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第3章
第103話 リリス14歳 四角四面2
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「リベイラ・カスティージャ、そんなに大きな声でご令嬢に話しかけるのはどうかと思うよ」
「はっ、申し訳ありません!」
(ええと、要するにこの人が殿下の側近カスティージャ様で、アーウィンが側近仲間になったから、挨拶をしに来たということね?しっかし、固い!!これじゃあ、殿下は息が詰まるんじゃない?・・それより何か返さないと収集つかないわね、この状況)
「アーウィンのこと、よろしくお願いします。厳しくご指導いただいて構いませんことよ」
リリスはそう口にすると、微笑んだ。するとリベイラは、「はっ」と真っ直ぐだった体がさらに直立不動になった。
・・・・・・
(・・・んん?これで話は終わりじゃないの?ここは貴方が消えるタイミングでしょ?まだ言葉が足りない?うーん・・・うーん・・何か言うこと・・)
「ええっと、リベイラ様。ご要件がお済みでしたら・・・」
暫しの沈黙の後、アリーナが声をかけるとリベイラはハッと気付いた様子で会釈すると「失礼します!」と言って、去っていった。リベイラがいなくなったことで、見世物が終わったと解釈した周囲の生徒たちも散っていった。
「アリーナ、スタイラス様、ありがとう。助かったわ」
「彼、悪い人じゃないのよ。同じ土魔法だから授業で一緒だけど、周囲によく声をかけるし、真面目だし・・・ただすっごく固いのっ!今ので分かるでしょ?」
アリーナの説明にリリスたちは苦笑した。
「そうね。私なんてただアーウィンの姉ってだけなのに、わざわざ挨拶なんて」
「リリス様はこれから大変かもしれないわね。アーウィン様目当てで絡んでくる方々がきっと増えるわよ。なんと言っても、その向こうに殿下が見えるから」
エリーゼの不吉な言葉にリリスは心底嫌そうな表情で空を見上げた。そしてアリーナがそんなリリスの肩を慰めるようにポンポンと叩いた。
(はぁぁぁ、私の平穏な学園生活・・・殿下なんて会ったことないし、私無関係なんだけど・・勘弁して欲しい)
しかしリリスのアーサー第一王子に会ったことがないという記憶が覆されるのは割とすぐのことだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日、午前中に健康診断を済ませたリリスたちはランチにはまだ早い時間だったが、カフェテリアへ来ていた。窓際の席へ向かう途中、またしてもリリスは「姉上」と呼び止められた。振り向くと、アーウィンがいた。
「あら、アーウィン。どうかしたの?そう言えば、貴方も健康診断はもう済・・」
そこでアーウィンの影にいた人物を見つけたリリスは、言葉を止めた。そこに居たのは、昨日の入学式で代表挨拶をしたアーサー第一王子だった。その後ろにリベイラともう一人赤毛の男子生徒がいた。赤毛の人物は、アーウィンと同時に側近になったニジェール伯爵家の子息だった。
「「殿下!」」
アリーナたちは、深々と頭を下げた。リリスもつられて慌てて、頭を下げる。
(油断してた。アーウィンは殿下の側近なんだから、学園では常に側にいる。アーウィンを見たら、殿下がいる!と思わないといけなかった!)
「そんなにみんな畏まらないでよ。ああ、スタイラスも居たのか。久しぶりだね」
声をかけられたスタイラスは頭を上げ、「はい、殿下。この度は学園ご入学おめでとうございます」
スタイラスの言葉にアーサーは片手を上げて満足そうに頷くと、リリスの方へ向いた。そしてニッコリ微笑みリリスも驚くセリフを口にした。
「リリス・アルバート公爵令嬢も久しぶりだね」
・・・・・・
アーサーの口から出た言葉に固まったリリス。
(!!!えっと・・・いま殿下は"久しぶり"って言ったわね。私、お会いしたことないはず・・・誰かと勘違いなさってる?!)
「殿下?姉上と面識がお有りでしたか?」
アーウィンも不思議に思ったのかアーサーに尋ねた。それにアーサーは笑いながら言った。
「やっぱり覚えてないのか。公爵の作戦勝ちだなぁ」
「はっ、申し訳ありません!」
(ええと、要するにこの人が殿下の側近カスティージャ様で、アーウィンが側近仲間になったから、挨拶をしに来たということね?しっかし、固い!!これじゃあ、殿下は息が詰まるんじゃない?・・それより何か返さないと収集つかないわね、この状況)
「アーウィンのこと、よろしくお願いします。厳しくご指導いただいて構いませんことよ」
リリスはそう口にすると、微笑んだ。するとリベイラは、「はっ」と真っ直ぐだった体がさらに直立不動になった。
・・・・・・
(・・・んん?これで話は終わりじゃないの?ここは貴方が消えるタイミングでしょ?まだ言葉が足りない?うーん・・・うーん・・何か言うこと・・)
「ええっと、リベイラ様。ご要件がお済みでしたら・・・」
暫しの沈黙の後、アリーナが声をかけるとリベイラはハッと気付いた様子で会釈すると「失礼します!」と言って、去っていった。リベイラがいなくなったことで、見世物が終わったと解釈した周囲の生徒たちも散っていった。
「アリーナ、スタイラス様、ありがとう。助かったわ」
「彼、悪い人じゃないのよ。同じ土魔法だから授業で一緒だけど、周囲によく声をかけるし、真面目だし・・・ただすっごく固いのっ!今ので分かるでしょ?」
アリーナの説明にリリスたちは苦笑した。
「そうね。私なんてただアーウィンの姉ってだけなのに、わざわざ挨拶なんて」
「リリス様はこれから大変かもしれないわね。アーウィン様目当てで絡んでくる方々がきっと増えるわよ。なんと言っても、その向こうに殿下が見えるから」
エリーゼの不吉な言葉にリリスは心底嫌そうな表情で空を見上げた。そしてアリーナがそんなリリスの肩を慰めるようにポンポンと叩いた。
(はぁぁぁ、私の平穏な学園生活・・・殿下なんて会ったことないし、私無関係なんだけど・・勘弁して欲しい)
しかしリリスのアーサー第一王子に会ったことがないという記憶が覆されるのは割とすぐのことだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日、午前中に健康診断を済ませたリリスたちはランチにはまだ早い時間だったが、カフェテリアへ来ていた。窓際の席へ向かう途中、またしてもリリスは「姉上」と呼び止められた。振り向くと、アーウィンがいた。
「あら、アーウィン。どうかしたの?そう言えば、貴方も健康診断はもう済・・」
そこでアーウィンの影にいた人物を見つけたリリスは、言葉を止めた。そこに居たのは、昨日の入学式で代表挨拶をしたアーサー第一王子だった。その後ろにリベイラともう一人赤毛の男子生徒がいた。赤毛の人物は、アーウィンと同時に側近になったニジェール伯爵家の子息だった。
「「殿下!」」
アリーナたちは、深々と頭を下げた。リリスもつられて慌てて、頭を下げる。
(油断してた。アーウィンは殿下の側近なんだから、学園では常に側にいる。アーウィンを見たら、殿下がいる!と思わないといけなかった!)
「そんなにみんな畏まらないでよ。ああ、スタイラスも居たのか。久しぶりだね」
声をかけられたスタイラスは頭を上げ、「はい、殿下。この度は学園ご入学おめでとうございます」
スタイラスの言葉にアーサーは片手を上げて満足そうに頷くと、リリスの方へ向いた。そしてニッコリ微笑みリリスも驚くセリフを口にした。
「リリス・アルバート公爵令嬢も久しぶりだね」
・・・・・・
アーサーの口から出た言葉に固まったリリス。
(!!!えっと・・・いま殿下は"久しぶり"って言ったわね。私、お会いしたことないはず・・・誰かと勘違いなさってる?!)
「殿下?姉上と面識がお有りでしたか?」
アーウィンも不思議に思ったのかアーサーに尋ねた。それにアーサーは笑いながら言った。
「やっぱり覚えてないのか。公爵の作戦勝ちだなぁ」
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