上 下
9 / 50

第9話 ご都合主義が最高なんて誰が言ったの?

しおりを挟む
学園から戻ったリーナは、自室で頭を悩ませていた。

(ヤバいわね。さっきの様子だと、相当無理してるわ。早くしないと、オルガの心と身体がもたないかもしれない・・・かと言って、妙案が浮かぶわけでもなく・・)

こんな時、漫画ならどうするだろうかと、リーナは考え冗談半分で芝居がかった行動をする。

テラスに出たリーナは、天を仰ぎ胸の前で手を合わせた。

「お願いです神様!彼を助けてください!彼にはこれから守るべき人たちが大勢いるんです!」

・・・・

「な~んてね。ヒロインならこんなところだけど、まぁこんなんで解決したら、苦労しないわ」

『やっと呼びましたか』

「えーえー、呼びました・・・って誰?」

自分しかいないはずの空間に突然聞こえてきた見知らぬ声に、リーナは辺りを見回す。しかし、誰もいない。

「あー、疲れてるのかしら・・最近、悩んでばかりだからねぇ」

肩をポキポキ鳴らし、部屋へ戻ろうとするリーナの耳に『ここです!ここ!』と再び見知らぬ声が聞こえてくる。

「えっ!ここって、どこ?誰かいるの?」

キョロキョロとするリーナの姿を見ているのか、右を見たところで指示がとんできた。

『あっ!そのまま!その向きのまま、よ~く見てみて!』

不思議な声に素直に従うリーナは、目の前を凝視する。あるのは、テラスの柵の先に大木があるだけだ。しかし、ここで視界に違和感を感じる。

「あらっ?・・・何かモヤモヤと・・」

その言葉どおり何もない空間がユラユラとうごめき、何かがいた。一度そこに存在を感じれば、視覚が認識するのにそう時間はかからなかった。少年の姿が陽炎かげろうのようにユラユラと空間に浮いていた。

「貴方、誰?」

『あー、やっと気付いてくれた。呼ぶのも遅いし、気付くのも遅いですよ~』

少年に軽く非難されたリーナだったが、彼女が気付かないのも無理はない。何しろ少年の姿は、目を凝らさないと見えないほど薄いのだ。

「だから、誰なの?」

リーナの問いに少年は、にわかには信じられない言葉を返す。

『誰って、いま呼んだでしょう?どうも“神様”です』

「確かに呼んだわ。でも神様って、、呼んだら出てきてくれるの?」

『いえ、普通はそんなことはないです。ただ今回は特別です』

「特別・・まあ、この際何でもいいわ。これこそ、まさに天の助け!」

リーナは、ベタ恋の世界にもなかった神様の登場に、安直なご都合主義すぎる気もしたが、藁にもすがる思いの今は素直に受け入れる。まさにリーナは神に感謝した。

「神様は、どうして出てきたんですか?」

『それは貴女がその胸に抱いているとおり、願いを叶えるためです』

(願いを叶える・・・はああ最高!こうなったら、使えるものは何でも使いますよ!)

「それじゃあ、この世界にいるオルガの魂と本物の魂を元に戻してください」

『それはできません』

「ゔ・・なぜ?願いを叶えてくれるのでしょう?」

ずずいと、神に迫り、非難の眼差しをむけるが、返ってくる答えは変わらなかった。

『はい、叶えます。ただし直接、助けることはできませんが、助言を授けることはできます・・・あっ、“神様なのに”っていま思いましたね。すみません、でも欲は人を堕落させ滅ぼしますゆえ、ご勘弁を』

何だかいかにも神様っぽいことを言って、誤魔化された気もするし、面倒くさいが、仕方がない。使えるものは使おうと、いま決めたばかりのリーナは、内心ため息をつく。

「それでは、どうすれば二人の魂を戻せるのか教えて下さい」

『よろしいでしょう。叶えてみせます・・・・・・はいっ!これでもう大丈夫です』

何か神様が一人で処理していたが、リーナには意味がさっぱり分からず戸惑った。

「あの~“大丈夫”とはどういうことでしょう。何も助言をいただいてませんが・・」

『直接、助言与えることは許されておりませんので、今夜、貴女の見る夢の中に答えを用意しました』

(まわりくどい・・・直接教えてくれたら、時間短縮になるのに・・神様の世界には“時は金なり”なんて言葉は、ないのかしら?)

「少しだけでも、ヒントをもらえませんか?友人が苦しそうで・・」

『悪いが、助言について話せることは何もありません』

(夢のお告げみたいなやつか・・・何だかじれったいわね。でも“急いては事を仕損じる”ともいうし、仕方ないか)

リーナが今どき珍しいほど面倒くさいシステムに納得した時、神様からサービスタイムのご案内がされた。

『ありませんが、そのかわりそれ以外の質問があるようでしたらどうぞ・・』
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

もしもし、王子様が困ってますけど?〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

悪役令嬢に転生したのですが、フラグが見えるのでとりま折らせていただきます

水無瀬流那
恋愛
 転生先は、未プレイの乙女ゲーの悪役令嬢だった。それもステータスによれば、死ぬ確率は100%というDEATHエンド確定令嬢らしい。  このままでは死んでしまう、と焦る私に与えられていたスキルは、『フラグ破壊レベル∞』…………?  使い方も詳細も何もわからないのですが、DEATHエンド回避を目指して、とりまフラグを折っていこうと思います! ※小説家になろうでも掲載しています

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~

鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...