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 アメジストは、ミネアと話している内に、復讐しようとしていた自分が浅はかで、恥ずかしさが疼いていた。

(私は民を背負う長であるのに、問題を簡単に考え過ぎていた)

「ミネア様に、託します。私にできることはありますか?」

 アメジストは、心を落ち着かそうと、茶の香りを嗅いだ。

「魔法を使えるようになりたい。私に、できる?」

 ミネアは茶を一口飲んで聞いた。

「もちろんです!ミネア様は、サーリャの地の後継者。姉の血を受け継ぎ、最も強い魔法力があるはず!ただ、、、」

 アメジストは、顔を翳らせ、口重くなる。

「なに?言ってちょうだい」

 タンジア王子が怪我をして捕らえられていることに胸を痛め、急がせるように聞く。

(時間がない。早く魔法を使えるようになって、カルデアに行かなければ!)

「サーリャの地を引き継ぎし者は、試練を受けなければいけない。姉上も受けた」

「試練?」

「たぶん、今までも、無意識にミネア様は魔法力を使われていると思う。だが、正式な契約をしないと、魔法として唱えることができない。魔法は、古の精霊との契約。精霊と契約してこそ、魔法力は何倍にもあがり、魔術を使うことができる」

(だからこそ、姉上の魔法力は、誰にも及ばないほど強い。サーリャの地に、魔法陣も張れるのだ)

 アメジストは、後継者でしか受けれない試練を、ミネアが耐えられるのか心配であった。

「姉上が後継者の試練を受けたのは、12才の頃だった。それまでに、相当な魔法の修行を受けての試練だ。ミネア様が、何も魔法の心得ないままでは、試練を乗り越えられるか」

 アメジストの言葉から、かなり危険な試練であることが予想された。しかし、ミネアには時間がなかった。一刻を争う今、試練を受ける選択しか残されていなかった。

「大丈夫。私は、ランビーノから剣術の教えを受けた。剣術は肉体を、魔術は魔法力を使い、互いに相成るように見えるが、生命エネルギーを使っていることでは基は同じもの」

 ミネアの言葉は力強く、揺るがぬ決心で唇は固く閉じていた。アメジストは、サリーンもまた、一度決めたことは絶対に引かす、唇を閉ざす癖があったのを思い出す。

(不思議だ。親子で一度も会ったことがなくても、癖まで似るものなのだな)

「わかった。試練の場を案内しよう。今日は、夜も遅くなってきた。早朝はどうかな?」

 アメジストは、不思議な縁に感心しながら、ミネアの覚悟に同調して言った。

「明日では遅い。今から行くわ」

 ミネアは、今にもタンジア王子が殺されるのではないかという不安でいっぱいだった。一秒も無駄にはできなかった。

「覚悟は決まってるか。わかった。これから行こう」

 アメジストはそう言うと、勢いよく立ち上がった。ミネアも続いて立ち上がる。2人は家を出ると控えていたリャンに跨る。

「試練の場は、ここから近い。魔の洞窟と恐れられているところだ。リャン!飛べ!」

 リャンは、月に向かって気高く吠えると、空に飛び立った。

「リャンも魔法を?」

 ミネアは、空を飛ぶの初めてだった。

「ああ、サーリャの地では、動物も魔法を使える。姉上の魔法陣のおかげだ」

「すごい。綺麗」

 ミネアは、月に照らされたサーリャの地を見下ろし、純粋に感動する。

「この地は、魔法陣のおかげで、人間の毒が侵入しない。だから、全てが澄んでる。精霊に守られた地だ」

 アメジストは鼻を鳴らし、得意げに話した。

(私の母は、この地の後継者だった。すごい人だったんだ)

 ミネアは、母の真実を知り、尊敬の気持ちが湧いてくる。

(私も、母のように、優しく、誇り高く生きたい)
  
 ミネアは、サーリャの山や木々に見惚れながら、強い気持ちで思った。


 


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