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第二幕(前半)
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第二幕
場所 光流寺墓地。舞台遠景は一幕と同様。舞台中央奥には石の柵に囲われた、七尺(二・一メートル)ほどの墓が建っている。墓は「元勝院光軍宗安居士」の文字が刻まれている。墓の両端には石灯籠が建っている。墓と同時期に作られたらしくあちこちコケがついている。
幕が開くとひぐらしの鳴き声が聞こえる。傾いた橙色の光を浴びて、豪奢な着物を着た武士が舞台中央の墓の前で地面に突っ伏している。男の腕には短刀が握られている。上手側で呆然と立ちつくす十四郎たち。
文吾 な、なんだ? あれは。
宗助が急いで切腹している男に近寄り、触れないようにして顔や腹を覗き込む。
諦めたように首を振る。
宗助 駄目だ。もう死んでる。
文吾 な? え(狼狽している。縋るように宗助と十四郎を交互に見る)
十四郎 何故こんなところに。
十四郎も死骸に近付く。文吾もその後から怖ず怖ずと付いてくる。
文吾 (足下に目をやり)ひどいな。血の海だ。
十四郎 (死骸を矯めつ眇めつして)脇腹から真一文字にかっ切っている。
文吾 しかし、一体誰だ。この武士は。家中にこのようなものがいたか?
宗助 俺は………知らないな。このような男は。十四郎、お前は(十四郎に視線を送る)
十四郎 (首を振る)、初めて見る顔だ。
文吾 何者だ。こやつ。何故このような場所で腹を?
宗助 俺が知るか。だが、見たところ、浪人ではないな。身なりは派手だし月代も剃ってある。
文吾 なら、江戸詰めの者か。
十四郎 落ち着け、まだ家中の者とも分からぬのだ。それに、この男が誰であれ、事はそう簡単には済みそうもない。
文吾 どういうことだ。
十四郎 ここがどこか、知っているだろう。慈眼院様、つまり伊那川藩藩祖の墓前だ。歴代の藩侯もここに眠られている。
文吾 バチ当たりな。
十四郎 バチだけで済めばよいがな。死骸を歴代藩侯の墓前に捨てるなど、下手すれば藩全体まで事は広がる。
文吾 なんてことだ。
宗助が腕組みして死骸を眺める。死骸の袖を手に取り、着物の生地を凝視する。
十四郎 どうした、宗助。
宗助 この男が着ている着物、やけに豪華だな。
文吾 確かに。腹を切るにしては派手すぎる。腹を切るなら浅黄色と決まっているのにな。
死装束の持ち合わせがなかったから、こいつで間に合わせた………訳ないか。
(着物に触りながら)この着物、絹だな。
こいつを売れば死装束の二、三枚は楽に買える。
見たところ貧にやつれた、という風体でもない。肉付きはいいな。
ふん、髪の毛が濡れておる。水でも浴びたか?
(死骸の肩に触れて)あれ? 血溜まりに何か浮いてるぞ。
文吾が死骸の足下から何かを摘み上げ、目の前に近づける。十四郎と宗助も肩越しにそれを見つめる。
文吾 これは、獣の毛だな。一体何の毛だ?
宗助 どうせ野良猫か何かだろ。捨てろ、そんなもの。
十四郎 俺にも見せてくれ。
文吾から毛を受け取る。
(日にかざして)血に汚れているが、茶色いな、この毛は。
文吾も覗き込む。宗助は興味無さそうに死骸の周りを調べる。
死骸の襟の辺りを手探りで調べていると、はっとした顔になる。
文吾 そうだな。(宗助の方を向いて)ん、どうした宗助?
宗助 (振り向いて)この着物、どこかで見たことがあると思ったら、見ろ。
宗助が死骸の上体を起きあがらせ、着物の胸の紋所を指さす。
文吾 桔梗? 藩の家紋と同じではないか。
宗助 前に鷹狩りの帰りにこれと同じものをお召しになっていたのを見たことがある。
遠くから見ただけだからお顔までは見えなんだが、この着物は覚えている。
これは、殿のお召し物だ。
文吾 (混乱した様子で)何を言っているんだ。つまり、それは。
宗助 この死骸は。
十四郎 ………殿か?
三人は呆然と死骸を見つめる。ひぐらしの鳴き声が一際大きく鳴り響く。
文吾 (前進を振るわせて)馬鹿な、宗助、馬鹿なことを言うな。これが殿の筈がないだろう。
宗助 しかし、この着物の紋といい、柄といい確かに。
文吾 着物一枚で何が分かる。こんなもの、そこらの古着屋に腐るほど売っている。
派手なだけの、品のない、悪趣味な着物だ。
殿のお召し物であるはずがない。目が腐ったのか。宗助。
宗助 俺はただ思ったことをいっただけだ。それが悪いというのか。
文吾 ああ、悪い。貴様、言うに事欠いてこの男が殿などと。無礼にも程がある。
宗助 無礼は承知の上だ。だがな、この着物は確かに殿のものだ。
文吾 ふざけるな。これは侮辱だ。貴様も今すぐ腹を切れ。
文吾が刀に手をかける。宗助がはっとなって後ろに下がる。
十四郎 (文吾と宗助の間に入って)落ち着け。文吾、宗助もだ。
文吾 (十四郎を見て)しかしだな。宗助の奴、殿を侮辱して。
十四郎 さっきも言っただろう。まだ誰か分からぬと。
殿の着物を着ているからと、殿と決まったわけではない。
第一、文吾、宗助。お前ら殿のお顔を一度でも見たことがあるか?
文吾 (興奮が冷めた様子で)いや、ない。
宗助 俺もだ。十四郎、お前は。
十四郎 残念だが、俺も見たことがない。そうだろう?
俺たちのような身分の低い者が殿のお顔を拝見する機会など、めったにない。
死骸が殿というのはまだ仮の話だ。仮の話で激高してどうする。落ち着け。
文吾 (肩を落として)済まぬ。十四郎。
十四郎 謝るならば宗助にだろう。
文吾 すまん。宗助。許してくれ。
宗助 ああ。
十四郎 とりあえず、このままここで話していても仕方がない。寺のものと番屋のものに知らせよう。
宗助 ちょっと待て、十四郎。それはまずい。
十四郎 何故だ。
宗助 さっきの話を蒸し返すわけではないが、この武士が着ているのは確かに殿のものだ。
それでなくとも元勝院様の御霊前で切腹など、尋常ではない。
事の次第がはっきりするまで表沙汰にするのはまずい。
文吾 ならどうする。放って帰る訳にもいかんだろう。
十四郎 そういえば、井川様のお屋敷はこの近くだったな。もう城から戻られている頃だろう。
文吾、済まないがひとっ走りしてお呼びして来てくれないか。
文吾 それは構わないが、あの爺様で大丈夫か。
宗助 近々町奉行の役を下がるという話もあるらしいな。
十四郎 ほかの方を呼ぶには屋敷が遠すぎる。
いつ墓参りの者が来てもおかしくない以上、仕方あるまい。
それに井川様ならば、殿のお顔もご存じの筈だ。
少なくともこの男が殿か否か、は分かる。
文吾 なるほど。
十四郎 頼むぞ。事は内密に。なるべく供の方にもご遠慮して頂くこと。いいな。
文吾 ああ、行ってくる。
文吾が上手側に走って退場。
宗助 どうする。
十四郎 (死骸を見下ろして)見張っておくしかあるまい。下手に動かすのもまずい。
宗助 戸板か何か持って来るか?
十四郎 誰かに見つかると面倒だ。とにかく誰か来たら体で死骸を隠す。それでいいな。
宗助 ああ。
十四郎と宗助は切腹した男の前に立つ。落ち着かない様子で文吾の帰りを待つ。
ひぐらしの鳴き声。十四郎は死骸を調べている。
宗助 (あさっての方を向いて)なあ、十四郎。
十四郎 (宗助に背を向けて)どうした。
宗助 雪江殿の様子は、どうなんだ?
十四郎の動きが止まる。
宗助 (十四郎に背を向けたまま)あの頃は、家中の若い者は皆、雪江殿に憧れておった。文吾なんか大分熱が高かったな。雪江殿の親父の碁好きにかこつけて、碁石抱えて日参していたくらいだ。噂ではご家老の馬鹿息子も雪江殿に求婚していたという話だ。中には誰とひっつくか高楼亭の夕飯賭けていた奴もいたくらいだ。それがどうだ。蓋を開けてみれば、雪江殿を射止めたのはお前だ。それまで、加賀十四郎のかの字も出なかったというのにな。知っているか? そのせいでお前の評判はかなり悪かったぞ。陰でこそこそおなごに手を出す姑息な奴とかいってな。
十四郎 宗助。
宗助 別に責めている訳でもないし、今更謝ってもらおうとも思わん。けどな、多かれ少なかれ皆、雪江殿のことを心に留めていたのは事実だ。文吾が嫁を貰わないのも、多分そのせいだ。あいつは絶対に口には出さんだろうがな。武士が女房のことをべらべら喋るものではない、という奴もいるだろう。しかしな。もう少し教えてくれてもいいと思うぞ。
十四郎 済まない、宗助。
宗助 謝らなくてもいい、と言ったろう。効きたいのは雪江殿の容態だ。温泉は効くからな。秋にはこっちに戻ってこられるんだろう?
十四郎 (首を振る)いや、もう、こっちには戻ってこられない。
宗助 (驚いて振り返る)どういうことだ? 本当に、もう駄目なのか。おい。(十四郎に取りすがる)医者には診せたんだろ。何故黙っていた? そもそも、そんな重い病、今まで気づかなかったのか。十四郎!
十四郎 (辛そうに俯いて)助けられるものならば俺とてなんとしてでも助けてやりたかった。雪江には、あいつには幸せがあった。金も、家柄も、望めばもっと上があった。それをたかが十石の貧しい家に嫁いだあいつにしてやれたことなど、何もなかった。報いてやれたことなど、何もなかった。もっと禄高のある家に嫁いでいればあいつは………。
宗助 止めろ。雪江殿の病はお前のせいではないだろう。(十四郎から離れる)。早く迎えに行ってやれ。あそこは年寄りばかりだ。一人では心細かろう。
十四郎 ああ。来月には、迎えに行けると思う。
宗助 (十四郎から離れる)そうだな。文吾ではないが、御前試合で勝てば、雪江殿の病も吹き飛ぶよ。病は気からというからな。
上手から人の駆けてくる音。
文吾 (舞台外から)こちらです。お急ぎ下さい。
又右衛門 (同じく舞台外から)分かっておる。そう急かすな。
十四郎 (上手を向いて)お着きになられたか。
宗助 やれやれ、やっとご老体のお出ましか。
文吾の先導で、井川又右衛門が現れる。
小柄で髪は真っ白、手には扇子を持ち、神経質そうに顔に風を送っている。
城から戻ったばかりで紋付きに袴姿。
又右衛門 (居丈高に)火急の用件ときいたが一体何事じゃ。
供まで遠慮せいとは、余程のことなのじゃろうな?
宗助 は、左様でございます。
又右衛門 わしは忙しいんじゃ。近頃、押し込みにすりにかっぱらい、盗人が暴れ回っておる。
おまけに盗んだものといえば一文銭二枚に握り飯に、草履や布団の綿、
風呂桶まで盗んだ奴までおる。おまけに大雨に飢饉、踏んだり蹴ったりじゃ。
十四郎 申し訳ございませぬ。ですが、手前どもには到底身に余る事態。
是非ともお奉行のお力添えをお願いしたく、このようにお越し願いました次第です。
又右衛門 ふむ。まあ、そこまで言うならば仕方あるまい。して、いかなる用件じゃ。
宗助 こちらです。
宗助と十四郎が下手側に下がる。二人の陰に隠れていた死骸が再び現れる。
又右衛門 (死骸を指さし)な、これは。一体、なんとしたことじゃ。
十四郎 手前どもが訪れたときには既にこのような仕儀になっておりました。
宗助 家中のものかと思いましたが、我ら三人、知らぬ顔故、困惑しておりました。
十四郎 本来ならば井川様のお手を煩わせる必要もないことですが、何せ腹切った場所が場所故、
内密に済ませるべきと判断し、こうしてお越し頂いた次第にございます。
又右衛門 (咳払いして)ふむ。まあよい。
又右衛門は地面の血の海を踏まぬように気をつけて死骸の側にしゃがみ込む。
死骸を矯めつ眇めつ調べる。扇子で死骸の顔を持ち上げると、もう片方の手を顎にやる。
ふむ、と何度も唸る。十四郎たちは一歩下がってその様子を不安げに見ている。
文吾 (又右衛門の背中から覗き込んで)いかがですか。お奉行。もしや、殿なのでございましょうか。
又右衛門 (突然振り向いて)無礼者! 貴様それでも伊那川藩士か!
文吾 (びっくりして尻餅をつく。そして平伏しながら)申し訳ございませぬ。
又右衛門 (立ち上がり)この不忠者どもめ。こやつが殿に見えるのか、馬鹿者が。
宗助 すると、この男は殿ではないと。
又右衛門 (大喝して)当たり前だ! 何故殿が切腹せねばならぬのだ!
十四郎 (一歩踏み出して)お教え下さい。殿でないとするならば、この武士は一体何者なのですか?
又右衛門 貴様らが知らぬのも無理はあるまい。新参者で、国元に帰ってきたのは今度が初めてだからな。
文吾 当家の者なのですか?
又右衛門 先年、江戸にて殿が百石にて召し抱えた男だ。名は野島半次郎。間違いない。
文吾 (宗助に耳打ちして)思い出した。あいつだ。前に噂になったろう。馬の世話で百石取った奴だ。
宗助 (声をひそめて)ああ、あいつか。東軍流馬術の免許皆伝とかいう。
文吾 (小声で)本人はそう言っておるそうだが、なに実際は馬に人参食わせるのが精一杯という奴だ。
宗助 (声をひそめて)そんな奴が何故召し抱えになった? しかも百石だと。俺の家の四倍の禄高だぞ。
文吾 (やはり小声で)俺の家なら五倍だ。なんでも、殿に散々ゴマすった挙げ句、
己ならば「蒼月」を天下一の名馬に仕立ててみせると、おおぼら吹いたらしい。
宗助 (野島に視線を移す)ふざけた男だ。
又右衛門 (文吾たちを睨み付け)お主ら、そこで何をこそこそ話しておる。
文吾 (立ち上がり、取り繕うように)いえ、何でもございませぬ。
そうそう、ところで、その野島殿が着ておる着物、いささか派手ではありませぬか?
いかに百石取りと言えど、少々不相応のようにお見受けいたします。
この宗助などもそれで野島殿を殿ではないかなどと、寝ぼけたことを申した次第でして。
お奉行は何か心当たりはございませぬでしょうか?
又右衛門 うむ。それよ。
十四郎 ご存じなのですか?
又右衛門 こやつ、国元に来たその日に、殿のお供で遠乗りに出かけたのじゃ。
殿のご愛馬「蒼月」に乗ってな。そこでこやつ凄まじい速さで駆けていったのじゃ。
誰も追いつけぬほどにな。
文吾 (宗助に耳打ちして)きっと馬に振り回されたんだ。(含み笑い)
又右衛門が文吾を睨み付ける。文吾、たちまち神妙な面持ちで何度も頷く。
又右衛門 (咳払いして)それを殿がいたく、お気に召したらしくてな。
ご自身のお召し物をこやつに下げ渡したのよ。
十四郎 つまり、この野島殿の着ているのは元々殿のお召し物、ということですか。
又右衛門 全くなんという不届き者じゃ! 切角殿から賜った着物を血で汚すとは!
しかも、元勝院様の前で腹を切るなど。これだから新参者は。
十四郎 その野島殿が腹を切った理由ですが、井川様は何か思い当たる節はございませぬか。
何か武士にあるまじき恥辱を被ったとか。
又右衛門 知るか! どうせ己の不始末を恥じてのことじゃろう。
十四郎 不始末? 野島殿はどのような失態を犯したのでしょうか。
又右衛門が不愉快そうに顔をしかめる。そして野島の死骸を一周した後、扇子で野島の額を叩く。
又右衛門 こやつ、「蒼月」を、殿のご愛馬を傷つけたのよ。
己の腕と、殿のご寵愛に慢心しよって。
慣らしに「蒼月」で街道を駆けておった時、草むらから出てきた百姓を引っかけよった。
哀れなものよ。そのせいで「蒼月」はひっくり返ってしまった。
幸い怪我はたいしたことはなかったが、殿はいたくご立腹でな。
沙汰のあるまで謹慎ということになった。
十四郎 それで、殿はいかようにお沙汰を。
又右衛門 わしがそこまで知る訳無かろう。
しかしまあ、殿のご気性から考えれば永の暇、いや切腹ということも考えられる。
その前に己の始末をつけたのじゃろう。
当てつけに元勝院様の墓前を血で穢してな。
着物を着ておるのは冥土の土産のつもりじゃろう。全く、下らん。
又右衛門が扇子で思い切り野島を叩く。景気の良い音がする。宗助が顔を背ける。
文吾は哀れむように、十四郎は敵意を込めて又右衛門を見つめる。
又右衛門はなおも野島への不満を呟いていたが、突然がらっと明るい顔になる。
又右衛門 しかしまあ、事前に野島を見つけられたのは幸運と言うべきじゃな。
文吾 へ? どういうことです。
又右衛門 もうすぐこの寺に殿が参られることになっておるのだ。無論、内密にな。
場所 光流寺墓地。舞台遠景は一幕と同様。舞台中央奥には石の柵に囲われた、七尺(二・一メートル)ほどの墓が建っている。墓は「元勝院光軍宗安居士」の文字が刻まれている。墓の両端には石灯籠が建っている。墓と同時期に作られたらしくあちこちコケがついている。
幕が開くとひぐらしの鳴き声が聞こえる。傾いた橙色の光を浴びて、豪奢な着物を着た武士が舞台中央の墓の前で地面に突っ伏している。男の腕には短刀が握られている。上手側で呆然と立ちつくす十四郎たち。
文吾 な、なんだ? あれは。
宗助が急いで切腹している男に近寄り、触れないようにして顔や腹を覗き込む。
諦めたように首を振る。
宗助 駄目だ。もう死んでる。
文吾 な? え(狼狽している。縋るように宗助と十四郎を交互に見る)
十四郎 何故こんなところに。
十四郎も死骸に近付く。文吾もその後から怖ず怖ずと付いてくる。
文吾 (足下に目をやり)ひどいな。血の海だ。
十四郎 (死骸を矯めつ眇めつして)脇腹から真一文字にかっ切っている。
文吾 しかし、一体誰だ。この武士は。家中にこのようなものがいたか?
宗助 俺は………知らないな。このような男は。十四郎、お前は(十四郎に視線を送る)
十四郎 (首を振る)、初めて見る顔だ。
文吾 何者だ。こやつ。何故このような場所で腹を?
宗助 俺が知るか。だが、見たところ、浪人ではないな。身なりは派手だし月代も剃ってある。
文吾 なら、江戸詰めの者か。
十四郎 落ち着け、まだ家中の者とも分からぬのだ。それに、この男が誰であれ、事はそう簡単には済みそうもない。
文吾 どういうことだ。
十四郎 ここがどこか、知っているだろう。慈眼院様、つまり伊那川藩藩祖の墓前だ。歴代の藩侯もここに眠られている。
文吾 バチ当たりな。
十四郎 バチだけで済めばよいがな。死骸を歴代藩侯の墓前に捨てるなど、下手すれば藩全体まで事は広がる。
文吾 なんてことだ。
宗助が腕組みして死骸を眺める。死骸の袖を手に取り、着物の生地を凝視する。
十四郎 どうした、宗助。
宗助 この男が着ている着物、やけに豪華だな。
文吾 確かに。腹を切るにしては派手すぎる。腹を切るなら浅黄色と決まっているのにな。
死装束の持ち合わせがなかったから、こいつで間に合わせた………訳ないか。
(着物に触りながら)この着物、絹だな。
こいつを売れば死装束の二、三枚は楽に買える。
見たところ貧にやつれた、という風体でもない。肉付きはいいな。
ふん、髪の毛が濡れておる。水でも浴びたか?
(死骸の肩に触れて)あれ? 血溜まりに何か浮いてるぞ。
文吾が死骸の足下から何かを摘み上げ、目の前に近づける。十四郎と宗助も肩越しにそれを見つめる。
文吾 これは、獣の毛だな。一体何の毛だ?
宗助 どうせ野良猫か何かだろ。捨てろ、そんなもの。
十四郎 俺にも見せてくれ。
文吾から毛を受け取る。
(日にかざして)血に汚れているが、茶色いな、この毛は。
文吾も覗き込む。宗助は興味無さそうに死骸の周りを調べる。
死骸の襟の辺りを手探りで調べていると、はっとした顔になる。
文吾 そうだな。(宗助の方を向いて)ん、どうした宗助?
宗助 (振り向いて)この着物、どこかで見たことがあると思ったら、見ろ。
宗助が死骸の上体を起きあがらせ、着物の胸の紋所を指さす。
文吾 桔梗? 藩の家紋と同じではないか。
宗助 前に鷹狩りの帰りにこれと同じものをお召しになっていたのを見たことがある。
遠くから見ただけだからお顔までは見えなんだが、この着物は覚えている。
これは、殿のお召し物だ。
文吾 (混乱した様子で)何を言っているんだ。つまり、それは。
宗助 この死骸は。
十四郎 ………殿か?
三人は呆然と死骸を見つめる。ひぐらしの鳴き声が一際大きく鳴り響く。
文吾 (前進を振るわせて)馬鹿な、宗助、馬鹿なことを言うな。これが殿の筈がないだろう。
宗助 しかし、この着物の紋といい、柄といい確かに。
文吾 着物一枚で何が分かる。こんなもの、そこらの古着屋に腐るほど売っている。
派手なだけの、品のない、悪趣味な着物だ。
殿のお召し物であるはずがない。目が腐ったのか。宗助。
宗助 俺はただ思ったことをいっただけだ。それが悪いというのか。
文吾 ああ、悪い。貴様、言うに事欠いてこの男が殿などと。無礼にも程がある。
宗助 無礼は承知の上だ。だがな、この着物は確かに殿のものだ。
文吾 ふざけるな。これは侮辱だ。貴様も今すぐ腹を切れ。
文吾が刀に手をかける。宗助がはっとなって後ろに下がる。
十四郎 (文吾と宗助の間に入って)落ち着け。文吾、宗助もだ。
文吾 (十四郎を見て)しかしだな。宗助の奴、殿を侮辱して。
十四郎 さっきも言っただろう。まだ誰か分からぬと。
殿の着物を着ているからと、殿と決まったわけではない。
第一、文吾、宗助。お前ら殿のお顔を一度でも見たことがあるか?
文吾 (興奮が冷めた様子で)いや、ない。
宗助 俺もだ。十四郎、お前は。
十四郎 残念だが、俺も見たことがない。そうだろう?
俺たちのような身分の低い者が殿のお顔を拝見する機会など、めったにない。
死骸が殿というのはまだ仮の話だ。仮の話で激高してどうする。落ち着け。
文吾 (肩を落として)済まぬ。十四郎。
十四郎 謝るならば宗助にだろう。
文吾 すまん。宗助。許してくれ。
宗助 ああ。
十四郎 とりあえず、このままここで話していても仕方がない。寺のものと番屋のものに知らせよう。
宗助 ちょっと待て、十四郎。それはまずい。
十四郎 何故だ。
宗助 さっきの話を蒸し返すわけではないが、この武士が着ているのは確かに殿のものだ。
それでなくとも元勝院様の御霊前で切腹など、尋常ではない。
事の次第がはっきりするまで表沙汰にするのはまずい。
文吾 ならどうする。放って帰る訳にもいかんだろう。
十四郎 そういえば、井川様のお屋敷はこの近くだったな。もう城から戻られている頃だろう。
文吾、済まないがひとっ走りしてお呼びして来てくれないか。
文吾 それは構わないが、あの爺様で大丈夫か。
宗助 近々町奉行の役を下がるという話もあるらしいな。
十四郎 ほかの方を呼ぶには屋敷が遠すぎる。
いつ墓参りの者が来てもおかしくない以上、仕方あるまい。
それに井川様ならば、殿のお顔もご存じの筈だ。
少なくともこの男が殿か否か、は分かる。
文吾 なるほど。
十四郎 頼むぞ。事は内密に。なるべく供の方にもご遠慮して頂くこと。いいな。
文吾 ああ、行ってくる。
文吾が上手側に走って退場。
宗助 どうする。
十四郎 (死骸を見下ろして)見張っておくしかあるまい。下手に動かすのもまずい。
宗助 戸板か何か持って来るか?
十四郎 誰かに見つかると面倒だ。とにかく誰か来たら体で死骸を隠す。それでいいな。
宗助 ああ。
十四郎と宗助は切腹した男の前に立つ。落ち着かない様子で文吾の帰りを待つ。
ひぐらしの鳴き声。十四郎は死骸を調べている。
宗助 (あさっての方を向いて)なあ、十四郎。
十四郎 (宗助に背を向けて)どうした。
宗助 雪江殿の様子は、どうなんだ?
十四郎の動きが止まる。
宗助 (十四郎に背を向けたまま)あの頃は、家中の若い者は皆、雪江殿に憧れておった。文吾なんか大分熱が高かったな。雪江殿の親父の碁好きにかこつけて、碁石抱えて日参していたくらいだ。噂ではご家老の馬鹿息子も雪江殿に求婚していたという話だ。中には誰とひっつくか高楼亭の夕飯賭けていた奴もいたくらいだ。それがどうだ。蓋を開けてみれば、雪江殿を射止めたのはお前だ。それまで、加賀十四郎のかの字も出なかったというのにな。知っているか? そのせいでお前の評判はかなり悪かったぞ。陰でこそこそおなごに手を出す姑息な奴とかいってな。
十四郎 宗助。
宗助 別に責めている訳でもないし、今更謝ってもらおうとも思わん。けどな、多かれ少なかれ皆、雪江殿のことを心に留めていたのは事実だ。文吾が嫁を貰わないのも、多分そのせいだ。あいつは絶対に口には出さんだろうがな。武士が女房のことをべらべら喋るものではない、という奴もいるだろう。しかしな。もう少し教えてくれてもいいと思うぞ。
十四郎 済まない、宗助。
宗助 謝らなくてもいい、と言ったろう。効きたいのは雪江殿の容態だ。温泉は効くからな。秋にはこっちに戻ってこられるんだろう?
十四郎 (首を振る)いや、もう、こっちには戻ってこられない。
宗助 (驚いて振り返る)どういうことだ? 本当に、もう駄目なのか。おい。(十四郎に取りすがる)医者には診せたんだろ。何故黙っていた? そもそも、そんな重い病、今まで気づかなかったのか。十四郎!
十四郎 (辛そうに俯いて)助けられるものならば俺とてなんとしてでも助けてやりたかった。雪江には、あいつには幸せがあった。金も、家柄も、望めばもっと上があった。それをたかが十石の貧しい家に嫁いだあいつにしてやれたことなど、何もなかった。報いてやれたことなど、何もなかった。もっと禄高のある家に嫁いでいればあいつは………。
宗助 止めろ。雪江殿の病はお前のせいではないだろう。(十四郎から離れる)。早く迎えに行ってやれ。あそこは年寄りばかりだ。一人では心細かろう。
十四郎 ああ。来月には、迎えに行けると思う。
宗助 (十四郎から離れる)そうだな。文吾ではないが、御前試合で勝てば、雪江殿の病も吹き飛ぶよ。病は気からというからな。
上手から人の駆けてくる音。
文吾 (舞台外から)こちらです。お急ぎ下さい。
又右衛門 (同じく舞台外から)分かっておる。そう急かすな。
十四郎 (上手を向いて)お着きになられたか。
宗助 やれやれ、やっとご老体のお出ましか。
文吾の先導で、井川又右衛門が現れる。
小柄で髪は真っ白、手には扇子を持ち、神経質そうに顔に風を送っている。
城から戻ったばかりで紋付きに袴姿。
又右衛門 (居丈高に)火急の用件ときいたが一体何事じゃ。
供まで遠慮せいとは、余程のことなのじゃろうな?
宗助 は、左様でございます。
又右衛門 わしは忙しいんじゃ。近頃、押し込みにすりにかっぱらい、盗人が暴れ回っておる。
おまけに盗んだものといえば一文銭二枚に握り飯に、草履や布団の綿、
風呂桶まで盗んだ奴までおる。おまけに大雨に飢饉、踏んだり蹴ったりじゃ。
十四郎 申し訳ございませぬ。ですが、手前どもには到底身に余る事態。
是非ともお奉行のお力添えをお願いしたく、このようにお越し願いました次第です。
又右衛門 ふむ。まあ、そこまで言うならば仕方あるまい。して、いかなる用件じゃ。
宗助 こちらです。
宗助と十四郎が下手側に下がる。二人の陰に隠れていた死骸が再び現れる。
又右衛門 (死骸を指さし)な、これは。一体、なんとしたことじゃ。
十四郎 手前どもが訪れたときには既にこのような仕儀になっておりました。
宗助 家中のものかと思いましたが、我ら三人、知らぬ顔故、困惑しておりました。
十四郎 本来ならば井川様のお手を煩わせる必要もないことですが、何せ腹切った場所が場所故、
内密に済ませるべきと判断し、こうしてお越し頂いた次第にございます。
又右衛門 (咳払いして)ふむ。まあよい。
又右衛門は地面の血の海を踏まぬように気をつけて死骸の側にしゃがみ込む。
死骸を矯めつ眇めつ調べる。扇子で死骸の顔を持ち上げると、もう片方の手を顎にやる。
ふむ、と何度も唸る。十四郎たちは一歩下がってその様子を不安げに見ている。
文吾 (又右衛門の背中から覗き込んで)いかがですか。お奉行。もしや、殿なのでございましょうか。
又右衛門 (突然振り向いて)無礼者! 貴様それでも伊那川藩士か!
文吾 (びっくりして尻餅をつく。そして平伏しながら)申し訳ございませぬ。
又右衛門 (立ち上がり)この不忠者どもめ。こやつが殿に見えるのか、馬鹿者が。
宗助 すると、この男は殿ではないと。
又右衛門 (大喝して)当たり前だ! 何故殿が切腹せねばならぬのだ!
十四郎 (一歩踏み出して)お教え下さい。殿でないとするならば、この武士は一体何者なのですか?
又右衛門 貴様らが知らぬのも無理はあるまい。新参者で、国元に帰ってきたのは今度が初めてだからな。
文吾 当家の者なのですか?
又右衛門 先年、江戸にて殿が百石にて召し抱えた男だ。名は野島半次郎。間違いない。
文吾 (宗助に耳打ちして)思い出した。あいつだ。前に噂になったろう。馬の世話で百石取った奴だ。
宗助 (声をひそめて)ああ、あいつか。東軍流馬術の免許皆伝とかいう。
文吾 (小声で)本人はそう言っておるそうだが、なに実際は馬に人参食わせるのが精一杯という奴だ。
宗助 (声をひそめて)そんな奴が何故召し抱えになった? しかも百石だと。俺の家の四倍の禄高だぞ。
文吾 (やはり小声で)俺の家なら五倍だ。なんでも、殿に散々ゴマすった挙げ句、
己ならば「蒼月」を天下一の名馬に仕立ててみせると、おおぼら吹いたらしい。
宗助 (野島に視線を移す)ふざけた男だ。
又右衛門 (文吾たちを睨み付け)お主ら、そこで何をこそこそ話しておる。
文吾 (立ち上がり、取り繕うように)いえ、何でもございませぬ。
そうそう、ところで、その野島殿が着ておる着物、いささか派手ではありませぬか?
いかに百石取りと言えど、少々不相応のようにお見受けいたします。
この宗助などもそれで野島殿を殿ではないかなどと、寝ぼけたことを申した次第でして。
お奉行は何か心当たりはございませぬでしょうか?
又右衛門 うむ。それよ。
十四郎 ご存じなのですか?
又右衛門 こやつ、国元に来たその日に、殿のお供で遠乗りに出かけたのじゃ。
殿のご愛馬「蒼月」に乗ってな。そこでこやつ凄まじい速さで駆けていったのじゃ。
誰も追いつけぬほどにな。
文吾 (宗助に耳打ちして)きっと馬に振り回されたんだ。(含み笑い)
又右衛門が文吾を睨み付ける。文吾、たちまち神妙な面持ちで何度も頷く。
又右衛門 (咳払いして)それを殿がいたく、お気に召したらしくてな。
ご自身のお召し物をこやつに下げ渡したのよ。
十四郎 つまり、この野島殿の着ているのは元々殿のお召し物、ということですか。
又右衛門 全くなんという不届き者じゃ! 切角殿から賜った着物を血で汚すとは!
しかも、元勝院様の前で腹を切るなど。これだから新参者は。
十四郎 その野島殿が腹を切った理由ですが、井川様は何か思い当たる節はございませぬか。
何か武士にあるまじき恥辱を被ったとか。
又右衛門 知るか! どうせ己の不始末を恥じてのことじゃろう。
十四郎 不始末? 野島殿はどのような失態を犯したのでしょうか。
又右衛門が不愉快そうに顔をしかめる。そして野島の死骸を一周した後、扇子で野島の額を叩く。
又右衛門 こやつ、「蒼月」を、殿のご愛馬を傷つけたのよ。
己の腕と、殿のご寵愛に慢心しよって。
慣らしに「蒼月」で街道を駆けておった時、草むらから出てきた百姓を引っかけよった。
哀れなものよ。そのせいで「蒼月」はひっくり返ってしまった。
幸い怪我はたいしたことはなかったが、殿はいたくご立腹でな。
沙汰のあるまで謹慎ということになった。
十四郎 それで、殿はいかようにお沙汰を。
又右衛門 わしがそこまで知る訳無かろう。
しかしまあ、殿のご気性から考えれば永の暇、いや切腹ということも考えられる。
その前に己の始末をつけたのじゃろう。
当てつけに元勝院様の墓前を血で穢してな。
着物を着ておるのは冥土の土産のつもりじゃろう。全く、下らん。
又右衛門が扇子で思い切り野島を叩く。景気の良い音がする。宗助が顔を背ける。
文吾は哀れむように、十四郎は敵意を込めて又右衛門を見つめる。
又右衛門はなおも野島への不満を呟いていたが、突然がらっと明るい顔になる。
又右衛門 しかしまあ、事前に野島を見つけられたのは幸運と言うべきじゃな。
文吾 へ? どういうことです。
又右衛門 もうすぐこの寺に殿が参られることになっておるのだ。無論、内密にな。
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