4 / 9
第四 ドラゴン伝説が蘇る
しおりを挟む
アルクとカトレアは、そのまま何分か見つめ合っていた。
目が離せない何か吸いつくものをお互いに感じていた。
「何者だ?!」
見回りをしていた兵が異変に気づいてやってくる気配がした。
「この状況は、あまり良くない。侵略者かスパイと勘違いされるぞ、こい!」
アルクはカトレアをそっと腕からおろすと、カトレアの手をとって走り出した。
「ドラゴン伝説を知ってるか?」
「ああ、あの嘘話?!」
庭を駆け走りながら、アルクは思いつめたように、厳しい表情をしていた。
「あれは、嘘ではない。もしかしたら、大変なことになるかもしれない」
「え?」
カトレアが怪訝に首を傾げたときだった。オカリナの笛の音が耳に響いてくる。
「あ、サラとランドンが探しているわ。あっちの方向から聞こえる、ここでもう大丈夫。この壁を越えていくわ」
三人がもしもばらばらになってしまったときのために、オカリナの笛を吹き、居場所を知らせる。三人の秘密の音色だった。
カトレアとアルクは、追手の兵を巧みに撒くと、木々の影に隠れた。
「わかった。また会えるか?」
アルクは、カトレアの手を強く握って言った。
「ええ、また会いに来るわ」
カトレアは、顔を赤らめて頷く。
「もしかしたら、ドラゴン伝説が、蘇るかもしれない」
「まだその話?災いなんて、あるわけないわ」
「災いがあろうとも、必ず会いに行く」
アルクは、辛そうな光を目に宿して言った。
「大丈夫よ。考えすぎよ」
カトレアは、明るく笑い、アルクの手を離した。
「またね、アルク王子!」
そう言うと、両足に力を入れ、ぴょんと飛ぶと、木々の枝に捕まり、塀を軽々と飛び越えた。
「またな!」
アルクは、鳥のように軽やかに塀を越えていくカトレアを眩しそうに見ながら見送った。
塀を越えると、ランドンとサラが、飛行船を着地させて待っていた。
「はやく!カトレア!」
サラは、まだ襲ってくる野鳥を打ち落としながら、カトレアを見つけると叫んだ。
「了解!」
カトレアは、風のような早く飛行船に乗ると、操縦機をとった。
「よし!帰るわよ!」
カトレアの号令とともに、飛行船は浮き上がり、メリムダ国へ舵をとり、帰路へと進んでいく。
サラとランドンは、安堵をして肩をおろしたが、無事に城まで帰り着くまで、気は緩められなかった。
機嫌良く笑っているカトレアを見て、二人とも舌打ちしたい気持ちだった。
(まったく、このおてんば姫!)
♢♢♢♢♢♢♢
その夜だった。不気味な声が、アルクの頭に語りかけられた。
一一 城内に入った罪は重い。あのときのように、また、逢瀬を交わすのだろう。そうはさせない。さあ、神とも約束はしている。そなたは、私のもの。一一一
一一 アルク、滅ぼすのです。メリムダ国を焼き払ってしまえ一一
「うううぅぅぅ」
アルクは必死に声に抵抗したが、その力は強く、叶うものではなかった。
♢♢♢♢♢♢♢
「姫様!大変です!隣の国から、戦車や飛行船が!城下町が攻撃されています!」
ぐっすりと眠る、カトレアの部屋に飛び込んできたのは、昔から仕える世話役の婆やだった。
「なに。。?ばあや、まだねむい、、」
寝ぼけながら、カトレアはむくりと毛布から出てくる。
「外を見てください!城下町が、焼けてます。すぐに避難してください!」
婆やは寝ぼけるカトレアの手を引き、部屋から連れ出して行く。
「なに?」
「まだわかりませんか?見てください!」
婆やに言われるまま、廊下の窓に目を向ける。
「え?」
カトレアは、自分の目を疑った。一気に目が覚めて、血の気が引いていく。
婆やの言うように、城下町が焼かれ、あちこちから煙が立ちのぼっていた。
目が離せない何か吸いつくものをお互いに感じていた。
「何者だ?!」
見回りをしていた兵が異変に気づいてやってくる気配がした。
「この状況は、あまり良くない。侵略者かスパイと勘違いされるぞ、こい!」
アルクはカトレアをそっと腕からおろすと、カトレアの手をとって走り出した。
「ドラゴン伝説を知ってるか?」
「ああ、あの嘘話?!」
庭を駆け走りながら、アルクは思いつめたように、厳しい表情をしていた。
「あれは、嘘ではない。もしかしたら、大変なことになるかもしれない」
「え?」
カトレアが怪訝に首を傾げたときだった。オカリナの笛の音が耳に響いてくる。
「あ、サラとランドンが探しているわ。あっちの方向から聞こえる、ここでもう大丈夫。この壁を越えていくわ」
三人がもしもばらばらになってしまったときのために、オカリナの笛を吹き、居場所を知らせる。三人の秘密の音色だった。
カトレアとアルクは、追手の兵を巧みに撒くと、木々の影に隠れた。
「わかった。また会えるか?」
アルクは、カトレアの手を強く握って言った。
「ええ、また会いに来るわ」
カトレアは、顔を赤らめて頷く。
「もしかしたら、ドラゴン伝説が、蘇るかもしれない」
「まだその話?災いなんて、あるわけないわ」
「災いがあろうとも、必ず会いに行く」
アルクは、辛そうな光を目に宿して言った。
「大丈夫よ。考えすぎよ」
カトレアは、明るく笑い、アルクの手を離した。
「またね、アルク王子!」
そう言うと、両足に力を入れ、ぴょんと飛ぶと、木々の枝に捕まり、塀を軽々と飛び越えた。
「またな!」
アルクは、鳥のように軽やかに塀を越えていくカトレアを眩しそうに見ながら見送った。
塀を越えると、ランドンとサラが、飛行船を着地させて待っていた。
「はやく!カトレア!」
サラは、まだ襲ってくる野鳥を打ち落としながら、カトレアを見つけると叫んだ。
「了解!」
カトレアは、風のような早く飛行船に乗ると、操縦機をとった。
「よし!帰るわよ!」
カトレアの号令とともに、飛行船は浮き上がり、メリムダ国へ舵をとり、帰路へと進んでいく。
サラとランドンは、安堵をして肩をおろしたが、無事に城まで帰り着くまで、気は緩められなかった。
機嫌良く笑っているカトレアを見て、二人とも舌打ちしたい気持ちだった。
(まったく、このおてんば姫!)
♢♢♢♢♢♢♢
その夜だった。不気味な声が、アルクの頭に語りかけられた。
一一 城内に入った罪は重い。あのときのように、また、逢瀬を交わすのだろう。そうはさせない。さあ、神とも約束はしている。そなたは、私のもの。一一一
一一 アルク、滅ぼすのです。メリムダ国を焼き払ってしまえ一一
「うううぅぅぅ」
アルクは必死に声に抵抗したが、その力は強く、叶うものではなかった。
♢♢♢♢♢♢♢
「姫様!大変です!隣の国から、戦車や飛行船が!城下町が攻撃されています!」
ぐっすりと眠る、カトレアの部屋に飛び込んできたのは、昔から仕える世話役の婆やだった。
「なに。。?ばあや、まだねむい、、」
寝ぼけながら、カトレアはむくりと毛布から出てくる。
「外を見てください!城下町が、焼けてます。すぐに避難してください!」
婆やは寝ぼけるカトレアの手を引き、部屋から連れ出して行く。
「なに?」
「まだわかりませんか?見てください!」
婆やに言われるまま、廊下の窓に目を向ける。
「え?」
カトレアは、自分の目を疑った。一気に目が覚めて、血の気が引いていく。
婆やの言うように、城下町が焼かれ、あちこちから煙が立ちのぼっていた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします
天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。
側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。
それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる