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5話

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 街の繁華街にある探偵屋に、私はいつも懇意にしていた。

 大学に行きたかったときは、どこの大学の教授が点をとりやすいか、とかカールに出会ったら、カールの家柄や家族のことなど、色々なことを調べてもらってきた。

「こんにちは!」

 探偵屋はアパートメントの2階にある。

 一見は、普通のアパートの部屋を使って、こっそりと探偵屋として営業している。

「あら!久しぶり!今回のことは、大変だったわね。もう大丈夫なの?」

 リリアンは、私がアパートの戸を開けると、溌剌とした声で迎えてくれる。

「もう大丈夫よ。今回は、流石の私でも参ったわ。なにしろ、結婚式当日に、カールに逃げられたのだからかね」

 私は、何でもなかったかのように、笑って余裕のある風を演出する。

(本当は、まだまだ、傷が癒えず、未練たらたらなんだけどね)

 でも、部屋に籠っていても、何も解決しないわ。行動しないと!

「良かったわ。これに懲りて、男なんかに頼っちゃだめよ。これからは、女も自立する時代だからね」

 リリアンは、女だてらに探偵屋を開業し、今日では口コミでたくさんの人々が、頼み込んでくる、繁盛店だ。

「そうね、男なんて、クズよ。実は今日頼みたいことも、そのことなのよ」

 私は、来客用のソファーにどっかりと座り、声をひそめて、カールが忍び込んできて、グランデール伯爵に許すように言ってくれと嘆願した経緯を話した。

「えー?!信じられない!自分たちの身のために、傷ついたアルルを使おうってわけ?


「そうなのよ。ほんとに、ろくでもない男だったわ。それで、今、カールたちがどんな状態なのか、調べてほしいの」

(それでも未練があると言ったら、リリアンは、どう言うだろうか)

「じゃーん!そんなこともあるだろうと、先んじて調べておいたわ」

 リリアンは、デスクから封書を出して、私の前でひらひらさせる。

「え?もう調べてたの?」

「もう長い付き合い、親友みたいなものじゃない。カールが何をしているのか、貴方なら絶対知りたいとやって来ると思ったのよ」

 リリアンは得意気に、封書を開けながら言った。

 リリアンとは、実は女学校時代の友人だった。リリアンは、中流貴族の娘だったが、勝ち気で活力のある彼女は、お見合い結婚が嫌で、高校中退をして探偵屋になったのだ。

 私も気が強いところがあり、学校では校則を守らず、先生にはいつも注意されていた。

 リリアンと私は自然に口を聞き始め、一緒にいるようになった。よく授業を途中で抜け出し、街に遊びに出ていた。

「そうね、リリアンは私のこと、よく知っているものね」

 リリアンなりに、私を心配して、調べておいてくれたのかもしれない。

「あたぼうよ!それで、カールなんだけど、今、ミンティアと街の外れにある貧困街で暮らしているわ」

「貧困街?かりにも、二人とも貴族なのよ?」

「でも、実際、働く場所がないのよ。カールは、親のスネかじりで、大学も欠席ばかりで、職につながる知識がないみたい」

「生活は全て、グランデール伯爵頼みだったのは、なんとなく知っていたけど、、」

(なんだか、カールって、聞けば聞くほど、ダメ男じゃない)

「そう、だから、父親に勘当されてから収入はなく、ミンティアの父親も借金だらけだから、貧困街の安いアパートに住むしかなかたったのよ」

「ミンティアのほうの屋敷には住めなかったの?」
 
「ミンティアの父親も、あなたの父親から借金を相当していて、なんてことをしたんだと、ミンティアも勘当同然で家を出たみたい」

 リリアンは、両家が私の父親への借金が幾らになるかまで調べていた。それは、100万ジェルを超えていた。
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