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第3章

第167話 リリス14歳 明かされる真実3

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しばらくお互いに睨み合う時間が流れる。時折、冷たい風が吹き抜け、緊張からかいた汗を冷やした。

「そろそろ邪魔が入りそうだし、少し本気だそうかしらね・・フフッ」

ディファナの言葉を合図にリリスとネージュが一歩前へ出てくる。リリスは再び両手に炎を纏い、ネージュは体を屈めて今にも飛びかかってきそうだ。

「ディファナッ!リリィを操って楽しいか?お前は自分では手を汚さない卑怯者だ!」

ヘンリーがソファーで寛ぐ魔女へ話しかける。アルバスたちが到着するまで少しでも時間を稼ぎたかった。

「卑怯者ねぇ・・・時間稼ぎしたいんだろうけど、無駄よ。卑怯者?何とでも言ってちょうだい。他人にどう言われようと、私にはどうでもいいからね。
私は楽しく人生を送りたいの。魔女が何年生きるか知ってる?・・・・千年よ!千年!そんなに長生きしてると当然周りの人間はどんどん死んでいく。"私を一人にはしない"と言ってくれた人でさえ呆気なく死んだわ。取り残された私の気持ちはどんなだと思う?寂しいなんてもんじゃないのよ」

「人を愛したことがあるのか?」

黙ってディファナの言葉を聞いていたスタイラスが口を開いた。そのセリフに余裕の笑みを浮かべていたディファナの表情が崩れた。

「・・・なによ・・悪い?魔女が人間を好きになったら、いけないの?」

「いや、そんなことは言ってない。ただ・・・」

「人間如きが同情なんてやめろ!・・・もうお喋りの時間は終わりよ!」

魔女の言葉を待っていたかのようにディファナが言い終わった途端、ネージュが襲いかかってきた。一直線に走って飛びかかってきたネージュの爪をスタイラスは既のところで避ける。耳元でビュッという爪が空気を切り裂く音がした。そしてネージュは軽やかな足取りで下り立ち、そのまま地面を蹴り今度はアシュリーに襲いかかる。「ぅわっ!」と声を上げ、目の前に飛んできたネージュを避けるアシュリー。アシュリーは上手く避けたと思っていたが、彼の頬には血が滲んでいた。頬に感じた痛みにアシュリーは顔を歪ませる。それを心配したヘンリーたちだったが、声をかけさせてもらえるほど敵は甘くはなかった。ネージュの攻撃をかわしたのも束の間、今度はリリスが炎を放った。連続でボンボンと炎を投げてくる彼女の顔は無表情だった。迫る炎を避けながら、間に襲いかかってくるネージュもかわす。ヘンリーたちの体力が切れるの先か、それともリリスの魔力とネージュの体力が切れるのが先か・・・・どちらにしてもリリスが人質同然の今の状況では、ヘンリーたちの分が悪かった。

「クソっ!このままじゃ、やられちまうぞ」

スタイラスが肩で息をしながら、言葉を吐いた。そしてさらに言葉を続ける。

「アシュリー!さっきの眠り薬みたいに使えそうな物ないのか?」

「えっ!今それ聞く?」

「ああ!何でもい・・・危ねっ・・いいから、何かないか?」

スタイラスの問に逃げ回りながら、ポケットを探るアシュリー。

「そんな無茶ブリを。えーっと・・うわっ・・危なっ、黒焦げになるところだった・・・これはさっきの眠り薬・・・・これは・・マタタビ・・それから・・・あっ、マタタビ!猫獣なら、マタタビでヘロヘロだぁぁぁ」

そう叫んだアシュリーがポケットから取り出したマタタビの枝をヘンリーに襲いかかろうとしているネージュに投げた。しかしネージュは鋭い視線を飛んでくるマタタビの枝を向けると、右足で払い除けた。

全く相手にしないネージュに「あっ、ウソォ・・」と口にしたアシュリーは、再びポケットを探った。

「アシュリー、マタタビって・・何でそんな物・・・」

「ヘンリー様、なんでマタタビを持ってるかなんて、そこは聞かないでください。それより・・これは煙玉・・あっ、これならどうだぁ!」

アシュリーはマタタビに続き、今度は丸い煙玉をヘンリーたちとリリスたちの間にに投げた。白い煙がお互いの視界を遮る。

「アシュリー、これも睡くなるとか何か仕掛けがあるのか?」

「ううん、違うよ。ただの煙でただの目くらましだよ」

「おいおい・・」

「えー、スタイラスが何でも言いって言ったんじゃん」

そんなやり取りをしていると、やがて煙が消えた。すると、そこにはメイルの姿があった。
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