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第3章
第176.5話 幕間 アリーナ視点2
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そんな会話をしていると、ホーホーが今度は先生の肩にいきなり現れた。先生はホーホーの突然の登場に驚くことなく、話しかける。
「お帰りホーホー。伝言渡してくれたかい?」
するとホーホーは胸を張り、羽を軽く広げて言った。
『ホー・・・西・・ホー・・・の森・・ホー・・』
喋った・・フクロウが喋った。ネージュ達の存在にも驚かされたけど、喋るフクロウにも驚かされた。しかもさっき飛び立ったばかりなのに、もうお仕事こなしてきたの?優秀すぎる・・
「やはり森か・・」
先生はそう呟くと、ホーホーに再び伝言を頼む。
「それじゃあ、また彼に伝言をお願いするよ。伝言は”広場に行くから、そこで待ってて”だ。よろしく」
するとホーホーはさっきと同様、飛び立つと、壁の直前でその姿を消した。先生は椅子を立ち上がると、奥の筆机に行き、何やら手紙を書いている様子だった。何通か書き終え、封をしたちょうどその時、奥からアルミーダさんが現れた。手には鞄を一つ持っている。
「それじゃあ、行こうかね。アイツの尻ぬぐいだ」
”アイツ”って誰?ディファナのことかな?そう疑問に思ったけど、バタバタと急いでいる先生とアルミーダさんの様子に私は口を開くことをしなかった。
私たちが外へ出ると、アルミーダさんは「あたしに掴まりな」と言った。説明なしの彼女の言葉に素直に従う先生。私とエリーゼも何も言わずに彼女のローブを掴んだ。
すると次の瞬間、周りの景色が歪み始め、やがて真っ暗になる。そして、何となく見覚えのある景色が目に飛び込んできた。それは西の森の入口だった。アルミーダさん、よく行き先がここだって分かったわね。盗み聞きしてた?そんなこと聞いたら、雷落とされるのは確実だったから、私は考えを胸の奥に仕舞い込んだ。
「チッ・・ディファナのやつ、森に結界張ってる。全くどこまでも面倒かけるんだね」
イライラした様子のアルミーダさんに先生が尋ねる。
「どうする?結界破れるかい?」
「あー、それは問題ないよ。ただ、結界の中では移動魔法使えないから、歩くしかないね」
ため息をつきながら言う彼女に、先生は肩に手を置いて言った。
「それは仕方ない。それじゃあ、早速だけどよろしく」
「はぁぁ、全くアイツにはキツーいお仕置きが必要だね・・・あんた達は離れてな。今のあたしは機嫌が悪いんだ。少しくらい手荒なことしても文句言うんじゃないよ」
そう言い終わらないうちにアルミーダさんは、右手を挙げるとその手に水の塊を出現させた。その大きさに隣のエリーゼは口を開け、驚いていた。そう言えば彼女は水魔法の使い手だったわ。
アルミーダさんがそれを森へ目掛けて投げると、塊が森の手前で飛び散った。すると、そこにポッカリと森への道が口を開けて待っていた。そして、そのまわりだけ、網状の壁が見えた。さっきまで何も見えなかったのに、結界が壊されて可視化されたのだろうか。
アルミーダさんは、肩をポキポキ鳴らしたあとカバンを持つと、森へと入って行く。
「ほらっ、行くよ!」
先生も「行こうか」と笑みを浮かべて私たちに言うと、歩き始める。私とエリーゼも顔を見合わせたあと、続いた。
森へ足を踏み入れると、辺りは薄暗かった。もう日が暮れる時刻。陽の光のない森の中は、何か出てきてもおかしくない不気味な雰囲気を漂わせている。先生がいくつか火の玉を出した。それはプカプカと私たちのまわりに浮き、足元を照らした。
こんな時間に森へ来たのは初めてだったので、私は緊張していた。思わず横を歩くエリーゼの手を握った。手を取った時、彼女がビクッとしたので横を見ると、その表情には緊張の色が現れていた。私はエリーゼに精一杯の笑顔を送ると、彼女は少しホッとした表情を見せたあと微笑んだ。
考えたら、エリーゼは今の状況を全く理解していないのだ。私以上に緊張しているはず。本当はもっと前に一人帰らせたほうが良かったのだろうけど、彼女もなかなかの好奇心を持っている。私たちが”帰れ”と言っても、聞かなかっただろう。私はそう考えることにして、これから起きるであろう物事に集中することにした。実際、私もこれから何が起こるのか分かってないけどね。
前を歩く先生とアルミーダさんは、何やら話をしている。時々、聞こえてくる単語から、これからのことを話しているのは想像できた。
すると、私は突然感じた頭上の重さに「きゃっ」と小さな悲鳴をあげた。すると『ホー・・ホー・・』と鳴き声が聞こえた。
「えっ、なに?ホーホー!?」
エリーゼと繋いだ手をほどき、頭に手をやると、ふんわりと柔らかい羽に触れた。
「ああ、ホーホー。お帰り。だけど女の子の頭に下りるのはよくないね」
先生がそう言ったが、私の頭からフクロウの重さがなくなることはなかった。レディの頭にとまるなんて、躾が必要なのでは?さっきの”好物あげよう”なんて考えは、撤回ね。
諦めた私は「先生・・大丈夫です。続けてください」と言った。先生は私の頭上を軽く睨んだが、やっぱり軽くならない。あぁ、やっぱり躾決定ね。先生は苦笑すると、話を続けた。
「ホーホー。彼に伝言は届けたかい?」
『ホー・・ホー・・・』
チラリと隣に目線を移すと、ホーホーを見るエリーゼの顔が青ざめていた。私が「どうしたの?」と尋ねると、彼女は言った。
「・・くっ、首・・・首がクルクル回ってるのよ・・・」
どうやらホーホーの首がクルクル回ってるらしかった。私は見ることができないので、どう回ってるのか気になったが、エリーゼの反応から察するに見ないほうがいい気がする。首がクルクル回るって・・それは怖い・・・ホーホー、あなたの骨どうなってるのよ・・・
「こら、ホーホー。その癖やめなさいっていつも言ってるだろう・・・アルミーダも少し言ってよ。君の鳥だろう」
「はっ!?どこがいけないのさ。コイツは仕事は完璧にこなすんだ。それだけで十分だろ!?ほら、もう帰っていいよ。アルバスがうるさいから、さっさとお帰り」
アルミーダさんの言葉を理解したのか、私の頭が急に軽くなった。飛び立ったようだ。私は見えなかったので、羽音が夜の闇の中へ消えていったことからそう判断した。
ホーホーが去ると、私たちはヘンリー様と落ち合う場所、広場ヘと足を進めた。
「お帰りホーホー。伝言渡してくれたかい?」
するとホーホーは胸を張り、羽を軽く広げて言った。
『ホー・・・西・・ホー・・・の森・・ホー・・』
喋った・・フクロウが喋った。ネージュ達の存在にも驚かされたけど、喋るフクロウにも驚かされた。しかもさっき飛び立ったばかりなのに、もうお仕事こなしてきたの?優秀すぎる・・
「やはり森か・・」
先生はそう呟くと、ホーホーに再び伝言を頼む。
「それじゃあ、また彼に伝言をお願いするよ。伝言は”広場に行くから、そこで待ってて”だ。よろしく」
するとホーホーはさっきと同様、飛び立つと、壁の直前でその姿を消した。先生は椅子を立ち上がると、奥の筆机に行き、何やら手紙を書いている様子だった。何通か書き終え、封をしたちょうどその時、奥からアルミーダさんが現れた。手には鞄を一つ持っている。
「それじゃあ、行こうかね。アイツの尻ぬぐいだ」
”アイツ”って誰?ディファナのことかな?そう疑問に思ったけど、バタバタと急いでいる先生とアルミーダさんの様子に私は口を開くことをしなかった。
私たちが外へ出ると、アルミーダさんは「あたしに掴まりな」と言った。説明なしの彼女の言葉に素直に従う先生。私とエリーゼも何も言わずに彼女のローブを掴んだ。
すると次の瞬間、周りの景色が歪み始め、やがて真っ暗になる。そして、何となく見覚えのある景色が目に飛び込んできた。それは西の森の入口だった。アルミーダさん、よく行き先がここだって分かったわね。盗み聞きしてた?そんなこと聞いたら、雷落とされるのは確実だったから、私は考えを胸の奥に仕舞い込んだ。
「チッ・・ディファナのやつ、森に結界張ってる。全くどこまでも面倒かけるんだね」
イライラした様子のアルミーダさんに先生が尋ねる。
「どうする?結界破れるかい?」
「あー、それは問題ないよ。ただ、結界の中では移動魔法使えないから、歩くしかないね」
ため息をつきながら言う彼女に、先生は肩に手を置いて言った。
「それは仕方ない。それじゃあ、早速だけどよろしく」
「はぁぁ、全くアイツにはキツーいお仕置きが必要だね・・・あんた達は離れてな。今のあたしは機嫌が悪いんだ。少しくらい手荒なことしても文句言うんじゃないよ」
そう言い終わらないうちにアルミーダさんは、右手を挙げるとその手に水の塊を出現させた。その大きさに隣のエリーゼは口を開け、驚いていた。そう言えば彼女は水魔法の使い手だったわ。
アルミーダさんがそれを森へ目掛けて投げると、塊が森の手前で飛び散った。すると、そこにポッカリと森への道が口を開けて待っていた。そして、そのまわりだけ、網状の壁が見えた。さっきまで何も見えなかったのに、結界が壊されて可視化されたのだろうか。
アルミーダさんは、肩をポキポキ鳴らしたあとカバンを持つと、森へと入って行く。
「ほらっ、行くよ!」
先生も「行こうか」と笑みを浮かべて私たちに言うと、歩き始める。私とエリーゼも顔を見合わせたあと、続いた。
森へ足を踏み入れると、辺りは薄暗かった。もう日が暮れる時刻。陽の光のない森の中は、何か出てきてもおかしくない不気味な雰囲気を漂わせている。先生がいくつか火の玉を出した。それはプカプカと私たちのまわりに浮き、足元を照らした。
こんな時間に森へ来たのは初めてだったので、私は緊張していた。思わず横を歩くエリーゼの手を握った。手を取った時、彼女がビクッとしたので横を見ると、その表情には緊張の色が現れていた。私はエリーゼに精一杯の笑顔を送ると、彼女は少しホッとした表情を見せたあと微笑んだ。
考えたら、エリーゼは今の状況を全く理解していないのだ。私以上に緊張しているはず。本当はもっと前に一人帰らせたほうが良かったのだろうけど、彼女もなかなかの好奇心を持っている。私たちが”帰れ”と言っても、聞かなかっただろう。私はそう考えることにして、これから起きるであろう物事に集中することにした。実際、私もこれから何が起こるのか分かってないけどね。
前を歩く先生とアルミーダさんは、何やら話をしている。時々、聞こえてくる単語から、これからのことを話しているのは想像できた。
すると、私は突然感じた頭上の重さに「きゃっ」と小さな悲鳴をあげた。すると『ホー・・ホー・・』と鳴き声が聞こえた。
「えっ、なに?ホーホー!?」
エリーゼと繋いだ手をほどき、頭に手をやると、ふんわりと柔らかい羽に触れた。
「ああ、ホーホー。お帰り。だけど女の子の頭に下りるのはよくないね」
先生がそう言ったが、私の頭からフクロウの重さがなくなることはなかった。レディの頭にとまるなんて、躾が必要なのでは?さっきの”好物あげよう”なんて考えは、撤回ね。
諦めた私は「先生・・大丈夫です。続けてください」と言った。先生は私の頭上を軽く睨んだが、やっぱり軽くならない。あぁ、やっぱり躾決定ね。先生は苦笑すると、話を続けた。
「ホーホー。彼に伝言は届けたかい?」
『ホー・・ホー・・・』
チラリと隣に目線を移すと、ホーホーを見るエリーゼの顔が青ざめていた。私が「どうしたの?」と尋ねると、彼女は言った。
「・・くっ、首・・・首がクルクル回ってるのよ・・・」
どうやらホーホーの首がクルクル回ってるらしかった。私は見ることができないので、どう回ってるのか気になったが、エリーゼの反応から察するに見ないほうがいい気がする。首がクルクル回るって・・それは怖い・・・ホーホー、あなたの骨どうなってるのよ・・・
「こら、ホーホー。その癖やめなさいっていつも言ってるだろう・・・アルミーダも少し言ってよ。君の鳥だろう」
「はっ!?どこがいけないのさ。コイツは仕事は完璧にこなすんだ。それだけで十分だろ!?ほら、もう帰っていいよ。アルバスがうるさいから、さっさとお帰り」
アルミーダさんの言葉を理解したのか、私の頭が急に軽くなった。飛び立ったようだ。私は見えなかったので、羽音が夜の闇の中へ消えていったことからそう判断した。
ホーホーが去ると、私たちはヘンリー様と落ち合う場所、広場ヘと足を進めた。
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