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本編
第22話 悪役は語られる真実に混乱する
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「えっと・・」と困惑するエルメに「順を追って説明する」と言い、マリオンは話し始める。
「まず君がアリス嬢と組んで、離婚するという誓約書にサインさせようとした所からだな」
「はっ!?そんな前からですか!?」
「クックッ・・知らなかっただろう?まず君が私に飲ませたと思っている惚れ薬。あれはそんなものではないぞ。何故なら、アリス嬢は惚れ薬ではなく別の薬を入れたからな」
「はっ!?何でアリス様が?えっ?何で・・・」
驚きの言葉しか出てこないエルメの様子にマリオンは楽しそうな表情を浮かべる。そして「アリス嬢は、君と組む前に私と手を組んでいたんだ」と事の経緯を語りだした。
マリオンとアリスが手を組んだのは、疫病が流行る町で終息のため時間を共にしていた時だ。エルメがマリオンの元から逃げ出すことも想定した彼が、協力者としてアリスに話を持ちかけた。
『エルメが皇太子妃としての重責に耐えられず、苦しまないようにしてやりたい。君は彼女と合いそうだ。ぜひ私と一緒にエルメを支えてくれ』
そんな表向きの勧誘に、アリスはまんまとのせられた。そしてマリオンを嵌める作戦も、アリスから全てマリオン本人に筒抜けだった。帰還した二人の間に流れていた冷たい空気も、全ては二人の協力関係を悟られない為のカモフラージュだった。
エルメの元気がなかった時、心配して来てきてくれたアリスがひたすら『ごめんなさい』と謝罪の言葉を繰り返したことがあった。あのセリフはエルメに嘘をついていた事への謝罪だったのだ。
そして、惚れ薬の謎。マリオンの協力者であるアリスは当然、カップに惚れ薬を入れずに、マリオンから渡された別の薬を入れた。惚れ薬のかわりにマリオンが飲んだもの・・それは真実薬だ。その薬はその名の通り飲んだ者の口から真実しか語ることができなくなる薬だ。アリスは一滴入れた為、その効果は五分。
「何もカップに入れないことも考えたが、アリス嬢が“入れてないものを入れたなどと嘘はつけない”と言ってな。かわりに真実薬を入れたわけだ」
「えっと・・・それじゃあ、あの時のマリオン様の言葉は・・」
『君に身を引かれてもらっては、困るな。私はエルメを愛しているのだから・・・』
あの日、マリオンの口から紡がれた愛の告白を思い出したエルメは、顔を赤くすると、恥ずかしさから視線を落とす。そして「あれ?でも薬の効果は五分だって・・それだと途中で切れ・・たはず・・・」と言いながら、パッとマリオンを見上げた。それにマリオンは「どこからが、私の言葉か知りたいか?」と言って、聞き覚えのあるセリフを口にする。
「番の契約は、まだだったな。いま結んでしまおうか。そうすれば、君はもう私から離れられない」
エルメは「いやぁ、もうやめてぇぇ」と叫び、ゆでダコのような顔を手で覆った。そして顔を見せぬまま、質問をする。
「それで・・なぜ番の契約ではなく、真実の契約を結んだのですか?それに真実の契約とは、何なのですか?」
「番の契約を結ばなかったのは、君を契約なんかで縛りたくなかったからだ。そんな契約などなくとも、私は君を夢中にさせる自信もあったからな・・・・それより、そろそろ顔を上げたらどうだ。まるで私が虐めてるみたいだろ」
少しの間沈黙が流れた後、エルメはゆっくりと顔を上げた。
「どんだけ自信過剰なんですか。それで真実の契約とは?」
エルメの問いに「それは・・」と言葉を続けるマリオン。真実の契約とは、それを結んだ者同士、相手がある合図をすると、嘘がつけなくなるものだ。
「それじゃあ、私たちはお互いに嘘をつけないということですか?」
「そういうことになるな。ただ、相手が合図をした時だけだ」
その合図とやらを聞き出そうとするエルメだったが、マリオンは決して口を割らない。そしてエルメの追求をかわすため、マリオンは話題を変える。
「まず君がアリス嬢と組んで、離婚するという誓約書にサインさせようとした所からだな」
「はっ!?そんな前からですか!?」
「クックッ・・知らなかっただろう?まず君が私に飲ませたと思っている惚れ薬。あれはそんなものではないぞ。何故なら、アリス嬢は惚れ薬ではなく別の薬を入れたからな」
「はっ!?何でアリス様が?えっ?何で・・・」
驚きの言葉しか出てこないエルメの様子にマリオンは楽しそうな表情を浮かべる。そして「アリス嬢は、君と組む前に私と手を組んでいたんだ」と事の経緯を語りだした。
マリオンとアリスが手を組んだのは、疫病が流行る町で終息のため時間を共にしていた時だ。エルメがマリオンの元から逃げ出すことも想定した彼が、協力者としてアリスに話を持ちかけた。
『エルメが皇太子妃としての重責に耐えられず、苦しまないようにしてやりたい。君は彼女と合いそうだ。ぜひ私と一緒にエルメを支えてくれ』
そんな表向きの勧誘に、アリスはまんまとのせられた。そしてマリオンを嵌める作戦も、アリスから全てマリオン本人に筒抜けだった。帰還した二人の間に流れていた冷たい空気も、全ては二人の協力関係を悟られない為のカモフラージュだった。
エルメの元気がなかった時、心配して来てきてくれたアリスがひたすら『ごめんなさい』と謝罪の言葉を繰り返したことがあった。あのセリフはエルメに嘘をついていた事への謝罪だったのだ。
そして、惚れ薬の謎。マリオンの協力者であるアリスは当然、カップに惚れ薬を入れずに、マリオンから渡された別の薬を入れた。惚れ薬のかわりにマリオンが飲んだもの・・それは真実薬だ。その薬はその名の通り飲んだ者の口から真実しか語ることができなくなる薬だ。アリスは一滴入れた為、その効果は五分。
「何もカップに入れないことも考えたが、アリス嬢が“入れてないものを入れたなどと嘘はつけない”と言ってな。かわりに真実薬を入れたわけだ」
「えっと・・・それじゃあ、あの時のマリオン様の言葉は・・」
『君に身を引かれてもらっては、困るな。私はエルメを愛しているのだから・・・』
あの日、マリオンの口から紡がれた愛の告白を思い出したエルメは、顔を赤くすると、恥ずかしさから視線を落とす。そして「あれ?でも薬の効果は五分だって・・それだと途中で切れ・・たはず・・・」と言いながら、パッとマリオンを見上げた。それにマリオンは「どこからが、私の言葉か知りたいか?」と言って、聞き覚えのあるセリフを口にする。
「番の契約は、まだだったな。いま結んでしまおうか。そうすれば、君はもう私から離れられない」
エルメは「いやぁ、もうやめてぇぇ」と叫び、ゆでダコのような顔を手で覆った。そして顔を見せぬまま、質問をする。
「それで・・なぜ番の契約ではなく、真実の契約を結んだのですか?それに真実の契約とは、何なのですか?」
「番の契約を結ばなかったのは、君を契約なんかで縛りたくなかったからだ。そんな契約などなくとも、私は君を夢中にさせる自信もあったからな・・・・それより、そろそろ顔を上げたらどうだ。まるで私が虐めてるみたいだろ」
少しの間沈黙が流れた後、エルメはゆっくりと顔を上げた。
「どんだけ自信過剰なんですか。それで真実の契約とは?」
エルメの問いに「それは・・」と言葉を続けるマリオン。真実の契約とは、それを結んだ者同士、相手がある合図をすると、嘘がつけなくなるものだ。
「それじゃあ、私たちはお互いに嘘をつけないということですか?」
「そういうことになるな。ただ、相手が合図をした時だけだ」
その合図とやらを聞き出そうとするエルメだったが、マリオンは決して口を割らない。そしてエルメの追求をかわすため、マリオンは話題を変える。
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