上 下
113 / 202
第3章

第103話 リリス14歳 四角四面2

しおりを挟む
「リベイラ・カスティージャ、そんなに大きな声でご令嬢に話しかけるのはどうかと思うよ」

「はっ、申し訳ありません!」

(ええと、要するにこの人が殿下の側近カスティージャ様で、アーウィンが側近仲間になったから、挨拶をしに来たということね?しっかし、固い!!これじゃあ、殿下は息が詰まるんじゃない?・・それより何か返さないと収集つかないわね、この状況)

「アーウィンのこと、よろしくお願いします。厳しくご指導いただいて構いませんことよ」

リリスはそう口にすると、微笑んだ。するとリベイラは、「はっ」と真っ直ぐだった体がさらに直立不動になった。

・・・・・・


(・・・んん?これで話は終わりじゃないの?ここは貴方が消えるタイミングでしょ?まだ言葉が足りない?うーん・・・うーん・・何か言うこと・・)

「ええっと、リベイラ様。ご要件がお済みでしたら・・・」

暫しの沈黙の後、アリーナが声をかけるとリベイラはハッと気付いた様子で会釈すると「失礼します!」と言って、去っていった。リベイラがいなくなったことで、見世物が終わったと解釈した周囲の生徒たちも散っていった。

「アリーナ、スタイラス様、ありがとう。助かったわ」

「彼、悪い人じゃないのよ。同じ土魔法だから授業で一緒だけど、周囲によく声をかけるし、真面目だし・・・ただすっごく固いのっ!今ので分かるでしょ?」

アリーナの説明にリリスたちは苦笑した。

「そうね。私なんてただアーウィンの姉ってだけなのに、わざわざ挨拶なんて」

「リリス様はこれから大変かもしれないわね。アーウィン様目当てで絡んでくる方々がきっと増えるわよ。なんと言っても、その向こうに殿下が見えるから」

エリーゼの不吉な言葉にリリスは心底嫌そうな表情で空を見上げた。そしてアリーナがそんなリリスの肩を慰めるようにポンポンと叩いた。

(はぁぁぁ、私の平穏な学園生活・・・殿下なんて会ったことないし、私無関係なんだけど・・勘弁して欲しい)

しかしリリスのアーサー第一王子に会ったことがないという記憶が覆されるのは割とすぐのことだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


翌日、午前中に健康診断を済ませたリリスたちはランチにはまだ早い時間だったが、カフェテリアへ来ていた。窓際の席へ向かう途中、またしてもリリスは「姉上」と呼び止められた。振り向くと、アーウィンがいた。

「あら、アーウィン。どうかしたの?そう言えば、貴方も健康診断はもう済・・」

そこでアーウィンの影にいた人物を見つけたリリスは、言葉を止めた。そこに居たのは、昨日の入学式で代表挨拶をしたアーサー第一王子だった。その後ろにリベイラともう一人赤毛の男子生徒がいた。赤毛の人物は、アーウィンと同時に側近になったニジェール伯爵家の子息だった。

「「殿下!」」

アリーナたちは、深々と頭を下げた。リリスもつられて慌てて、頭を下げる。

(油断してた。アーウィンは殿下の側近なんだから、学園では常に側にいる。アーウィンを見たら、殿下がいる!と思わないといけなかった!)

「そんなにみんな畏まらないでよ。ああ、スタイラスも居たのか。久しぶりだね」

声をかけられたスタイラスは頭を上げ、「はい、殿下。この度は学園ご入学おめでとうございます」

スタイラスの言葉にアーサーは片手を上げて満足そうに頷くと、リリスの方へ向いた。そしてニッコリ微笑みリリスも驚くセリフを口にした。

「リリス・アルバート公爵令嬢も久しぶりだね」

・・・・・・

アーサーの口から出た言葉に固まったリリス。

(!!!えっと・・・いま殿下は"久しぶり"って言ったわね。私、お会いしたことないはず・・・誰かと勘違いなさってる?!)

「殿下?姉上と面識がお有りでしたか?」

アーウィンも不思議に思ったのかアーサーに尋ねた。それにアーサーは笑いながら言った。

「やっぱり覚えてないのか。公爵の作戦勝ちだなぁ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう

さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」 殿下にそう告げられる 「応援いたします」 だって真実の愛ですのよ? 見つける方が奇跡です! 婚約破棄の書類ご用意いたします。 わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。 さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます! なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか… 私の真実の愛とは誠の愛であったのか… 気の迷いであったのでは… 葛藤するが、すでに時遅し…

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

悪役令嬢ってこれでよかったかしら?

砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。 場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。 全11部 完結しました。 サクッと読める悪役令嬢(役)。

嫌われ者の悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

深月カナメ
恋愛
婚約者のオルフレット殿下とメアリスさんが 抱き合う姿を目撃して倒れた後から。 私ことロレッテは殿下の心の声が聞こえる様になりました。 のんびり更新。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

処理中です...