157 / 202
第3章
第146話 リリス14歳 変貌1
しおりを挟む
「イヤ。帰りたくない・・・」
「何を言ってるの?リリィ」
「メイルと一緒じゃないと帰りたくない。ううん、帰らないから」
ここは西の森・・・燃える木を目の前に帰らないと我儘を言うリリスに戸惑うヘンリーとアルバスの姿があった。
どうして、こうなったのか・・・
時を遡ること1時間前。
リリスとヘンリーそしてアルバスの姿は西の森にあった。三人はあの広場へ向かって森の中を歩いていた。昼休みに約束した通り学園が終わってから、揃ってやって来たのだ。
「先生、もう少しです」
一緒に歩くアルバスに声をかけたヘンリーは、手を繋いで横を歩くリリスに顔を向け「大丈夫?疲れてない?」と聞いた。それにリリスは微笑むと「全然平気だよ」と答えた。
やがて周りの木々が赤く染まりだし、更に奥へと進むと三人はあの広場へと辿り着いた。
「ほぉ・・これが・・・」
目の前に現れた炎をひと目見たアルバスが感嘆の声を漏らした。そしてゆっくりと木に近付く。彼は無言で木を見上げ、周囲をぐるっとまわり、炎に触れた。それを何度も繰り返している。リリスとヘンリーはその様子をただ見守っていた。
やがてアルバスの足が止まり、腕を組んで何やら考え事を始めた。その様子にリリスとヘンリーは顔を見合わせる。リリスが口を開きかけると、ヘンリーが唇に指を当て「しー」と声にならない言葉を発した。リリスは慌てて口を閉じる。
しばらく考え込んだアルバスは、再び木に近付くと右手を炎に突っ込み、幹に手のひらを押し当てる。そして何やらブツブツと口にし始めた。するとすぐに彼の手からぼんやりとした青い光が発せられる。その光は最初こそぼんやりと鈍く光っていたが、段々とその輝きを増し、やがて弾け飛ぶように消え去った。光が消えるとアルバスは手を離し、後ろを振り返った。そしてリリスたちに言った。
「ここにサラマンデルがいる」
「「サラマンデル!?」」
リリスとヘンリーの驚きの声が揃う。二人の反応が予想通りだったのか、クスッと笑ったアルバスが二人に近付き、同じセリフを繰り返した。
「そう、ここにサラマンデルがいる」
その時、ザァーッと強い風が吹き、リリスの漆黒の長い髪と同じくアルバスの黒い長髪とローブがはためいた。風で乱れた髪を整えるリリスの横で、ヘンリーが信じられないといった様子で聞き返した。
「サラマンデルって、あの精霊のですか?」
「そうだ。間違いないよ」
「・・あっ!思い出した。サラマンデルって、炎の精霊ですよね?」
リリスの問にアルバスが頷いた。
「そうだ。この世界には精霊が存在する。と言ってもここプロメアではその存在が語られるのは、物語の中だけで信じられてはいないね。ただシュトリーマを始めとして精霊を認めてる国は少なくない。ミレドールでは、水の精霊ウンディーネを神として崇めていると聞いたことがあるよ」
「ウンディーネが神・・・水の精霊。風の精霊シルフ。大地の精霊ノーム。そして炎の精霊サラマンデル・・その炎の精霊がここに・・・まさか本当に精霊がいたなんて・・」
ヘンリーはそう呟き、リリスも半信半疑な表情で言った。
「私も自分で予想していてなんだけど、信じられないわ。だって夢で見た・・ただこれだけでそう思っただけなんだもの・・・」
呆然としている二人にアルバスが苦笑した。
「あの"ここにいる"って、どういう意味でしょうか?閉じ込められてるのかそれとも姿を変えられてるのか」
ヘンリーの質問にアルバスが答える前にメイルがふらっと姿を現した。
「何を言ってるの?リリィ」
「メイルと一緒じゃないと帰りたくない。ううん、帰らないから」
ここは西の森・・・燃える木を目の前に帰らないと我儘を言うリリスに戸惑うヘンリーとアルバスの姿があった。
どうして、こうなったのか・・・
時を遡ること1時間前。
リリスとヘンリーそしてアルバスの姿は西の森にあった。三人はあの広場へ向かって森の中を歩いていた。昼休みに約束した通り学園が終わってから、揃ってやって来たのだ。
「先生、もう少しです」
一緒に歩くアルバスに声をかけたヘンリーは、手を繋いで横を歩くリリスに顔を向け「大丈夫?疲れてない?」と聞いた。それにリリスは微笑むと「全然平気だよ」と答えた。
やがて周りの木々が赤く染まりだし、更に奥へと進むと三人はあの広場へと辿り着いた。
「ほぉ・・これが・・・」
目の前に現れた炎をひと目見たアルバスが感嘆の声を漏らした。そしてゆっくりと木に近付く。彼は無言で木を見上げ、周囲をぐるっとまわり、炎に触れた。それを何度も繰り返している。リリスとヘンリーはその様子をただ見守っていた。
やがてアルバスの足が止まり、腕を組んで何やら考え事を始めた。その様子にリリスとヘンリーは顔を見合わせる。リリスが口を開きかけると、ヘンリーが唇に指を当て「しー」と声にならない言葉を発した。リリスは慌てて口を閉じる。
しばらく考え込んだアルバスは、再び木に近付くと右手を炎に突っ込み、幹に手のひらを押し当てる。そして何やらブツブツと口にし始めた。するとすぐに彼の手からぼんやりとした青い光が発せられる。その光は最初こそぼんやりと鈍く光っていたが、段々とその輝きを増し、やがて弾け飛ぶように消え去った。光が消えるとアルバスは手を離し、後ろを振り返った。そしてリリスたちに言った。
「ここにサラマンデルがいる」
「「サラマンデル!?」」
リリスとヘンリーの驚きの声が揃う。二人の反応が予想通りだったのか、クスッと笑ったアルバスが二人に近付き、同じセリフを繰り返した。
「そう、ここにサラマンデルがいる」
その時、ザァーッと強い風が吹き、リリスの漆黒の長い髪と同じくアルバスの黒い長髪とローブがはためいた。風で乱れた髪を整えるリリスの横で、ヘンリーが信じられないといった様子で聞き返した。
「サラマンデルって、あの精霊のですか?」
「そうだ。間違いないよ」
「・・あっ!思い出した。サラマンデルって、炎の精霊ですよね?」
リリスの問にアルバスが頷いた。
「そうだ。この世界には精霊が存在する。と言ってもここプロメアではその存在が語られるのは、物語の中だけで信じられてはいないね。ただシュトリーマを始めとして精霊を認めてる国は少なくない。ミレドールでは、水の精霊ウンディーネを神として崇めていると聞いたことがあるよ」
「ウンディーネが神・・・水の精霊。風の精霊シルフ。大地の精霊ノーム。そして炎の精霊サラマンデル・・その炎の精霊がここに・・・まさか本当に精霊がいたなんて・・」
ヘンリーはそう呟き、リリスも半信半疑な表情で言った。
「私も自分で予想していてなんだけど、信じられないわ。だって夢で見た・・ただこれだけでそう思っただけなんだもの・・・」
呆然としている二人にアルバスが苦笑した。
「あの"ここにいる"って、どういう意味でしょうか?閉じ込められてるのかそれとも姿を変えられてるのか」
ヘンリーの質問にアルバスが答える前にメイルがふらっと姿を現した。
0
お気に入りに追加
582
あなたにおすすめの小説
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
元妻は最強聖女 ~愛する夫に会いたい一心で生まれ変わったら、まさかの塩対応でした~
白乃いちじく
恋愛
愛する夫との間に子供が出来た! そんな幸せの絶頂期に私は死んだ。あっけなく。
その私を哀れんで……いや、違う、よくも一人勝手に死にやがったなと、恨み骨髄の戦女神様の助けを借り、死ぬ思いで(死んでたけど)生まれ変わったのに、最愛の夫から、もう愛してないって言われてしまった。
必死こいて生まれ変わった私、馬鹿?
聖女候補なんかに選ばれて、いそいそと元夫がいる場所まで来たけれど、もういいや……。そう思ったけど、ここにいると、お腹いっぱいご飯が食べられるから、できるだけ長居しよう。そう思って居座っていたら、今度は救世主様に祭り上げられました。知らないよ、もう。
***第14回恋愛小説大賞にエントリーしております。応援していただけると嬉しいです***
悪役令嬢ってこれでよかったかしら?
砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。
場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。
全11部 完結しました。
サクッと読める悪役令嬢(役)。
嫌われ者の悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。
深月カナメ
恋愛
婚約者のオルフレット殿下とメアリスさんが
抱き合う姿を目撃して倒れた後から。
私ことロレッテは殿下の心の声が聞こえる様になりました。
のんびり更新。
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる