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カリューシャの剣が振り下ろされ、タンジア王子を斬りつけようとした、そのとき、ランビーノが駆けつけて間に入り、カリューシャの剣を受けた。
「お父さん!」
ミネアは、心底安心をした表情で、肩をおろした。
「すまない、遅くなった」
ランビーノは、カリューシャと剣を交えながら、ミネアに謝った。ランビーノは、一度、アリシアの王国に帰ったが、タンジア王子とユーナ姫が芝居に出かけていることを知ると、嫌な予感が湧いて、急いで駆けつけた。
(ぎりぎりだが、間に合って良かった)
ランビーノとカリューシャは、稲妻の如き剣を打ち合い、どちらも一歩も譲らなかった。
「タンジア王子、大丈夫ですか?!なぜ、こんなことを!」
ミネアは、タンジア王子の胸から流れる血を、自分の服を破り、胸に巻いて止血する。タンジア王子の意識は、今にも落ちそうであったが、ミネアの腕に抱かれていると気づくと、目を開けた。
「王子!気づかれましたか?」
ミネアの目には涙が流れていた。ミネアは、タンジア王子が、身をもって自分を守ってくれたことが、悔しくもあったが、嬉しさも混じっていた。
「ミネア、良かった、大丈夫なのだな」
「私は、大丈夫です。今、手当しますから、王子、気を確かに!」
王子は、ミネアの目からキラキラと涙が流れているのを見て、微笑んだ。
「ミネア、好きだ。好きな女を守れて死ねるなら、本望だ」
王子は、優しくミネアの頬を触った。
「王子、私も、私も好きです!」
ミネアは、王子の手をとり、必死に叫んだ。ミネア自身も不思議なほど、自然に言葉が口から出ていた。
王子の意識は、朦朧としていたが、確かにミネアの告白は、耳に届いていた。
「ミネア、そなたを愛する心だけが、真実だ。私は死なない。私を信じてついてきてくれ」
王子は、痛みで苦しく、今にも意識がなくなりそうであったが、ミネアに優しく笑い、頬を寄せて、口づけを奪った。ミネアは、王子の口づけに応え、より激しく口づけを返した。
「王子、わかりました!私は、王子を信じて、どこまでもついて行きます。もう、どうか、話さないで。傷が開きます」
ミネアは、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、必死に王子に頼んだ。
「わかった、わかったから、泣くな」
タンジア王子は、優しく笑い、ミネアの手を握った。
ランビーノとカリューシャは、剣を切り付け合いながら、2人の会話は耳に入っていた。もちろん、ユーナ姫の耳にも届いていた。
ミネアは、タンジア王子に応急手当てを施すと、ランビーノに加勢をしようと立ち上がった。
「王子をお願いします!」
ミネアは後ろを振り向き、ユーナ姫に頼んだ。ユーナ姫は、愕然として2人の愛の告白を聞いていた。顔は真っ青であったが、タンジア王子の瀕死の姿をみると、我に返って、頷いた。
ミネアは、剣を持ち直すと、ランビーノと共に、カリューシャに斬りつける。カリューシャは、2人かがりになると、身を引いて、路地裏の建物の中に隠れた。
「ミネア、大丈夫か?」
ランビーノは、息を切らせながら言う。さすがに、1人でカリューシャと剣を交えるのは、荷が重かった。
「大丈夫。タンジア王子が変わりに切られたから、私は無傷よ」
ミネアは、悲しそうな、愛しそうな目をタンジア王子に向ける。ランビーノは、いつの間に2人がそのような関係になったのか、と不思議に思いながらも、
「よし。2人なら押せる。ヤツも術を使う余裕もないだろう」
ランビーノはそう言って頷き、カリューシャの気配を辿って、廃虚の建物へと窓から侵入する。ミネアは、ランビーノに続いて、追って行く。
カリューシャも、2対1であると、こちらが分が悪いことは、わかっていた。作戦を変更する事に決め、ランビーノとミネアがこちらに来る気配を感じ取ると、気配を消しながら、タンジア王子に近づいた。
(こうなったら、タンジア王子を人質にとるしかないな)
カリューシャは、2人の背後をすり抜けて、ユーナ姫からタンジア王子を奪い、催眠剤を嗅がせた。タンジア王子は、一瞬で眠りに落ちる。
「なに?タンジア王子を離せ!」
ミネアは、カリューシャがタンジア王子を抱えこんだことに気づいた。ランビーノも慌てて、カリューシャの元へ飛んだ。
(ほんとに、カリューシャは、気を自由自在に操る)
「ミネア様。これ以上近づくと、タンジア王子を殺します」
カリューシャは、残酷に顔を歪めた。ミネアは、タンジア王子を人質にとられては、それ以上、カリューシャの言うことを聞くしかなった。
「ミネア様、タンジア王子は、カルデア王国へお連れします。貴方様がいらっしゃるまで、殺さないことを約束します。期限は、1週間です」
カリューシャは、冷たい声でゆっくりと告げると、タンジア王子とともに、風の如く消え去った。
「お父さん!」
ミネアは、心底安心をした表情で、肩をおろした。
「すまない、遅くなった」
ランビーノは、カリューシャと剣を交えながら、ミネアに謝った。ランビーノは、一度、アリシアの王国に帰ったが、タンジア王子とユーナ姫が芝居に出かけていることを知ると、嫌な予感が湧いて、急いで駆けつけた。
(ぎりぎりだが、間に合って良かった)
ランビーノとカリューシャは、稲妻の如き剣を打ち合い、どちらも一歩も譲らなかった。
「タンジア王子、大丈夫ですか?!なぜ、こんなことを!」
ミネアは、タンジア王子の胸から流れる血を、自分の服を破り、胸に巻いて止血する。タンジア王子の意識は、今にも落ちそうであったが、ミネアの腕に抱かれていると気づくと、目を開けた。
「王子!気づかれましたか?」
ミネアの目には涙が流れていた。ミネアは、タンジア王子が、身をもって自分を守ってくれたことが、悔しくもあったが、嬉しさも混じっていた。
「ミネア、良かった、大丈夫なのだな」
「私は、大丈夫です。今、手当しますから、王子、気を確かに!」
王子は、ミネアの目からキラキラと涙が流れているのを見て、微笑んだ。
「ミネア、好きだ。好きな女を守れて死ねるなら、本望だ」
王子は、優しくミネアの頬を触った。
「王子、私も、私も好きです!」
ミネアは、王子の手をとり、必死に叫んだ。ミネア自身も不思議なほど、自然に言葉が口から出ていた。
王子の意識は、朦朧としていたが、確かにミネアの告白は、耳に届いていた。
「ミネア、そなたを愛する心だけが、真実だ。私は死なない。私を信じてついてきてくれ」
王子は、痛みで苦しく、今にも意識がなくなりそうであったが、ミネアに優しく笑い、頬を寄せて、口づけを奪った。ミネアは、王子の口づけに応え、より激しく口づけを返した。
「王子、わかりました!私は、王子を信じて、どこまでもついて行きます。もう、どうか、話さないで。傷が開きます」
ミネアは、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、必死に王子に頼んだ。
「わかった、わかったから、泣くな」
タンジア王子は、優しく笑い、ミネアの手を握った。
ランビーノとカリューシャは、剣を切り付け合いながら、2人の会話は耳に入っていた。もちろん、ユーナ姫の耳にも届いていた。
ミネアは、タンジア王子に応急手当てを施すと、ランビーノに加勢をしようと立ち上がった。
「王子をお願いします!」
ミネアは後ろを振り向き、ユーナ姫に頼んだ。ユーナ姫は、愕然として2人の愛の告白を聞いていた。顔は真っ青であったが、タンジア王子の瀕死の姿をみると、我に返って、頷いた。
ミネアは、剣を持ち直すと、ランビーノと共に、カリューシャに斬りつける。カリューシャは、2人かがりになると、身を引いて、路地裏の建物の中に隠れた。
「ミネア、大丈夫か?」
ランビーノは、息を切らせながら言う。さすがに、1人でカリューシャと剣を交えるのは、荷が重かった。
「大丈夫。タンジア王子が変わりに切られたから、私は無傷よ」
ミネアは、悲しそうな、愛しそうな目をタンジア王子に向ける。ランビーノは、いつの間に2人がそのような関係になったのか、と不思議に思いながらも、
「よし。2人なら押せる。ヤツも術を使う余裕もないだろう」
ランビーノはそう言って頷き、カリューシャの気配を辿って、廃虚の建物へと窓から侵入する。ミネアは、ランビーノに続いて、追って行く。
カリューシャも、2対1であると、こちらが分が悪いことは、わかっていた。作戦を変更する事に決め、ランビーノとミネアがこちらに来る気配を感じ取ると、気配を消しながら、タンジア王子に近づいた。
(こうなったら、タンジア王子を人質にとるしかないな)
カリューシャは、2人の背後をすり抜けて、ユーナ姫からタンジア王子を奪い、催眠剤を嗅がせた。タンジア王子は、一瞬で眠りに落ちる。
「なに?タンジア王子を離せ!」
ミネアは、カリューシャがタンジア王子を抱えこんだことに気づいた。ランビーノも慌てて、カリューシャの元へ飛んだ。
(ほんとに、カリューシャは、気を自由自在に操る)
「ミネア様。これ以上近づくと、タンジア王子を殺します」
カリューシャは、残酷に顔を歪めた。ミネアは、タンジア王子を人質にとられては、それ以上、カリューシャの言うことを聞くしかなった。
「ミネア様、タンジア王子は、カルデア王国へお連れします。貴方様がいらっしゃるまで、殺さないことを約束します。期限は、1週間です」
カリューシャは、冷たい声でゆっくりと告げると、タンジア王子とともに、風の如く消え去った。
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