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後日談 リーナストーリー ホワイトエンド - Ⅴ
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そしてお茶会に戻ってきたリーナ。休憩に行ったはずの彼女の横にセドリックがいることにビクトリアは驚きもせず、満足そうに笑みを浮かべる。
しかし突然、現れたセドリックに周囲は驚き、色めき立つ。セドリックはそんな周囲の雰囲気を気にする様子もなく、当然のようにリーナをエスコートし、ビクトリアの元へ向かった。
しかし、その途中でふと足を止めた彼の口から思わぬセリフが・・
「父上・・」
(へえ、お父さんがいるの・・挨拶が必要・・へっ?お父さん!?彼のお父さんといえば、こっ、国王!?)
突然の重大局面が訪れたことにようやく気付いたリーナが彼の目線を追うと、そこには口髭を生やし、ブラウンの髪を後ろに束ねた男性がにこやかに立っていた。
周りの反応を見れば、この場の誰もがその男性の正体をセドリックの口から漏れるまで、知らなかったことが分かる。
ただ一人を除いて・・・
「あーあ、見つかってしまったぞ。ビクトリア嬢、今日、息子は来ないはずじゃなかったかな?」
「あら、陛下。私は“招待してない”と申し上げただけで、殿下が押し掛けて来ないとは一言も言っておりませんわ」
ビクトリアの言葉を聞きながら、国王はカツラと付け髭を取る。すると、そこにはセドリックと似た父親の顔があった。まるでイタズラがバレてしまった子供のように、笑っている。
「なぜ父上が?それに、なぜ変装なんてしているんですか!」
セドリックの問いに答えることなく、視線をリーナへ向けた国王が口を開く。
「君がリーベルト嬢かな?」
突然のことにリーナは慌てて居住まいを正し「!!はい!」と答える。すると国王はニコニコと柔和な笑顔を浮かべたままリーナをしばらく見つめた後、全く意味の分からないひとり言を言った。
「うん!問題ないよ」
何がいいのか、キツネにつままれたような気分でリーナは、国王の顔を凝視する。きっと淑女レッスン中なら“目上の方の顔をジッと見ない!”とお叱りが飛んできそうだったが、そんなことすっ飛んでいた。
そんなリーナを余所に国王は、いつの間にか後ろに控えていた側近らしき男性に「あれを」と一言言った。その言葉を待っていたかのように側近は、一枚の書類とペンを差し出すと、国王はサラサラとなにか書き始めた。
「はい!これで決まり!セドリック、決まりは守りなさいよ」
そう言葉と書類を残して、国王は去って行った。
突然の出来事に静まり返る室内。そこに、辺りを包む雰囲気にそぐわないビクトリアの「おめでとうございます」という祝福の言葉が響き渡る。
???
誰もが頭の上に疑問符を浮かべる中、セドリックだけが「ありがとう」と言葉を返した。
「あの・・どういうことでしょうか。お二人で盛り上がられてるところ、大変申し訳ないのですが・・・」
リーナが恐る恐る疑問を投げかけると、ビクトリアから信じられないセリフを言われる。
「リーナ、貴女は晴れて彼の婚約者となったのよ」
(・・はい?婚約者って、言った?こんやくしゃ、こんにゃく車、混濁者・・あ~、私の意識が混濁しそうよ。間違いなくあの“婚約者”よねぇ)
リーナが困惑の表情を浮かべる中、リーナの手をセドリックから奪い取ったビクトリアが、満足そうな笑顔を向ける。
「我が公爵家がみっちり叩き込んだんですから、もう誰もが認める令嬢よ。どこに出しても恥ずかしくないわ。貴女を殿下の婚約者として批判し笑う者がいれば、それは我が公爵家への侮辱。貴女の後ろ盾として、きっちり対処するわ」
(はっ?後ろ盾?いつそんな話になったの?どういうこと?相手王子よ。そんな簡単に!?国王様は「うん、問題ないよ」とかめっちゃ軽かったけど・・・義理の娘なのに・・未来の王妃なのに、そんなんでいいの!?)
リーナが隣に立つセドリックへ救いの眼差しを向けると、彼からシーッと唇に指を当て「静かに」と、声にならない声を送られた。
自分の置かれた状況に全く付いていけてないリーナを置き去りにして、ビクトリアは更に言葉を続ける。
「もう!焦れったいから、貴女を周りから固めることにしたのよ。誰が見ても手遅れなのに、リーナったら“どうしたら殿下の鼻をあかせるのか”とか、ズレてる悩みを相談してくるし、二人して私を振り回すのもいい加減にしてほしいわ」
(えっ・・私、ビクトリアのこと振り回してたの?相談しに来いって言うから、真に受けて話したのに?)
リーナは、ただただ目の前で悠然と語る公爵令嬢を呆然と見つめていた。
そして、まだビクトリアの独壇場は続く。
「殿下、貴方は彼女に執着しすぎです。気持ちばかり焦って、どうせ身体にご自身を刻みつけようなどと浅はかな考えを持ったんでしょう。もっと彼女の気持ちを考えてあげなさい。
それからリーナ!貴女は彼の身勝手さに少し拗ねていただけ。それをウダウダと・・もう子供ではないのですから、ご自分の気持ちくらい自分で気付きなさい。
もう・・・やっと、まとまったわね。殿下、これで彼女は貴方から逃げられませんわよ」
(逃げるも何も彼の気持ちを受け入れたばかりだし、逃げる気なんてないのに・・それに自分の気持ちにもちゃ~んと気付いたから、こうしてセドリックと一緒にいるのに・・・)
結局、ビクトリアに計画的にセドリックへと売られたことに気付いたリーナは思う。
(高位貴族の力、ご利用は計画的に・・・)
しかし突然、現れたセドリックに周囲は驚き、色めき立つ。セドリックはそんな周囲の雰囲気を気にする様子もなく、当然のようにリーナをエスコートし、ビクトリアの元へ向かった。
しかし、その途中でふと足を止めた彼の口から思わぬセリフが・・
「父上・・」
(へえ、お父さんがいるの・・挨拶が必要・・へっ?お父さん!?彼のお父さんといえば、こっ、国王!?)
突然の重大局面が訪れたことにようやく気付いたリーナが彼の目線を追うと、そこには口髭を生やし、ブラウンの髪を後ろに束ねた男性がにこやかに立っていた。
周りの反応を見れば、この場の誰もがその男性の正体をセドリックの口から漏れるまで、知らなかったことが分かる。
ただ一人を除いて・・・
「あーあ、見つかってしまったぞ。ビクトリア嬢、今日、息子は来ないはずじゃなかったかな?」
「あら、陛下。私は“招待してない”と申し上げただけで、殿下が押し掛けて来ないとは一言も言っておりませんわ」
ビクトリアの言葉を聞きながら、国王はカツラと付け髭を取る。すると、そこにはセドリックと似た父親の顔があった。まるでイタズラがバレてしまった子供のように、笑っている。
「なぜ父上が?それに、なぜ変装なんてしているんですか!」
セドリックの問いに答えることなく、視線をリーナへ向けた国王が口を開く。
「君がリーベルト嬢かな?」
突然のことにリーナは慌てて居住まいを正し「!!はい!」と答える。すると国王はニコニコと柔和な笑顔を浮かべたままリーナをしばらく見つめた後、全く意味の分からないひとり言を言った。
「うん!問題ないよ」
何がいいのか、キツネにつままれたような気分でリーナは、国王の顔を凝視する。きっと淑女レッスン中なら“目上の方の顔をジッと見ない!”とお叱りが飛んできそうだったが、そんなことすっ飛んでいた。
そんなリーナを余所に国王は、いつの間にか後ろに控えていた側近らしき男性に「あれを」と一言言った。その言葉を待っていたかのように側近は、一枚の書類とペンを差し出すと、国王はサラサラとなにか書き始めた。
「はい!これで決まり!セドリック、決まりは守りなさいよ」
そう言葉と書類を残して、国王は去って行った。
突然の出来事に静まり返る室内。そこに、辺りを包む雰囲気にそぐわないビクトリアの「おめでとうございます」という祝福の言葉が響き渡る。
???
誰もが頭の上に疑問符を浮かべる中、セドリックだけが「ありがとう」と言葉を返した。
「あの・・どういうことでしょうか。お二人で盛り上がられてるところ、大変申し訳ないのですが・・・」
リーナが恐る恐る疑問を投げかけると、ビクトリアから信じられないセリフを言われる。
「リーナ、貴女は晴れて彼の婚約者となったのよ」
(・・はい?婚約者って、言った?こんやくしゃ、こんにゃく車、混濁者・・あ~、私の意識が混濁しそうよ。間違いなくあの“婚約者”よねぇ)
リーナが困惑の表情を浮かべる中、リーナの手をセドリックから奪い取ったビクトリアが、満足そうな笑顔を向ける。
「我が公爵家がみっちり叩き込んだんですから、もう誰もが認める令嬢よ。どこに出しても恥ずかしくないわ。貴女を殿下の婚約者として批判し笑う者がいれば、それは我が公爵家への侮辱。貴女の後ろ盾として、きっちり対処するわ」
(はっ?後ろ盾?いつそんな話になったの?どういうこと?相手王子よ。そんな簡単に!?国王様は「うん、問題ないよ」とかめっちゃ軽かったけど・・・義理の娘なのに・・未来の王妃なのに、そんなんでいいの!?)
リーナが隣に立つセドリックへ救いの眼差しを向けると、彼からシーッと唇に指を当て「静かに」と、声にならない声を送られた。
自分の置かれた状況に全く付いていけてないリーナを置き去りにして、ビクトリアは更に言葉を続ける。
「もう!焦れったいから、貴女を周りから固めることにしたのよ。誰が見ても手遅れなのに、リーナったら“どうしたら殿下の鼻をあかせるのか”とか、ズレてる悩みを相談してくるし、二人して私を振り回すのもいい加減にしてほしいわ」
(えっ・・私、ビクトリアのこと振り回してたの?相談しに来いって言うから、真に受けて話したのに?)
リーナは、ただただ目の前で悠然と語る公爵令嬢を呆然と見つめていた。
そして、まだビクトリアの独壇場は続く。
「殿下、貴方は彼女に執着しすぎです。気持ちばかり焦って、どうせ身体にご自身を刻みつけようなどと浅はかな考えを持ったんでしょう。もっと彼女の気持ちを考えてあげなさい。
それからリーナ!貴女は彼の身勝手さに少し拗ねていただけ。それをウダウダと・・もう子供ではないのですから、ご自分の気持ちくらい自分で気付きなさい。
もう・・・やっと、まとまったわね。殿下、これで彼女は貴方から逃げられませんわよ」
(逃げるも何も彼の気持ちを受け入れたばかりだし、逃げる気なんてないのに・・それに自分の気持ちにもちゃ~んと気付いたから、こうしてセドリックと一緒にいるのに・・・)
結局、ビクトリアに計画的にセドリックへと売られたことに気付いたリーナは思う。
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