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後日談 リーナストーリー ホワイトエンド - Ⅱ

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それからというもの、リーナはビクトリアの力で磨かれることになる。彼女はセドリックに邪魔されないよう、学園ではリーナを取り巻きに守らせ、彼が近付けないようにリーナをうまく誘導していた。あれ以来、リーナの視界にセドリックが入ることはない。

(取り巻きたち、すごく有能なんだけど・・実はセドリックにGPSでも付けてるんじゃないの?)

そして学園が終われば、リーナは公爵邸へ連れて行かれ、そこでの合宿となった。まさしくリーナとビクトリアは寝食を共にし、共通の目標へと邁進ていたのだ。

ビクトリアと生活を共にしてみると、彼女が何事にも手を抜かない人間だったことを知る。身体のお手入れやマナー、ダンス等のレッスンなど、帰宅してからのほうが忙しかった。

(私からしたら、もう完璧に見えるのに凄い・・・私も見習わないとね)

リーナもビクトリアと同じメニューで挑むのだが、その差は惨めなものだった。

(ビクトリアにダメ出しの嵐もらったのも、頷けるわね。自分で言うのもなんだけど、ヒドイもんよ)

そんなビクトリアの手を借りながらリーナは、少しずつだが着実に生まれ変わっていった。

そしてある日、ビクトリアがリーナに提案する。

「お茶会を開くわよ」

ビクトリアの宣言にリーナは「はい、どうぞ・・・」と返す。するとリーナは、彼女からため息を送られた。

「リーナ・・これは貴女のために開くのよ」

「私のためですか?」

「そうよ!お茶会は、特訓の成果を見る場であり、最後のテストの場でもあるの。実践訓練も兼ねた社交をこなして、問題なければ私の手から晴れて卒業よ」

「なるほど」

「だから気合いを入れなさいよね」

(あれ?卒業はいいけど、その後はどうするの?ビクトリアから令嬢になりなさいとは言われたけど、“不安”と“令嬢”・・全くイコールじゃないんだけど・・・)

ビクトリアに見えている未来が何なのかリーナには欠片も分からなかった。


そして迎えたお茶会当日。

見違えるほど、美しくになったリーナ。ストロベリーブロンドの髪を緩く巻き、白からイエローベージュのグラデーションが見事なドレスを身にまとっている。昼の装いらしく、控えめで落ち着いたコーディネートだ。立ち姿も堂々たるもので、すっかり一人前の令嬢に見える。そこには、もうモブを目指していた日陰キャラの姿はない。

しかし、緊張しているのか少しだけ笑顔が硬い。そんな彼女を励ますように微笑みかけるビクトリア。

「今日、彼は呼んでないから、安心してちょうだい。いいこと?将来有望な男性もいるから、貴女の人脈を広げるのよ」

(いや~、緊張してるのはそこではないのよ・・・それに今“人脈広げろ”とかさり気な~くミッション増やされたわね)

そう思いながらも「はい」と一言だけ返したリーナもだった。

そうして始まったお茶会。リーナの想像を超える大掛かりで豪華なお茶会は、彼女の目を楽しませる。美味しそうで見た目も美しい料理もそうだが、何より令嬢の身につけているドレスがリーナの目を奪う。どれも美しく装飾が施され、生地も一目で上質なものだと分かった。

(はあ~、綺麗ねぇ。さすが華やかな社交界。ベタ恋では学園ばかりで、こんな場面はなかったから、眼福眼福!茶会でこれなら、舞踏会なんてどうなるのかしらね。それより・・・)

リーナは、密かに苦笑する。

(みんなの目が獲物を狩るライオンの目だわ・・・)

そうリーナが思うのも仕方ない。笑顔は絶やさないが、参加者たちの目が真剣なのだ。きっとまだ婚約者のいない者が、自分の相手を選び抜こうとしているのだろう。

リーナは、そんな周囲の人たちを観察して楽しもうと、決めたのだった。

ひと通り挨拶も済ませお茶会が進むと、皆気の合う人たちで談笑するようになる。

そしてリーナはというと、若干疲れが見えていた。笑顔を張り付けた表情を保つのは、想像以上に大変だった。頬の筋肉がいい加減疲れてきたリーナは、ビクトリアに少し休むと断りを入れ、少し一人になれるところを探す。

そして喧騒から離れ、誰もいない廊下を歩くリーナは、ふいに呼び止められた。

「リーナ・・」

振り返ると、見事なブロンドの髪を窓から差し込む光で輝かせ、深いグリーンの瞳をこちらへ向ける人影があった。

セドリックだった。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


影の薄かったセドリック、やっと登場です。
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