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工事開始 その2
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~アルザニクス家、屋敷~
「久しぶりに時間が出来たし皆の様子でも見て来るか」
最近は色々と予定が詰まりすぎていて、碌に仲間達を見てこれなかった。
あれから色々あったし、まぁ無いとは思うが、俺の目が届かない所で変な事を考えられていたら今後の行動に差し支えるかもしれない。
ゲームでは少し目を離した隙に良からぬことを考えた仲間が暴走をし始め、ゲームオーバーになったなんて事を何度も経験してきたアルス。
グレシアスはどんな可能性も考慮し、ほぼ起きえないという事象でさえ虱潰しに消して、自身の安全を確保していくゲーム。
そうだ……。いつも以上に丁寧に行動していこう。
死んだらもう終わりなのだから。
この世界がグレシアスだと分かってすぐの時は、リアルなゲームをプレイしているという感覚が残っており、心の何処かに大丈夫だろうという安易な感情があったアルス。
しかし、今では死に際を経験したからかそんな生温い感情は既に消え失せ、直感的に一度死んだらコンテニューは出来ないだろうと感じ取っていた。
じゃあまずは……
こうしてアルスは懐にいつも隠し持っている鑑定眼鏡を触り、あの人物がいるであろうアルザニクス家の兵御用達の訓練場へと足を進めていくのであった。
~アルザニクス家、訓練場~
久しぶりの空き時間という事もあり、少々ワクワク気味で訓練場へと入って行くアルス。
汗と土が混じったような匂い。そして、剣と剣がぶつかり合う訓練場特有の音。
決していい匂いがする訳でも無く、アルスが好む静かな場所でもない。それなのに、今のアルスにとっては何もかもが新鮮味を感じ、心地よい気分であった。
そんな久しぶりにいい気分を味わっていると……
「ま、参りました……」
「もう終わりかい? じゃあ次! ……ほら、早くしな!」
ははっ、また皆相手に暴れてるな。
聞き馴染みのある特徴的な声。自分の武力に絶対的な自信を持ち、訓練場に居合わせている兵の中で断トツの実力を持ち合わせている女性。
そんな彼女は訓練場のど真ん中にある戦闘スペースで屈強な男たちの膝をつかせ、新たな獲物を探し求めていた。
うわぁ……皆もうへばってるじゃん。
アルスの視界に映るのはまだまだ疲れを見せていない赤髪の女性が肩に剣を置き、一人勝者の様に立ち、肩で息をする兵たちが一人残らず地に倒れ込んでいる姿。
既に訓練場内で立っている者は彼女とアルス。そして……
「アルス様」
「どうした?」
エバンが突然話しかけてくる。
「久しぶりに彼女と……ミネルヴァさんとしてきてもよろしいでしょうか」
いつもは滅多に笑みを表情に出さないエバンが口角を少し吊り上げている。
ほんと分かりやすい奴だ。
エバンは今、こう考えているだろう。今自分の本気を受け止めてくれるミネルヴァさんと本気の勝負がしたい。自分がどこまで成長したかを感じたい……と。
エバンの視界にはもう、アルスの姿は入っていない。自身の闘志を燃やし、今か今かとアルスの返事を待っていた。
いつも黙って俺についてきてくれるエバンが久しぶりに口にした願い。
俺もエバンがどれだけ成長したか見たかったし……
そうしてアルスはミネルヴァへと視線を向ける。
「お前ら男だろ? このぐらいで膝をついてどうするんだ」
それにミネルヴァさんも消化不良気味でイライラしてるし……丁度いいか。
「よし……」
アルスは口の端を釣り上げ。
「いいよ」
了承する。
「っ! ありがとうございます!」
アルスの了承を受けたエバンはものすごい勢いで頭を下げ、ミネルヴァへと歩いていく。
「はぁ。……今日はこのぐらいで終わりに」
誰からも返答が返ってこなかったミネルヴァは静かに剣を下げ、訓練場を去ろうとしたその時。
「私がお相手になります」
「っ! その言葉を待ってたんだ! 今すぐ……え? エバン? 何でここに……」
ミネルヴァはパッと笑みを浮かべ、振り向く。するとそこにはアルスに同行したエバンの姿が。
「今はそんな事どうでもいいじゃないですか。武器を持つ者が二人。ただそれだけで」
「……言うようになったじゃないか」
剣を抜いたエバンを見て、ミネルヴァは捕食者の様な笑みを浮かべる。
そしてミネルヴァも手にもつ剣をエバンへと向ける。
「じゃあ私からいく「ちょっと待ってください」……今度はなにさ」
やる気になったミネルヴァは早くしろと視線で訴えかける。
「今日は槍でお願いします」
「槍? はっ、今日は剣相手で満足しな」
「前の私とは違うってことを証明するのでどうか」
エバンの真剣な願い。
そんなエバンに感じるものがあったのか、ミネルヴァはじっとエバンの目を見る。
「……手を抜いたらただじゃおかないからね」
「ありがとうございます」
エバンの熱に負けたミネルヴァは訓練場にある武器庫へと向かう。
「……流石に聖武器は使わないか」
一人安心した様子で呟くアルスは戦闘スペースが一望できる場所でひっそり見物を始めていた。
エバンの発言でミネルヴァさんが聖武器を使わないか冷や冷やしてたけど、武器庫に向かったから良かった。
アルスは簡易的なテントの横にある、ミネルヴァさんの上着であろう服の上に置いてある聖武器をチラ見する。
これで安心して見てられ……
「アルス様!」
突然アルスの名を呼ぶエバン。
……そうにはないな。
兵たちに変な気を使わせないようにひっそりとしていたアルスだったが、エバンの呼び声で仕方なく前へと出ていく。
「なっ! あ、アルス様がお見えだと!」「まじかっ!」
その言葉が耳に入った兵たちが動揺と同時に、酷使した体を無理に動かし、立ち上がろうとし始める。
ほら、皆無理して俺に挨拶しようとしてるじゃん。
しょうがない……
アルスは深く息を吸い。
「皆、そのままでいい」
声を大にして言葉をかける。
「っありがとうございます!」
すると、丁度そこに居合わせたエルドが気を利かせ、座り込みながら素早く礼をする。
おっ、エルド……ナイス!
アルスから声がかかったものの、そのまま休んでいていいものか悩んでいた兵たちにとって、エルドからの咄嗟の礼は非常に助けとなっただろう。
「あ、ありがとうございます!」「ありがとうございます!」……
エルドに続き、兵たちが体を下ろしながら続々と礼をする。
その光景に頷くアルス。
「それで……一体何の用だ?」
エバンの近くまでやってきたアルスは尋ねる。
「アルス様に合図の声掛けをしてもらいたく」
「別にアルスじゃなくても良くないか? 近くにいる誰かに……」
ミネルヴァがそう言って誰かにやってもらおうとするが。
「アルス様が良いんです」
エバンの意志は固く。
「……そうか」
簡単に折れるミネルヴァ。
まぁ、そのぐらいならいいか。
「よし。任せろ」
そうしてミネルヴァとエバンの両者が位置につき、アルスが丁度真ん中へと立つ。
「二人共。絶対、大きな怪我をしないように」
「分かりました」「分かってる」
二人は首を縦に振り、アルスはゆっくりと頷く。
じゃあ、エバンがどれだけ成長したか……見せてもらうよ。
アルスは二人を交互に見て、準備が完了している事を確認し。
「では……はじめ!」
試合の火蓋を切って落とした。
「久しぶりに時間が出来たし皆の様子でも見て来るか」
最近は色々と予定が詰まりすぎていて、碌に仲間達を見てこれなかった。
あれから色々あったし、まぁ無いとは思うが、俺の目が届かない所で変な事を考えられていたら今後の行動に差し支えるかもしれない。
ゲームでは少し目を離した隙に良からぬことを考えた仲間が暴走をし始め、ゲームオーバーになったなんて事を何度も経験してきたアルス。
グレシアスはどんな可能性も考慮し、ほぼ起きえないという事象でさえ虱潰しに消して、自身の安全を確保していくゲーム。
そうだ……。いつも以上に丁寧に行動していこう。
死んだらもう終わりなのだから。
この世界がグレシアスだと分かってすぐの時は、リアルなゲームをプレイしているという感覚が残っており、心の何処かに大丈夫だろうという安易な感情があったアルス。
しかし、今では死に際を経験したからかそんな生温い感情は既に消え失せ、直感的に一度死んだらコンテニューは出来ないだろうと感じ取っていた。
じゃあまずは……
こうしてアルスは懐にいつも隠し持っている鑑定眼鏡を触り、あの人物がいるであろうアルザニクス家の兵御用達の訓練場へと足を進めていくのであった。
~アルザニクス家、訓練場~
久しぶりの空き時間という事もあり、少々ワクワク気味で訓練場へと入って行くアルス。
汗と土が混じったような匂い。そして、剣と剣がぶつかり合う訓練場特有の音。
決していい匂いがする訳でも無く、アルスが好む静かな場所でもない。それなのに、今のアルスにとっては何もかもが新鮮味を感じ、心地よい気分であった。
そんな久しぶりにいい気分を味わっていると……
「ま、参りました……」
「もう終わりかい? じゃあ次! ……ほら、早くしな!」
ははっ、また皆相手に暴れてるな。
聞き馴染みのある特徴的な声。自分の武力に絶対的な自信を持ち、訓練場に居合わせている兵の中で断トツの実力を持ち合わせている女性。
そんな彼女は訓練場のど真ん中にある戦闘スペースで屈強な男たちの膝をつかせ、新たな獲物を探し求めていた。
うわぁ……皆もうへばってるじゃん。
アルスの視界に映るのはまだまだ疲れを見せていない赤髪の女性が肩に剣を置き、一人勝者の様に立ち、肩で息をする兵たちが一人残らず地に倒れ込んでいる姿。
既に訓練場内で立っている者は彼女とアルス。そして……
「アルス様」
「どうした?」
エバンが突然話しかけてくる。
「久しぶりに彼女と……ミネルヴァさんとしてきてもよろしいでしょうか」
いつもは滅多に笑みを表情に出さないエバンが口角を少し吊り上げている。
ほんと分かりやすい奴だ。
エバンは今、こう考えているだろう。今自分の本気を受け止めてくれるミネルヴァさんと本気の勝負がしたい。自分がどこまで成長したかを感じたい……と。
エバンの視界にはもう、アルスの姿は入っていない。自身の闘志を燃やし、今か今かとアルスの返事を待っていた。
いつも黙って俺についてきてくれるエバンが久しぶりに口にした願い。
俺もエバンがどれだけ成長したか見たかったし……
そうしてアルスはミネルヴァへと視線を向ける。
「お前ら男だろ? このぐらいで膝をついてどうするんだ」
それにミネルヴァさんも消化不良気味でイライラしてるし……丁度いいか。
「よし……」
アルスは口の端を釣り上げ。
「いいよ」
了承する。
「っ! ありがとうございます!」
アルスの了承を受けたエバンはものすごい勢いで頭を下げ、ミネルヴァへと歩いていく。
「はぁ。……今日はこのぐらいで終わりに」
誰からも返答が返ってこなかったミネルヴァは静かに剣を下げ、訓練場を去ろうとしたその時。
「私がお相手になります」
「っ! その言葉を待ってたんだ! 今すぐ……え? エバン? 何でここに……」
ミネルヴァはパッと笑みを浮かべ、振り向く。するとそこにはアルスに同行したエバンの姿が。
「今はそんな事どうでもいいじゃないですか。武器を持つ者が二人。ただそれだけで」
「……言うようになったじゃないか」
剣を抜いたエバンを見て、ミネルヴァは捕食者の様な笑みを浮かべる。
そしてミネルヴァも手にもつ剣をエバンへと向ける。
「じゃあ私からいく「ちょっと待ってください」……今度はなにさ」
やる気になったミネルヴァは早くしろと視線で訴えかける。
「今日は槍でお願いします」
「槍? はっ、今日は剣相手で満足しな」
「前の私とは違うってことを証明するのでどうか」
エバンの真剣な願い。
そんなエバンに感じるものがあったのか、ミネルヴァはじっとエバンの目を見る。
「……手を抜いたらただじゃおかないからね」
「ありがとうございます」
エバンの熱に負けたミネルヴァは訓練場にある武器庫へと向かう。
「……流石に聖武器は使わないか」
一人安心した様子で呟くアルスは戦闘スペースが一望できる場所でひっそり見物を始めていた。
エバンの発言でミネルヴァさんが聖武器を使わないか冷や冷やしてたけど、武器庫に向かったから良かった。
アルスは簡易的なテントの横にある、ミネルヴァさんの上着であろう服の上に置いてある聖武器をチラ見する。
これで安心して見てられ……
「アルス様!」
突然アルスの名を呼ぶエバン。
……そうにはないな。
兵たちに変な気を使わせないようにひっそりとしていたアルスだったが、エバンの呼び声で仕方なく前へと出ていく。
「なっ! あ、アルス様がお見えだと!」「まじかっ!」
その言葉が耳に入った兵たちが動揺と同時に、酷使した体を無理に動かし、立ち上がろうとし始める。
ほら、皆無理して俺に挨拶しようとしてるじゃん。
しょうがない……
アルスは深く息を吸い。
「皆、そのままでいい」
声を大にして言葉をかける。
「っありがとうございます!」
すると、丁度そこに居合わせたエルドが気を利かせ、座り込みながら素早く礼をする。
おっ、エルド……ナイス!
アルスから声がかかったものの、そのまま休んでいていいものか悩んでいた兵たちにとって、エルドからの咄嗟の礼は非常に助けとなっただろう。
「あ、ありがとうございます!」「ありがとうございます!」……
エルドに続き、兵たちが体を下ろしながら続々と礼をする。
その光景に頷くアルス。
「それで……一体何の用だ?」
エバンの近くまでやってきたアルスは尋ねる。
「アルス様に合図の声掛けをしてもらいたく」
「別にアルスじゃなくても良くないか? 近くにいる誰かに……」
ミネルヴァがそう言って誰かにやってもらおうとするが。
「アルス様が良いんです」
エバンの意志は固く。
「……そうか」
簡単に折れるミネルヴァ。
まぁ、そのぐらいならいいか。
「よし。任せろ」
そうしてミネルヴァとエバンの両者が位置につき、アルスが丁度真ん中へと立つ。
「二人共。絶対、大きな怪我をしないように」
「分かりました」「分かってる」
二人は首を縦に振り、アルスはゆっくりと頷く。
じゃあ、エバンがどれだけ成長したか……見せてもらうよ。
アルスは二人を交互に見て、準備が完了している事を確認し。
「では……はじめ!」
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