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第六話
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ミンティア令嬢は、広間からつながっている中庭で、花に水をやっていた。
紫、青、ピンクの紫陽花が色鮮やかに、花開いている。雨季とはいえ、雨が少ない。だから、ミンティア令嬢は、いつも、花に水をやっている。
「こんにちは、ミンティアさん」
私は、背後から話しかけた。ミンティア令嬢は、私の気配を感じられなかったようで、びくりとして振り返った。
「あら、サーラさん。気づかなくて、ごめんなさい」
ミンティア令嬢は、私の顔を見て、少し強張った表情を見せる。いつも、冷たい態度だから、当たり前といえば、そうなのかもしれない。
「いえ。私こそ、突然声をかけて、ごめんなさい。散歩をしていたら、貴方を見かけて声をかけたの」
本当は、ミンティア令嬢目的に、探して歩いていた。
「そうだったんですか。ワクチン開発は、どうですか?」
ミンティア令嬢は、花に水をやる手を止めて、私のほうをちらっと見て言う。
「ええ、大変なことがわかったんです」
ミンティア令嬢は、やはり、かなり気になっている!私は、頭を回転させる。
「大変なこと?」
「ええ、実はね、あのウイルスは、チースト科の猿ではなく、バーリス科の豚からの変異したウイルスだったんです」
「え?」
「確か、貴方のお父さま、遺伝子組み換えの研究をしていましたよね。私、以前に、アザール王国で、貴方のお父さま、クラレンドン伯爵に会ったのを思い出しましたわ」
私は、ちらっとミンティア令嬢の顔を見る。顔が青ざめてきている!
「今回の感染は、誰かが故意に、山に来た登山者を、変異したウイルスを持つチースト科の猿に襲わせたのだと私は考えています」
私は、畳みかけるように、ミンティア令嬢に話を続ける。ミンティア令嬢は、手を滑らせ、ジョウロを落とした。
「そ、そんなこと。なぜ、私に?」
ミンティア令嬢は、明らかに動揺していた。
「貴方か、貴方のお父さまが、変異した細胞とウイルスをもつチースト科の猿を、登山者に襲わせたのではないですか?」
私は、冷たい声で、ゆっくりと聞いた。
「そんなこと、あるわけないわ!憶測でそんな怖いこと言うのはやめて!」
ミンティア令嬢の顔は、蒼白していた。額から汗も浮かんでいる。
「身に覚えがないなら、なぜそんなに、動揺するのですか?貴方は、嘘が下手だ」
私は、ミンティア令嬢の目を真っ直ぐに見た。ダリアン王子の運命と、国の存亡がかかっている。お手柔らかにはできない。
「私は、何も知りません!!」
ミンティア令嬢は、悲壮な目をして叫び、逃げるように駆け出して行ってしまう。
やはり、何らかの事情を、ミンティア令嬢は知っているのだ。
私は、その場はそれ以上彼女を追わず、大人しく研究室に戻った。
アニサスとリーキに、ミンティア令嬢とのやり取りを話すと、2人とも腕をくんで考え始める。
「やっぱり、ミンティア令嬢は、何か知っていると思います!もう少し迫ってみたらどうでしょう?」
リーキは、腰をくねらせながら言う。
「だめよ。今は大人しくしたほうが良いわ。だって、証拠がまだないにも等しい。あまり刺激せずに、様子を見た方がいいわ」
アニサスは、流石、冷静に物事を監視している。私もアニサスの意見に賛成だった。
「そうね。まずはワクチン開発に力を入れ
て、証拠固めしていきましょう!」
私は、2人の存在が心強く、勢いついて言った。
アニサスは研究の見どころがあった。私は、アニサスの視点や観察力に感心しながらも、私がもつ知識は惜しみなく教えた。リーキはサポート上手で、整理された資料を素早く持ってきてくれる。
優秀な助手に助けられながら、私はワクチン開発を急いだ。
その夜、私は疲れはて、研究室のソファーで、うとうとと眠ってしまっていた。その隙を狙い、何者かが私の寝込みを襲い、睡眠剤を嗅がせてきた。私は意識が遠のくのを感じながら、助けを求めて2人を探した。
しかし、アニサスとリーキは、各自の寝室に戻って不在であった。
「何者?!」
私は、できるだけ眠剤を吸わないよう、息を止めて、侵入者を見た。
「ダリアン王子?」
え?なぜ?
その瞬間、意識が遠のき、暗闇へと落ちてしまった。
紫、青、ピンクの紫陽花が色鮮やかに、花開いている。雨季とはいえ、雨が少ない。だから、ミンティア令嬢は、いつも、花に水をやっている。
「こんにちは、ミンティアさん」
私は、背後から話しかけた。ミンティア令嬢は、私の気配を感じられなかったようで、びくりとして振り返った。
「あら、サーラさん。気づかなくて、ごめんなさい」
ミンティア令嬢は、私の顔を見て、少し強張った表情を見せる。いつも、冷たい態度だから、当たり前といえば、そうなのかもしれない。
「いえ。私こそ、突然声をかけて、ごめんなさい。散歩をしていたら、貴方を見かけて声をかけたの」
本当は、ミンティア令嬢目的に、探して歩いていた。
「そうだったんですか。ワクチン開発は、どうですか?」
ミンティア令嬢は、花に水をやる手を止めて、私のほうをちらっと見て言う。
「ええ、大変なことがわかったんです」
ミンティア令嬢は、やはり、かなり気になっている!私は、頭を回転させる。
「大変なこと?」
「ええ、実はね、あのウイルスは、チースト科の猿ではなく、バーリス科の豚からの変異したウイルスだったんです」
「え?」
「確か、貴方のお父さま、遺伝子組み換えの研究をしていましたよね。私、以前に、アザール王国で、貴方のお父さま、クラレンドン伯爵に会ったのを思い出しましたわ」
私は、ちらっとミンティア令嬢の顔を見る。顔が青ざめてきている!
「今回の感染は、誰かが故意に、山に来た登山者を、変異したウイルスを持つチースト科の猿に襲わせたのだと私は考えています」
私は、畳みかけるように、ミンティア令嬢に話を続ける。ミンティア令嬢は、手を滑らせ、ジョウロを落とした。
「そ、そんなこと。なぜ、私に?」
ミンティア令嬢は、明らかに動揺していた。
「貴方か、貴方のお父さまが、変異した細胞とウイルスをもつチースト科の猿を、登山者に襲わせたのではないですか?」
私は、冷たい声で、ゆっくりと聞いた。
「そんなこと、あるわけないわ!憶測でそんな怖いこと言うのはやめて!」
ミンティア令嬢の顔は、蒼白していた。額から汗も浮かんでいる。
「身に覚えがないなら、なぜそんなに、動揺するのですか?貴方は、嘘が下手だ」
私は、ミンティア令嬢の目を真っ直ぐに見た。ダリアン王子の運命と、国の存亡がかかっている。お手柔らかにはできない。
「私は、何も知りません!!」
ミンティア令嬢は、悲壮な目をして叫び、逃げるように駆け出して行ってしまう。
やはり、何らかの事情を、ミンティア令嬢は知っているのだ。
私は、その場はそれ以上彼女を追わず、大人しく研究室に戻った。
アニサスとリーキに、ミンティア令嬢とのやり取りを話すと、2人とも腕をくんで考え始める。
「やっぱり、ミンティア令嬢は、何か知っていると思います!もう少し迫ってみたらどうでしょう?」
リーキは、腰をくねらせながら言う。
「だめよ。今は大人しくしたほうが良いわ。だって、証拠がまだないにも等しい。あまり刺激せずに、様子を見た方がいいわ」
アニサスは、流石、冷静に物事を監視している。私もアニサスの意見に賛成だった。
「そうね。まずはワクチン開発に力を入れ
て、証拠固めしていきましょう!」
私は、2人の存在が心強く、勢いついて言った。
アニサスは研究の見どころがあった。私は、アニサスの視点や観察力に感心しながらも、私がもつ知識は惜しみなく教えた。リーキはサポート上手で、整理された資料を素早く持ってきてくれる。
優秀な助手に助けられながら、私はワクチン開発を急いだ。
その夜、私は疲れはて、研究室のソファーで、うとうとと眠ってしまっていた。その隙を狙い、何者かが私の寝込みを襲い、睡眠剤を嗅がせてきた。私は意識が遠のくのを感じながら、助けを求めて2人を探した。
しかし、アニサスとリーキは、各自の寝室に戻って不在であった。
「何者?!」
私は、できるだけ眠剤を吸わないよう、息を止めて、侵入者を見た。
「ダリアン王子?」
え?なぜ?
その瞬間、意識が遠のき、暗闇へと落ちてしまった。
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