は、そんなことを言っている場合じゃない!蛇をただの縄に見ているのは、リサのほうだ!」
アキヲは、苛立だしそうに、声を荒げて言った。
彼の口調の強さから、今はアキヲに、何を言っても駄目だと思った。
同時に、私が間違っているのだろうかという、一点の疑問も生じる。
もしかしたら、記事に書かれたことが真実で、癒やし村は、犯罪組織なのかもしれない。
私は、何が正しくて、何が間違っているのかわからなくなった。
「とにかく、俺はこの村の犯罪をつきとめる!きっとあのプレハブに何かあるはずだ!」
アキヲはそう言って、部屋から飛び出して行ってしまう。
私の脳裏に、紗羅さんの顔が浮かぶ。
紗羅さんに、聞いてみよう。
私もアキヲと同じように、部屋から飛び出して、無我夢中で紗羅さんの元へ走った。
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