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第20話 ちょっと整理するので、お待ちいただけますか?
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最近、オルガの取り巻きの誹謗中傷は、リーナへの実害へと変わってきていた。教科書を捨てられる、迎えの馬車を勝手に帰らされるなど、様々だ。
しかしリーナはそれに屈することなく、今までどおり学園生活を送っていた。彼女の意地だった。弱ったところなど、見せてたまるかと、思っていた。そしてそんな彼女の想いが働きかけたのか、不思議な事が起こる。
それは廊下を歩いていたリーナの頭上から突然、水が降ってきた時に起こる。降ってきたそれが彼女をずぶ濡れにすることはなかった。何故なら、大量の水が頭上スレスレで重力へ逆らって横へ向かっていき、散ったのだ。
ザパァァッと水の音に驚き、見上げたリーナは目の前でモーセの十戒の海が割れるかの如く、左右に水が割れる様を目の当たりにした。その不思議な光景を見ている時、スカートのポケットがじんわり温かくなったことにリーナは気付く。恐る恐るポケットに手を入れて確認すると、そこには冬馬から貰った魔力のこもった石があった。
(もしかしてこの魔力が作用して助けてくれた?)
自分の身に起こった不思議な出来事にリーナが呆然と手の中の石を眺めていると、横から手首を掴む手が現れる。セドリックだ。
「待たせたな」
(いえ!待ってませんので、そのセリフは全くの間違いです!)
そう言いたかったが、最近ご無沙汰だった彼が突然姿を見せた事に不意をつかれ、声が出なかった。そして、そのまま手を引かれて歩き出す。リーナは、セドリックの手を振りほどくことが出来なかった。
(えーっと・・これはどういう状況かしら?)
しかしそれはレオナの登場によって、遮られる。
「リーナッ!」
心配そうな顔で走り寄ってくるレオナに、リーナは警戒する。この間まで嫉妬心丸出しだった彼女が、何事もなかったかのように振る舞うのに、違和感を抱かないほうがおかしい。
「大丈夫?」
「えーっと・・見てたの?」
「遠くで見えたから・・・」
リーナの胸のうちにある彼女への猜疑心が大きくなる。
(もしかして、レオナの仕業?どんな方法使ったか分からないけど、怪しく見えてくる)
そんな思考にセドリックの邪魔が入る。
「さあ、行こうか」
「どこへ行くんですか!?」
「リーナは、私が連れていきますので、殿下のお手を煩わせることはございません」
各々の主張が渋滞し、全く噛み合っていない。しかし、気にする様子のないセドリックは、リーナの手を掴む腕に力を入れると告げる。
「君を一番近くで守ると決めた」
「いえ、申し訳ないので、結構です」
「なるほど、そういうこと言うのか?」
そんなやり取りを目の前で見ていたレオナが、リーナの空いていた手を取ると、「行こう!」と引っ張る。まるで王子とレオナが、リーナを取り合っているかのような光景にリーナは居た堪れなくなる。
「とっ、とにかく大丈夫です!一人で戻れますからっ!」
リーナを腕を振りほどくと、一目散に駆け出した。
(とりあえず一度、状況を整理しよう。もうみんなして何なのよ~)
心の中で叫びながら、教室へと急ぐ。しかし教室へ戻れば、レオナが・・セドリックに絡まれた事で、また好奇の目が待っていることに気付く。それでは状況の整理どころではないと思ったリーナは、階段を上へと駆け上がった。行き着いた先の扉を開くと、そこは屋上だった。
ここなら誰もいないし、気付かれないはずだ。リーナは胸を撫で下ろすと、階段を駆け上がった事で乱れた息を深呼吸をして整える。
(レオナ・・あの子、何でセドリックから遠ざけようとしたんだろう。そんな事したら、彼から目をつけられそうなものなのに・・・それにセドリックよ。オルガが戻ってきて、私なんて放置してたじゃない。いきなり何なのよ)
『君を一番近くで守ると決めた』
リーナの脳裏についさっきセドリックに言われたセリフが蘇る。リーナは眉間にシワを寄せ、それを振り払うように頭を振った。
するとそこに「そんな顔は似合わないな」と声がした。いつもフイに現れるセドリックだ。声に驚き顔を上げたリーナは、足元がふらつくが、その身体は力強い腕に抱きかかえられる。リーナはそれを拒否しようと腕を伸ばすが、そのまま覆いかぶさるように抱きしめられる。
「やっと捕まえたぞ。さっきは邪魔が入ったが、もう離さない」
リーナの胸には、不安が押し寄せた。
しかしリーナはそれに屈することなく、今までどおり学園生活を送っていた。彼女の意地だった。弱ったところなど、見せてたまるかと、思っていた。そしてそんな彼女の想いが働きかけたのか、不思議な事が起こる。
それは廊下を歩いていたリーナの頭上から突然、水が降ってきた時に起こる。降ってきたそれが彼女をずぶ濡れにすることはなかった。何故なら、大量の水が頭上スレスレで重力へ逆らって横へ向かっていき、散ったのだ。
ザパァァッと水の音に驚き、見上げたリーナは目の前でモーセの十戒の海が割れるかの如く、左右に水が割れる様を目の当たりにした。その不思議な光景を見ている時、スカートのポケットがじんわり温かくなったことにリーナは気付く。恐る恐るポケットに手を入れて確認すると、そこには冬馬から貰った魔力のこもった石があった。
(もしかしてこの魔力が作用して助けてくれた?)
自分の身に起こった不思議な出来事にリーナが呆然と手の中の石を眺めていると、横から手首を掴む手が現れる。セドリックだ。
「待たせたな」
(いえ!待ってませんので、そのセリフは全くの間違いです!)
そう言いたかったが、最近ご無沙汰だった彼が突然姿を見せた事に不意をつかれ、声が出なかった。そして、そのまま手を引かれて歩き出す。リーナは、セドリックの手を振りほどくことが出来なかった。
(えーっと・・これはどういう状況かしら?)
しかしそれはレオナの登場によって、遮られる。
「リーナッ!」
心配そうな顔で走り寄ってくるレオナに、リーナは警戒する。この間まで嫉妬心丸出しだった彼女が、何事もなかったかのように振る舞うのに、違和感を抱かないほうがおかしい。
「大丈夫?」
「えーっと・・見てたの?」
「遠くで見えたから・・・」
リーナの胸のうちにある彼女への猜疑心が大きくなる。
(もしかして、レオナの仕業?どんな方法使ったか分からないけど、怪しく見えてくる)
そんな思考にセドリックの邪魔が入る。
「さあ、行こうか」
「どこへ行くんですか!?」
「リーナは、私が連れていきますので、殿下のお手を煩わせることはございません」
各々の主張が渋滞し、全く噛み合っていない。しかし、気にする様子のないセドリックは、リーナの手を掴む腕に力を入れると告げる。
「君を一番近くで守ると決めた」
「いえ、申し訳ないので、結構です」
「なるほど、そういうこと言うのか?」
そんなやり取りを目の前で見ていたレオナが、リーナの空いていた手を取ると、「行こう!」と引っ張る。まるで王子とレオナが、リーナを取り合っているかのような光景にリーナは居た堪れなくなる。
「とっ、とにかく大丈夫です!一人で戻れますからっ!」
リーナを腕を振りほどくと、一目散に駆け出した。
(とりあえず一度、状況を整理しよう。もうみんなして何なのよ~)
心の中で叫びながら、教室へと急ぐ。しかし教室へ戻れば、レオナが・・セドリックに絡まれた事で、また好奇の目が待っていることに気付く。それでは状況の整理どころではないと思ったリーナは、階段を上へと駆け上がった。行き着いた先の扉を開くと、そこは屋上だった。
ここなら誰もいないし、気付かれないはずだ。リーナは胸を撫で下ろすと、階段を駆け上がった事で乱れた息を深呼吸をして整える。
(レオナ・・あの子、何でセドリックから遠ざけようとしたんだろう。そんな事したら、彼から目をつけられそうなものなのに・・・それにセドリックよ。オルガが戻ってきて、私なんて放置してたじゃない。いきなり何なのよ)
『君を一番近くで守ると決めた』
リーナの脳裏についさっきセドリックに言われたセリフが蘇る。リーナは眉間にシワを寄せ、それを振り払うように頭を振った。
するとそこに「そんな顔は似合わないな」と声がした。いつもフイに現れるセドリックだ。声に驚き顔を上げたリーナは、足元がふらつくが、その身体は力強い腕に抱きかかえられる。リーナはそれを拒否しようと腕を伸ばすが、そのまま覆いかぶさるように抱きしめられる。
「やっと捕まえたぞ。さっきは邪魔が入ったが、もう離さない」
リーナの胸には、不安が押し寄せた。
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