上 下
148 / 202
第3章

第137話 リリス14歳 王子に邪魔される1

しおりを挟む
翌朝、リリスはヘンリーに父親にネージュの存在を知られたことを話した。

「そうか・・さすが公爵様だな。むしろ今までよく気付かれなかったと思うよ」

昨夜の出来事を聞いたヘンリーは、顎に手を当て感心している様子だ。

「そう言われれば、そうね。一緒に暮らしてるのに、昨日までお父様の目に止まらなかったんだもんね。でも本当に焦ったわ。お父様がまさかお許しになるなんて、思わなかったもの」

「そうだね。アルバス先生の信用あってだなぁ」

「そうね。お隣ではすごい魔法使いだったみたいだけど、先生ってそんな偉そうな雰囲気ぜんっぜん出してないし、単なる魔法の先生にしか見えないのよね。
そう言えば、前に癒やし魔法以外は使えるって言ってたよね。先生だからそれくらい当たり前みたいに言ってたけど、他の先生はどうなのか知ってる?」

「うーん、どうだろうな。でもアルバス先生はシュトリーマでもプロメアでも実力はトップクラスなのは、間違いないだろう。アルバス先生だから、そんな事ができるんだよ、きっと」

「何だかよくよく考えると、先生に対する態度を改めないといけない気がしてきたわ。崇拝するぐらいね」

そう言って胸の前で手を合わせ、上を仰ぎ見るリリスの仕草にヘンリーは笑った。

「あはは・・リリィ、そんな事したら、先生頭抱えるよ」

「えへへっ・・」

リリスは舌をぺろっと出し、肩をすくめてみせた。

「でも本当にすごいわよね。魔法はひと通り使えて、有名な魔女と知り合いでおまけに聖獣と話せる・・いや、冗談抜きでやっぱり師と仰ぐべきね・・ということで、まずは聖獣語の教えを請うわ」

変わらないリリスの決意にヘンリーは「程々にね」と言うのを忘れなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


その日の昼休み、リリスはカフェテリアの前でヘンリーと落ち合い、中で食事をとると言うアリーナたちと別れるところだった。

「それじゃあ、また後でね」

「「いってらっしゃーい」」

リリスとヘンリーの二人は、昨日決めたようにアルバスに森の話をするため、先生の元を訪ねるのだ。しかしアリーナたちとお互い言葉を交わした時、横から「やあ」という声がした。リリスたちが声の主を見ると、そこにはキラキラの王子スマイルを浮かべるアーサーが立っていた。いつものように横にはアーウィンを始めとする側近が控えている。おまけに今日は黄色い声を上げる女子生徒たちも後ろにズラズラと引き連れていた。

「君たちも今から食事かい?」

リリスは否定しようと口を開きかけたが、アリーナに先を越されてしまう。

「はい!殿下もお食事でしたら、ぜひご一緒にいかがでしょうか?ねえ、リリス?」

「えっ?ちょっとアリーナ!言ったでしょ!私たちはこれから先生のところに用があるって」

「しいっ!黙って!」

(はっ?"しいっ"って何?!"黙って"って言った?!はあ?この前は殿下との噂を心配してくれたのさぁ。なによ、この変わり身の速さ・・ヘンリーもいるのに・・・)

横をチラッと見ると、ヘンリーは笑みを浮かべている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方といると、お茶が不味い

わらびもち
恋愛
貴方の婚約者は私。 なのに貴方は私との逢瀬に別の女性を同伴する。 王太子殿下の婚約者である令嬢を―――。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

何もできない王妃と言うのなら、出て行くことにします

天宮有
恋愛
国王ドスラは、王妃の私エルノアの魔法により国が守られていると信じていなかった。 側妃の発言を聞き「何もできない王妃」と言い出すようになり、私は城の人達から蔑まれてしまう。 それなら国から出て行くことにして――その後ドスラは、後悔するようになっていた。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

処理中です...