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第3章

第174話 リリス14歳 反撃1

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「待たせたね」

そう言ったアルバスはリリスに向かって微笑むと、ディファナの腕をおさえている風の勢いが増した。アルバスが指を鳴らすと、風に絡みつかれた魔女の身体は腕から遠くへ飛ばされた。そしてアルバスの後ろにアルミーダ、アリーナ、エリーゼの姿を見つけたリリスの瞳には安堵から涙が溢れた。

「・・・みんな・・」

ポロポロと涙を流し、立ち尽くすリリスにアリーナとエリーゼが駆け寄る。そして、走り寄る勢いのままリリスを抱きしめた。抱きしめられる懐かしい温もりに止めどなく流れる涙は、アリーナの肩を濡らす。

「ほらほら、再会を喜ぶのは後だ。さっさと片付けちまうよ」

いつもの調子で声をかけてきたアルミーダに、リリスたちは顔を見合わせ笑顔を見せる。涙でグチャグチャのリリスの笑顔にアリーナが「ひどい顔よ」と笑った。そしてエリーゼも「それに服もボロボロだわ」と付け加えた。三人の様子を見ていたアルバスがアルミーダに声をかける。

「アルミーダ、それじゃあ手筈通りによろしく」

「はいはい、分かってるよ。全くディファナのせいでこき使われるったら、ありゃあしないね」

そうブツブツ愚痴をこぼしたアルミーダは持っていた鞄から小瓶取り出すと、アリーナとエリーゼにポイと投げた。二人は慌てて受け取る。

「そこで倒れてる男前たちに飲ませておやり。回復薬だ。あたしゃ、早く闇魔法相手にしなくちゃいけないからね」

そう言うと、背を向けサラマンデルのいる広場へと歩き出した。

「君もこっちだ」

アルバスに誘われ、涙を袖口で拭ったリリスは一緒に広場へ向かう。途中、アルバスは口を開いた。

「遅くなってすまなかったね。本当はここまで移動魔法で飛んでくる予定だったんだけど、ディファナの張った結界が思ったより強力でね。森の外までしか飛べなかったんだ。しかし、あの魔女相手に頑張ったようだね。それに・・・大分パワーアップしてるようだね、君は・・」

「先生、私・・」

「いや、それ以上はまた後だ。君はアルミーダを手伝ってやってくれ。彼女がサラマンデルを封印してる闇魔法を解くから」

「僕は邪魔をするディファナの相手だ。あぁ、それからメイル。君はアリーナたちと一緒にいてくれ。彼女たちに危険が迫ったら、守るという重要任務を任せるからね。サラマンデルのことが心配なのは分かるが、ここは僕たちに任せてくれ」

アルバスの言葉を理解したのかリリスの後からついて来ていたメイルは、回れ右をしてアリーナたちの元へ戻って行った。

「先生、今のでメイルは理解したんでしょうか。ネージュに話すような聖獣語ではないのに」

「ああ、多分大丈夫じゃないかな。それに鱗獣の言葉を僕は知らないんだよ」

「そうなんですね。先生はどんな聖獣とも会話できるのかと思ってました。あっ、そう言えば私がおかしくなってたところをメイルの鳴き声に助けられたんです。すごく透き通ったきれいな鳴き声でした」

「本当か!?ああ、何てことだ。そんな場面を見逃すなんて・・・でもそれなら、メイルの声には何か力があるのかもしれないね。これは図鑑にも載ってない新事実かもしれないな」

「お喋りしてないで、始めるよ」

先に歩くアルミーダがサラマンデルの木に到着し、リリスたちに声をかけた。アルバスは立ち止まり、「じゃあ、よろしく」とリリスに笑顔を見せる。それに頷いたリリスは、木の傍らで準備を始めるアルミーダに駆け寄った。

「アルミーダさん、私は何をすればいいですか?」

鞄を地面に置いたアルミーダが指示を出す。

「まずは鞄の中身を全てそこに並べてくれるかい」

「はい」と返事をしたリリスは鞄を開け、一つ一つ中の物を出していく。中には石に枝、小瓶が三つ、他にツボや何かが入ってる缶などがいろいろ入っていた。一通り並べ終わると、炎をあげる木をジロジロと眺めていたアルミーダが口を開いた。

「さぁて、まずは結界を張ろうかね。ディファナの相手をアルバスに任せておいてもいいが、万が一邪魔されたらたまったもんじゃないからね。その小瓶を使うから」

そう言ってアルミーダが指差したのは、透明な小瓶だった。中には、ピンク色の粉が入っている。リリスが言われた通り小瓶を手に取った時、少し離れたところで爆音がした。音のする方を見ると、土煙の中にディファナと対峙するアルバスの姿があった。

「ほら、ボーッとしてないで、さっさと始めるよ」

我に返ったリリスは「はいっ」と返事をし、小瓶を片手にアルミーダに駆け寄った。

それぞれの戦いの鐘が始まりを告げた瞬間だった。
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