上 下
27 / 115

エバン VS ガイル その1

しおりを挟む
 エバンとガイルの決闘日、当日。

「うーん。今日は……」

 この世界に転生してから自分で起きることが滅多になくなったアルスだったが、今日は何故か朝早くに目が覚めてしまった。

 上体を少し起こし、窓の外を見る。

「まだ朝早いな……」

 外はまだ薄暗く、生活音すら聞こえない。

 別にすることないんだよな。

 何もする事が無く、もう一度寝ようとベットに横になり、目を閉じる。

「……駄目だ。寝れない」

 ……が中々寝付けない。

 寝れない事を悟ったアルスは、重い体を動かし、ベットから這い出て、まだ外が薄暗い中、窓を開ける。

「はぁー、今日はエバンとお父様が決闘をするのか。十中八九エバンが勝てないと思うが、もしかするとってこともあるか? ……お父様から一本取るってルールだったら少しは可能性はあるか……」

 アルスはベットに腰掛け、無意識に手で顎を弄りながら、試合の予想をする。

「それに今のエバンは、物凄い勢いで成長している。これなら……、でもどうなのだろうか」

 アルスは脳内シミュレーションを何度も行い、その結果に一喜一憂する。

 そんな時間を過ごしていたある時。


 コンコン。

 ドアのノック音が部屋中に響く。

 こんな時間帯に? 一体だれが……

「まだ暗い時間帯じゃ……」

 アルスはノック音に気づき、扉へと視線を向ける。

 その時、視界に窓から入り込む日差しが映る。


 太陽が昇ってる……。もう朝になったのか……


「あぁ、入っていいぞ」

 アルスは考え事に夢中になってから、これ程時間が経過していた事に衝撃を受けながらも、外の者に返事をする

「っ! アルス様、エバンです」

 部屋の外から、声が聞こえてくる。どうやらエバンのようだ。

「あぁ、起きている。入って来ていいぞ」

 ドアを丁寧に開けて、入ってきたのは身なりを整えたエバンであった。そんなエバンは驚いた様子で。

「アルス様が起こす前に起きているなんて……、私の決闘日だから早く起きてくれたんですか?」

 エバンが嬉しそうに話す。

「違う。ただ早く目が覚めてしまっただけだ。そういうエバンはどうなんだ。緊張とかしていないのか?」

 アルスは言われたことに少し腹がたったのか、ムスッとしながら答える。

「これが不思議としていないんですよね。昨日は色々と考えていましたが、寝て起きたらこの通り。むしろいつも以上に頭が冴えわたっているように感じます」

 エバンは両方の手のひらを交互に見比べながら、凄く落ち着いた様子で話す。

 これなら心配は要らないな。

「そうか。ならいい。私のためにもエバンには頑張ってもらわなければならないからな。今日の一戦、期待している」

「情けない試合はしないつもりです」

 アルスはフッ、と笑みを零しながら、エバンの目を見てそう言うと、エバンは気合が入ったいい返事を返す。


 それからアルスも身なりを整え、食事をするためにダイニングルームへと足を運ぶ。

「おっ! アルスおはよう!」「おはようアルス。昨日はぐっすり眠れたかしら?」

「お父様、お母様おはようございます。はい、お母様。いつも通りぐっすり眠ることが出来ました」

 アルスはガイルとサラ、それぞれと挨拶を交わす。

 3人は所定の位置に腰を下ろし、食事を待ち、テーブルの上に食事が運ばれると、アルス達の食事が始まる。

 そして、それぞれ3人はいつも通りの食事を楽しむと、アルザニクス家恒例の家族水入らずの時間が始まる。

 やはり、この人達と会話をすると、心が落ち着く。

 アルスは何気ない日常通りの会話で、家族の大切さを痛感する。

 そんな3人は楽しそうに会話をしていたが、途中、エバンとガイルの決闘の話が挙がった。

「そういえばエバンの調子はどうだ?」

 ガイルがエバンを心配してか、アルスに問いかける。

「エバンの話だと、今日は調子がいいそうです」

 アルスは先ほどエバンから聞いた話をガイルへとする。

「そうか……、楽しみだ」

 ガイルは白い歯を見せるように笑みを浮かべていると、突然、ダイニングルームの扉が開き、セバスがエバンを引き連れて、部屋へと入ってくる。

「ガイル様。エバンをお連れしました」

 ガイルが事前にエバンをダイニングルームへ連れてくるよう、指示していたらしい。

「そうか、ご苦労だった。ところでエバン。決闘の件だが、今から3時間後でいいか?」

「大丈夫です」

「そうか。……エバン、楽しみにしている」

「……自分が持てる実力の全てをガイル様にぶつけるだけです。こちらこそよろしくお願いします」

 二人とも好戦的な目で見合い、間からは火花が飛び散っているように見える。

「ちょっと二人とも。場所を考えなさい」

 そんな二人にサラが水を差す。

「……すまん」「サラ様、申し訳ありません」

 やはり二人でもサラには逆らえないのか、注意されると二人共、肩を落としたようにシュンとしてしまった。

 これもアルザニクス家の日常か。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

屋根裏の魔女、恋を忍ぶ

如月 安
恋愛
――大好き。 決して、叶わない恋だとわかっているけど、夢で想うだけで、幸せです。 と思ってただけなのに、なんで、こんなことに……。 ワケあって、伯爵邸の屋根裏に引き籠るリリアーナは、巷では魔女だと噂されていた。 そんな中、社交界の華と呼ばれる姉とその婚約者である公爵が、晩餐で毒を盛られた。 「犯人はリリアーナ」と誰もが言い、暗殺計画まで持ち上がっている様子。 暗殺を命じられたのは、わたしを冷然と見やる、片想いの相手。 引き籠り歴十二年。誰よりも隠れ暮らすのは得意。見つからないように隠れて逃げ続け、生き延びてみせる! と決意したのも束の間、あっさりと絶体絶命に陥る。 諦めかけたその時、事件が起こり……? 人の顔色伺い過ぎて、謎解き上手になった小心者令嬢と不器用騎士が、途中から両片想いを拗らせてゆくお話です。 暗ーい感じで始まりますが、最後は明るく終わる予定。『ざまぁ』はそれほどありません。  ≪第二部≫(第一部のネタバレややあり?)  幼いレイモンドとその両親を乗せた馬車が、夜の森で襲われた。  手をくだしたのは『黒い制服の騎士』で――――――。  一方、幸せいっぱいのロンサール邸では、ウェイン卿とノワゼット公爵、ランブラーとロブ卿までが、ブランシュとわたしを王都から遠ざけようとしているみたい。  何か理由があるの?  どうやら、わたしたち姉妹には秘密にしたいほど不穏な企みが、どこかで進行しているようす。  その黒幕は、毒蛇公爵の異名をとるブルソール国務卿?  それとも、闇社会を牛耳る裏組織?  ……いえいえ! わたしのような小娘が首を突っ込むような問題じゃありませんとも。  そんなことは騎士の皆様にお任せして、次の社交シーズンに向けて頑張ろうっと。  目標は、素敵で完璧なウェイン卿の隣に立つにふさわしい淑女になること!    だけど、あら?  わたし、あることに気がついちゃったかも……?    あまあま恋愛×少しファンタジー×コージーミステリーなお話です。    登場人物たち悩み抜いて迷走しますが、明るく完結予定です。  不定期更新とさせていただきます。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

司書ですが、何か?

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。  ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。

トロ猫
ファンタジー
2024.7月下旬5巻刊行予定 2024.6月下旬コミックス1巻刊行 2024.1月下旬4巻刊行 2023.12.19 コミカライズ連載スタート 2023.9月下旬三巻刊行 2023.3月30日二巻刊行 2022.11月30日一巻刊行 寺崎美里亜は転生するが、5ヶ月で教会の前に捨てられる。 しかも誰も通らないところに。 あー詰んだ と思っていたら後に宿屋を営む夫婦に拾われ大好きなお菓子や食べ物のために奮闘する話。 コメント欄を解放しました。 誤字脱字のコメントも受け付けておりますが、必要箇所の修正後コメントは非表示とさせていただきます。また、ストーリーや今後の展開に迫る質問等は返信を控えさせていただきます。 書籍の誤字脱字につきましては近況ボードの『書籍の誤字脱字はここに』にてお願いいたします。 出版社との規約に触れる質問等も基本お答えできない内容が多いですので、ノーコメントまたは非表示にさせていただきます。 よろしくお願いいたします。

異世界に転生したので裏社会から支配する

Jaja
ファンタジー
 スラムの路地で、ひもじい思いをしていた一人の少年。  「あれぇ? 俺、転生してるじゃん」  殴られた衝撃で前世の記憶を思い出した少年。  異世界転生だと浮かれていたが、現在の状況は良くなかった。  「王道に従って冒険者からの立身出世を目指すか…。それとも…」  そして何を思ったか、少年は裏社会から異世界でのし上がって行く事を決意する。  「マフィアとかギャングのボスってカッコいいよね!」  これは異世界に転生した少年が唯一無二の能力を授かり、仲間と共に裏社会から異世界を支配していくお話。  ※この作品はカクヨム様にも更新しています。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

処理中です...