188 / 202
第3章
第174話 リリス14歳 反撃1
しおりを挟む
「待たせたね」
そう言ったアルバスはリリスに向かって微笑むと、ディファナの腕をおさえている風の勢いが増した。アルバスが指を鳴らすと、風に絡みつかれた魔女の身体は腕から遠くへ飛ばされた。そしてアルバスの後ろにアルミーダ、アリーナ、エリーゼの姿を見つけたリリスの瞳には安堵から涙が溢れた。
「・・・みんな・・」
ポロポロと涙を流し、立ち尽くすリリスにアリーナとエリーゼが駆け寄る。そして、走り寄る勢いのままリリスを抱きしめた。抱きしめられる懐かしい温もりに止めどなく流れる涙は、アリーナの肩を濡らす。
「ほらほら、再会を喜ぶのは後だ。さっさと片付けちまうよ」
いつもの調子で声をかけてきたアルミーダに、リリスたちは顔を見合わせ笑顔を見せる。涙でグチャグチャのリリスの笑顔にアリーナが「ひどい顔よ」と笑った。そしてエリーゼも「それに服もボロボロだわ」と付け加えた。三人の様子を見ていたアルバスがアルミーダに声をかける。
「アルミーダ、それじゃあ手筈通りによろしく」
「はいはい、分かってるよ。全くディファナのせいでこき使われるったら、ありゃあしないね」
そうブツブツ愚痴をこぼしたアルミーダは持っていた鞄から小瓶取り出すと、アリーナとエリーゼにポイと投げた。二人は慌てて受け取る。
「そこで倒れてる男前たちに飲ませておやり。回復薬だ。あたしゃ、早く闇魔法相手にしなくちゃいけないからね」
そう言うと、背を向けサラマンデルのいる広場へと歩き出した。
「君もこっちだ」
アルバスに誘われ、涙を袖口で拭ったリリスは一緒に広場へ向かう。途中、アルバスは口を開いた。
「遅くなってすまなかったね。本当はここまで移動魔法で飛んでくる予定だったんだけど、ディファナの張った結界が思ったより強力でね。森の外までしか飛べなかったんだ。しかし、あの魔女相手に頑張ったようだね。それに・・・大分パワーアップしてるようだね、君は・・」
「先生、私・・」
「いや、それ以上はまた後だ。君はアルミーダを手伝ってやってくれ。彼女がサラマンデルを封印してる闇魔法を解くから」
「僕は邪魔をするディファナの相手だ。あぁ、それからメイル。君はアリーナたちと一緒にいてくれ。彼女たちに危険が迫ったら、守るという重要任務を任せるからね。サラマンデルのことが心配なのは分かるが、ここは僕たちに任せてくれ」
アルバスの言葉を理解したのかリリスの後からついて来ていたメイルは、回れ右をしてアリーナたちの元へ戻って行った。
「先生、今のでメイルは理解したんでしょうか。ネージュに話すような聖獣語ではないのに」
「ああ、多分大丈夫じゃないかな。それに鱗獣の言葉を僕は知らないんだよ」
「そうなんですね。先生はどんな聖獣とも会話できるのかと思ってました。あっ、そう言えば私がおかしくなってたところをメイルの鳴き声に助けられたんです。すごく透き通ったきれいな鳴き声でした」
「本当か!?ああ、何てことだ。そんな場面を見逃すなんて・・・でもそれなら、メイルの声には何か力があるのかもしれないね。これは図鑑にも載ってない新事実かもしれないな」
「お喋りしてないで、始めるよ」
先に歩くアルミーダがサラマンデルの木に到着し、リリスたちに声をかけた。アルバスは立ち止まり、「じゃあ、よろしく」とリリスに笑顔を見せる。それに頷いたリリスは、木の傍らで準備を始めるアルミーダに駆け寄った。
「アルミーダさん、私は何をすればいいですか?」
鞄を地面に置いたアルミーダが指示を出す。
「まずは鞄の中身を全てそこに並べてくれるかい」
「はい」と返事をしたリリスは鞄を開け、一つ一つ中の物を出していく。中には石に枝、小瓶が三つ、他にツボや何かが入ってる缶などがいろいろ入っていた。一通り並べ終わると、炎をあげる木をジロジロと眺めていたアルミーダが口を開いた。
「さぁて、まずは結界を張ろうかね。ディファナの相手をアルバスに任せておいてもいいが、万が一邪魔されたらたまったもんじゃないからね。その小瓶を使うから」
そう言ってアルミーダが指差したのは、透明な小瓶だった。中には、ピンク色の粉が入っている。リリスが言われた通り小瓶を手に取った時、少し離れたところで爆音がした。音のする方を見ると、土煙の中にディファナと対峙するアルバスの姿があった。
「ほら、ボーッとしてないで、さっさと始めるよ」
我に返ったリリスは「はいっ」と返事をし、小瓶を片手にアルミーダに駆け寄った。
それぞれの戦いの鐘が始まりを告げた瞬間だった。
そう言ったアルバスはリリスに向かって微笑むと、ディファナの腕をおさえている風の勢いが増した。アルバスが指を鳴らすと、風に絡みつかれた魔女の身体は腕から遠くへ飛ばされた。そしてアルバスの後ろにアルミーダ、アリーナ、エリーゼの姿を見つけたリリスの瞳には安堵から涙が溢れた。
「・・・みんな・・」
ポロポロと涙を流し、立ち尽くすリリスにアリーナとエリーゼが駆け寄る。そして、走り寄る勢いのままリリスを抱きしめた。抱きしめられる懐かしい温もりに止めどなく流れる涙は、アリーナの肩を濡らす。
「ほらほら、再会を喜ぶのは後だ。さっさと片付けちまうよ」
いつもの調子で声をかけてきたアルミーダに、リリスたちは顔を見合わせ笑顔を見せる。涙でグチャグチャのリリスの笑顔にアリーナが「ひどい顔よ」と笑った。そしてエリーゼも「それに服もボロボロだわ」と付け加えた。三人の様子を見ていたアルバスがアルミーダに声をかける。
「アルミーダ、それじゃあ手筈通りによろしく」
「はいはい、分かってるよ。全くディファナのせいでこき使われるったら、ありゃあしないね」
そうブツブツ愚痴をこぼしたアルミーダは持っていた鞄から小瓶取り出すと、アリーナとエリーゼにポイと投げた。二人は慌てて受け取る。
「そこで倒れてる男前たちに飲ませておやり。回復薬だ。あたしゃ、早く闇魔法相手にしなくちゃいけないからね」
そう言うと、背を向けサラマンデルのいる広場へと歩き出した。
「君もこっちだ」
アルバスに誘われ、涙を袖口で拭ったリリスは一緒に広場へ向かう。途中、アルバスは口を開いた。
「遅くなってすまなかったね。本当はここまで移動魔法で飛んでくる予定だったんだけど、ディファナの張った結界が思ったより強力でね。森の外までしか飛べなかったんだ。しかし、あの魔女相手に頑張ったようだね。それに・・・大分パワーアップしてるようだね、君は・・」
「先生、私・・」
「いや、それ以上はまた後だ。君はアルミーダを手伝ってやってくれ。彼女がサラマンデルを封印してる闇魔法を解くから」
「僕は邪魔をするディファナの相手だ。あぁ、それからメイル。君はアリーナたちと一緒にいてくれ。彼女たちに危険が迫ったら、守るという重要任務を任せるからね。サラマンデルのことが心配なのは分かるが、ここは僕たちに任せてくれ」
アルバスの言葉を理解したのかリリスの後からついて来ていたメイルは、回れ右をしてアリーナたちの元へ戻って行った。
「先生、今のでメイルは理解したんでしょうか。ネージュに話すような聖獣語ではないのに」
「ああ、多分大丈夫じゃないかな。それに鱗獣の言葉を僕は知らないんだよ」
「そうなんですね。先生はどんな聖獣とも会話できるのかと思ってました。あっ、そう言えば私がおかしくなってたところをメイルの鳴き声に助けられたんです。すごく透き通ったきれいな鳴き声でした」
「本当か!?ああ、何てことだ。そんな場面を見逃すなんて・・・でもそれなら、メイルの声には何か力があるのかもしれないね。これは図鑑にも載ってない新事実かもしれないな」
「お喋りしてないで、始めるよ」
先に歩くアルミーダがサラマンデルの木に到着し、リリスたちに声をかけた。アルバスは立ち止まり、「じゃあ、よろしく」とリリスに笑顔を見せる。それに頷いたリリスは、木の傍らで準備を始めるアルミーダに駆け寄った。
「アルミーダさん、私は何をすればいいですか?」
鞄を地面に置いたアルミーダが指示を出す。
「まずは鞄の中身を全てそこに並べてくれるかい」
「はい」と返事をしたリリスは鞄を開け、一つ一つ中の物を出していく。中には石に枝、小瓶が三つ、他にツボや何かが入ってる缶などがいろいろ入っていた。一通り並べ終わると、炎をあげる木をジロジロと眺めていたアルミーダが口を開いた。
「さぁて、まずは結界を張ろうかね。ディファナの相手をアルバスに任せておいてもいいが、万が一邪魔されたらたまったもんじゃないからね。その小瓶を使うから」
そう言ってアルミーダが指差したのは、透明な小瓶だった。中には、ピンク色の粉が入っている。リリスが言われた通り小瓶を手に取った時、少し離れたところで爆音がした。音のする方を見ると、土煙の中にディファナと対峙するアルバスの姿があった。
「ほら、ボーッとしてないで、さっさと始めるよ」
我に返ったリリスは「はいっ」と返事をし、小瓶を片手にアルミーダに駆け寄った。
それぞれの戦いの鐘が始まりを告げた瞬間だった。
0
お気に入りに追加
580
あなたにおすすめの小説
誰にでもできる異世界救済 ~【トライ&エラー】と【ステータス】でニートの君も今日から勇者だ!~
平尾正和/ほーち
ファンタジー
引きこもりニート山岡勝介は、しょーもないバチ当たり行為が原因で異世界に飛ばされ、その世界を救うことを義務付けられる。罰として異世界勇者的な人外チートはないものの、死んだらステータスを維持したままスタート地点(セーブポイント)からやり直しとなる”死に戻り”と、異世界の住人には使えないステータス機能、成長チートとも呼べる成長補正を駆使し、世界を救うため、ポンコツ貧乳エルフとともにマイペースで冒険する。
※『死に戻り』と『成長チート』で異世界救済 ~バチ当たりヒキニートの異世界冒険譚~から改題しました
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
幸せを掴む勇気
蓮
恋愛
これはどん底の二人が、幸せを掴む物語
アシルス帝国の若き公爵アルセニー・クジーミチ・ユスポフは、皇帝を巻き込んだとある事故の責任を負う形で爵位を失った。
辛うじてユスポフ公爵家が保有する子爵位を名乗ることだけは許されたが、事故のせいでアルセニーは実質的に社交界を追放されてしまった。
それ以降、アルセニーは帝都郊外の小さな屋敷に引きこもって生活をしていた。
そんなある日、アルセニーの弟でユスポフ公爵家の当主となったマトフェイが現れる。
アルセニーとマトフェイはあまり仲が良くなかった。
マトフェイからの嫌がらせで、アルセニーは自殺未遂をしたという醜聞のあるキセリョフ伯爵家の令嬢タチアナ・ミローノヴナ・キセリョヴァと無理矢理結婚させられてしまう。
アルセニーとタチアナ。ボロボロな二人は不本意な形で結婚させられ、生活を共にすることになる。
しかし次第に二人は心を通わせ、幸せを掴む為に前を向いて行動を始めるのであった。
心に傷を負ったボロボロな二人は、周囲の目や邪魔立てしてくる者達に立ち向かう勇気を持ち、幸せを掴んでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
※東欧、東スラヴ系の名前を採用しているので男女で苗字が違います。誤字ではありません。
表紙は栗尾りお様(@kurio_rio_)からいただきました。
私のバラ色ではない人生
野村にれ
恋愛
ララシャ・ロアンスラー公爵令嬢は、クロンデール王国の王太子殿下の婚約者だった。
だが、隣国であるピデム王国の第二王子に見初められて、婚約が解消になってしまった。
そして、後任にされたのが妹であるソアリス・ロアンスラーである。
ソアリスは王太子妃になりたくもなければ、王太子妃にも相応しくないと自負していた。
だが、ロアンスラー公爵家としても責任を取らなければならず、
既に高位貴族の令嬢たちは婚約者がいたり、結婚している。
ソアリスは不本意ながらも嫁ぐことになってしまう。
ヤクザと私と。~養子じゃなく嫁でした
瀬名。
恋愛
大学1年生の冬。母子家庭の私は、母に逃げられました。
家も取り押さえられ、帰る場所もない。
まず、借金返済をしてないから、私も逃げないとやばい。
…そんな時、借金取りにきた私を買ってくれたのは。
ヤクザの若頭でした。
*この話はフィクションです
現実ではあり得ませんが、物語の過程としてむちゃくちゃしてます
ツッコミたくてイラつく人はお帰りください
またこの話を鵜呑みにする読者がいたとしても私は一切の責任を負いませんのでご了承ください*
【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。
そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。
悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。
「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」
こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。
新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!?
⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる