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アメリア・ゾル・ウィンブルグ その2
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画面の中の人。一生会えることは無いと覚悟してた……
目の前に存在する少女を見て、ウルウルと涙を溜めるアルス。
グレシアスをプレイする時が至福の時間で、アメリアを画面の外から眺めるだけでもその日、一日の嫌な気分が吹っ飛ぶ。
この世界に転生できたのも何故かアメリアのお陰なんじゃないかと最近思い始めていた。
お陰でお父様とお母様に出会えたし、エバンやミネルヴァさんを始め、色々な大切な人と縁を持つことが出来た。何より、破滅のルートを辿るであろうこの世界を変えようと思ったきっかけくれた大事な人。
これから俺を待ち受ける運命は果てしなく過酷で辛いものだろう。それでも、あのアメリアを救えるのなら……大切な人達を守れるなら。と今まで頑張ってきた結果。今、こうして目の前に彼女が存在するという奇跡。
まだだ……
まだ、この子を救えると決まったわけじゃない。
アルスは心に刻む。
絶対にアメリアをあのような悲惨な目に合わせてはいけない。遥かに過酷で困難な道のりになろうとも、絶対に救ってみせると……
「アルス様……大丈夫ですか?」
「あ、すいません! 大丈夫です!」
何か決意を固めたかのようなアルスを心配する少女。
ジーヴァの娘であり、ウィンブルグ家の次期当主候補でもある、アルスの想い人。
その名も、アメリア・ゾル・ウィンブルグ。
グレシアスに用意されていた正規ルートのどれであっても、アメリアだけは絶対にハッピーエンドで終わる運命は無いと攻略班からも匙を投げだされていた、悲しき歴史を持つ令嬢でもある。
「突然黙ってしまわれたので、何かあったのかと思いました……」
アメリアは自分の事の様にアルスを心配し、返事が聞こえるとホッとした様子で笑みを浮かべた。
はぅ! なんて優しい人なんだ……
アルスは漆黒の長髪に目を奪われ、天使のような微笑みに胸打たれる。
この一瞬を得られただけでも、心からこの世界に転生してきて良かったと思える。
「いえ、アメリアさんの笑みに心打たれてまして……」
アルスは本心をさらけ出す。
「……お世辞でも嬉しいです」
「お世辞じゃないです! 本当に綺麗な人だなと心から思っています!」
あっ……
相手の謙遜……アメリアならば本心の可能性もあるが、そんな返事に熱くなったアルスは、半ば告白じみた言葉をかけてしまい、顔を真っ赤にさせてしまう。
は、恥ずかしい……
穴が近くにあるなら全身を突っ込んで、今言ったことを忘れ、そのまま冬眠してしまいたい。
「ふふっ、ありがとうございます。初めて言われました……」
アルスは真っ赤な顔で相手を見られないと視線を逸らしていたが、ふとアメリアが気になり顔を上げる。するとそこには、アルスと同じように顔を真っ赤にしたアメリアがオドオドとしながら立っていた。
こんなにも綺麗なのに……彼女の容姿を褒めたのは俺が初めてなのか。
枝毛一つない腰まで伸ばした黒い髪。ジーヴァから受け継いだであろう黒い瞳は他の者を魅了する力を持ち、体のパーツはどれをとっても他を圧倒する程のポテンシャルを13という年齢なのに感じさせる。
そんな完成された美を持つアメリアに対し、アルスも他とは比べ物にならない程美しい容姿を親から受け継いでいるため、とてもお似合いと言える二人。
そんな二人はお互い、顔を真っ赤にしながらも視線を合わせ続ける。
ドクン……
アルスには周りの音が既に聞こえなくなり、自身の心臓の鼓動音だけが耳に伝わる。
ドクン、ドクン、ドクン。
このまま二人の世界が続けばいいのに……
幸せな時間がずっと続けばいいと願うアルス。
「あ、あの! アメリアさん!」
「は、はい!」
「もしよかったら……」
アルスは衝動に駆られ、ある言葉を発言しようとしたその時……
目の前に存在する少女を見て、ウルウルと涙を溜めるアルス。
グレシアスをプレイする時が至福の時間で、アメリアを画面の外から眺めるだけでもその日、一日の嫌な気分が吹っ飛ぶ。
この世界に転生できたのも何故かアメリアのお陰なんじゃないかと最近思い始めていた。
お陰でお父様とお母様に出会えたし、エバンやミネルヴァさんを始め、色々な大切な人と縁を持つことが出来た。何より、破滅のルートを辿るであろうこの世界を変えようと思ったきっかけくれた大事な人。
これから俺を待ち受ける運命は果てしなく過酷で辛いものだろう。それでも、あのアメリアを救えるのなら……大切な人達を守れるなら。と今まで頑張ってきた結果。今、こうして目の前に彼女が存在するという奇跡。
まだだ……
まだ、この子を救えると決まったわけじゃない。
アルスは心に刻む。
絶対にアメリアをあのような悲惨な目に合わせてはいけない。遥かに過酷で困難な道のりになろうとも、絶対に救ってみせると……
「アルス様……大丈夫ですか?」
「あ、すいません! 大丈夫です!」
何か決意を固めたかのようなアルスを心配する少女。
ジーヴァの娘であり、ウィンブルグ家の次期当主候補でもある、アルスの想い人。
その名も、アメリア・ゾル・ウィンブルグ。
グレシアスに用意されていた正規ルートのどれであっても、アメリアだけは絶対にハッピーエンドで終わる運命は無いと攻略班からも匙を投げだされていた、悲しき歴史を持つ令嬢でもある。
「突然黙ってしまわれたので、何かあったのかと思いました……」
アメリアは自分の事の様にアルスを心配し、返事が聞こえるとホッとした様子で笑みを浮かべた。
はぅ! なんて優しい人なんだ……
アルスは漆黒の長髪に目を奪われ、天使のような微笑みに胸打たれる。
この一瞬を得られただけでも、心からこの世界に転生してきて良かったと思える。
「いえ、アメリアさんの笑みに心打たれてまして……」
アルスは本心をさらけ出す。
「……お世辞でも嬉しいです」
「お世辞じゃないです! 本当に綺麗な人だなと心から思っています!」
あっ……
相手の謙遜……アメリアならば本心の可能性もあるが、そんな返事に熱くなったアルスは、半ば告白じみた言葉をかけてしまい、顔を真っ赤にさせてしまう。
は、恥ずかしい……
穴が近くにあるなら全身を突っ込んで、今言ったことを忘れ、そのまま冬眠してしまいたい。
「ふふっ、ありがとうございます。初めて言われました……」
アルスは真っ赤な顔で相手を見られないと視線を逸らしていたが、ふとアメリアが気になり顔を上げる。するとそこには、アルスと同じように顔を真っ赤にしたアメリアがオドオドとしながら立っていた。
こんなにも綺麗なのに……彼女の容姿を褒めたのは俺が初めてなのか。
枝毛一つない腰まで伸ばした黒い髪。ジーヴァから受け継いだであろう黒い瞳は他の者を魅了する力を持ち、体のパーツはどれをとっても他を圧倒する程のポテンシャルを13という年齢なのに感じさせる。
そんな完成された美を持つアメリアに対し、アルスも他とは比べ物にならない程美しい容姿を親から受け継いでいるため、とてもお似合いと言える二人。
そんな二人はお互い、顔を真っ赤にしながらも視線を合わせ続ける。
ドクン……
アルスには周りの音が既に聞こえなくなり、自身の心臓の鼓動音だけが耳に伝わる。
ドクン、ドクン、ドクン。
このまま二人の世界が続けばいいのに……
幸せな時間がずっと続けばいいと願うアルス。
「あ、あの! アメリアさん!」
「は、はい!」
「もしよかったら……」
アルスは衝動に駆られ、ある言葉を発言しようとしたその時……
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