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第3章
第105話 リリス14歳 教えてくれない
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その日の晩餐でダーウィンから昼間のアーサーとのやり取りを質問された。
「リリス、アーサー殿下から王城へ誘われたというのは本当かい?」
「まあ、お父様ご存知でしたのね。ヘンリー様もご存知でしたし、人の口に戸は立てられないというのは本当ですわね」
「姉さん?人の口に戸は立てられないというのはどういう意味?」
「あら、アーウィン知らないの?つまり人の噂話や評判というのは止められないということよ」
「へえ、初めて聞いたよ。こんなこともあるんだな」
アーウィンの聞き捨てならないセリフに、リリスは食事の手を止め「ちょっと、どういう意味?アーウィン?」と聞いた。それにアーウィンは「そんなに深い意味はないよ。ただ僕の知らないことを知ってる姉さん・・"お姉様"に感心してるんだよ」と言うとニッコリ笑った。リリスはその笑顔の裏に少し黒いものがある気がしたため、言い返そうとしたがダーウィンの言葉で止められた。
「そんなことよりリリス、殿下には失礼のないようにね」
「分かっておりますわ。そう言えば私、殿下とお会いしたことありますの?幼い頃は領地にずっといて、たまにここへ来ても城には行った記憶がないのですが」
「そうですよ、殿下は姉さんと会ったことがあるような口ぶりでしたよ。それに父上の策略がどうとか言っておられました」
リリスとアーウィンの言葉にダーウィンは「あー、策略・・・ねぇ。そう言われても仕方ないね」と呟くと、と真剣な眼差しでリリスを向いた。そんなダーウィンの様子にリリスは手にしていたナイフとフォークを置くと、居住まいを正した。
(ゴクリ・・・お父様の真剣な表情・・何を言われるの?あっ、私、何か小さい頃に殿下に対して不敬なことしちゃったとか?!だから領地には引きこもってた?・・・でも殿下の口ぶりからはそんな感じではなかったよね)
「リリス・・」
「はい・・」
(さあ、お父様・・・真実をどうぞ!言って!さあ!)
アーウィンも傍らで固唾をのんで二人を見守っている。
「それは・・」
「それは・・?」
ダーウィンはここで肩をすくめて、小さく息を吐いた。
「・・・私からは言えないね。殿下がリリスに教えると言ってるんだ。ここで私が教えたら、陛下からも後で何を言われるか」
「ちょっと父上!"陛下"って言いましたか?」
アーウィンが驚いて、目を見開きながら尋ねた。アーウィンの様子にリリスは視線を向けた。
(あらあら、人の目ってあんなに大きく開くものなのね。瞳が落ちそうよ・・チワワ・・あー、いまのアーウィンは、まるでチワワよ。うふふ、そう思うと、日頃のお小言もキャンキャンとうるさい犬の鳴き声に聞こえるわねぇ。ふふふ・・・)
リリスは自分の考えに思わず、吹き出しそうになる。そんなリリスの様子に気付いたアーウィンが「ちょっと姉さん、またくだらない想像してるんだろう?大体、姉さんも気にならないの?"陛下"って言ったんだよ!」とこちらへ身を乗り出し言った。
「まあ、そうね。でもお父様が困るなら無理に聞かないわよ。大体、週末には殿下から教えてもらえるんだから」
「・・分かったよ。姉さんがそう言うなら、仕方ない・・・」
アーウィンは口ではそう言いながらも、納得してない心を無理やり押し込めるように口を固く閉じた。
(全くアーウィンはせっかちなんだから・・・)
リリスは苦笑すると、再びナイフとフォークを手に取り、食事を再開した。それにつられて、ダーウィンとアーウィンも料理を口に運び、こうしてアルバート家の晩餐は再開したのだった。
「リリス、アーサー殿下から王城へ誘われたというのは本当かい?」
「まあ、お父様ご存知でしたのね。ヘンリー様もご存知でしたし、人の口に戸は立てられないというのは本当ですわね」
「姉さん?人の口に戸は立てられないというのはどういう意味?」
「あら、アーウィン知らないの?つまり人の噂話や評判というのは止められないということよ」
「へえ、初めて聞いたよ。こんなこともあるんだな」
アーウィンの聞き捨てならないセリフに、リリスは食事の手を止め「ちょっと、どういう意味?アーウィン?」と聞いた。それにアーウィンは「そんなに深い意味はないよ。ただ僕の知らないことを知ってる姉さん・・"お姉様"に感心してるんだよ」と言うとニッコリ笑った。リリスはその笑顔の裏に少し黒いものがある気がしたため、言い返そうとしたがダーウィンの言葉で止められた。
「そんなことよりリリス、殿下には失礼のないようにね」
「分かっておりますわ。そう言えば私、殿下とお会いしたことありますの?幼い頃は領地にずっといて、たまにここへ来ても城には行った記憶がないのですが」
「そうですよ、殿下は姉さんと会ったことがあるような口ぶりでしたよ。それに父上の策略がどうとか言っておられました」
リリスとアーウィンの言葉にダーウィンは「あー、策略・・・ねぇ。そう言われても仕方ないね」と呟くと、と真剣な眼差しでリリスを向いた。そんなダーウィンの様子にリリスは手にしていたナイフとフォークを置くと、居住まいを正した。
(ゴクリ・・・お父様の真剣な表情・・何を言われるの?あっ、私、何か小さい頃に殿下に対して不敬なことしちゃったとか?!だから領地には引きこもってた?・・・でも殿下の口ぶりからはそんな感じではなかったよね)
「リリス・・」
「はい・・」
(さあ、お父様・・・真実をどうぞ!言って!さあ!)
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「それは・・」
「それは・・?」
ダーウィンはここで肩をすくめて、小さく息を吐いた。
「・・・私からは言えないね。殿下がリリスに教えると言ってるんだ。ここで私が教えたら、陛下からも後で何を言われるか」
「ちょっと父上!"陛下"って言いましたか?」
アーウィンが驚いて、目を見開きながら尋ねた。アーウィンの様子にリリスは視線を向けた。
(あらあら、人の目ってあんなに大きく開くものなのね。瞳が落ちそうよ・・チワワ・・あー、いまのアーウィンは、まるでチワワよ。うふふ、そう思うと、日頃のお小言もキャンキャンとうるさい犬の鳴き声に聞こえるわねぇ。ふふふ・・・)
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「・・分かったよ。姉さんがそう言うなら、仕方ない・・・」
アーウィンは口ではそう言いながらも、納得してない心を無理やり押し込めるように口を固く閉じた。
(全くアーウィンはせっかちなんだから・・・)
リリスは苦笑すると、再びナイフとフォークを手に取り、食事を再開した。それにつられて、ダーウィンとアーウィンも料理を口に運び、こうしてアルバート家の晩餐は再開したのだった。
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