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第2章
第97話 リリス13歳 商会訪問3
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ミレドールの品を堪能したリリスたちは、部屋を後にした。そしてさっきの言葉通りベイガーは、リリスの気になったというアクセサリーが並んだテーブルにみんなを連れてきた。
「リリス様の気になったのは、どれかしら?」
「あっ、これです!」
リリスが指したのは、ブレスレットだった。金地にチョコレートブラウンの石が付いている。そしてよく見ると、その石に金色のキラキラが混じっていた。
「これはブラウンダイヤモンドねぇ。それに金色の混じり物が入っているから、安価な物よ。とても公爵令嬢が身に付ける代物じゃないけど、いいのかしら」
「この石が気に入ったので。こちら購入しても構いませんか?」
ベイガーが「もちろんよぉ」と手を叩いて喜んだ。そしてリリスは「請求は屋敷へお願いします」と言うと、大事そうにブレスレットを手に取った。
アリーナがブレスレットをじっと見て「あぁ、なるほどね」と言った。それにリリスは微笑むと「似てるでしょ?」と言い、腕にはめた。二人のやり取りに他の三人も「あー」と察した様子だった。
その後ベイガーは仕事があるからと言って去っていき、リリスたちは最初の部屋へ戻った。そして、しばらくみんなで会話を楽しんだあと、商会を後にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
屋敷に戻ったリリスは、明日領地へ戻ると言うローズたちと賑やかな夕食を共にしていた。
「エルムンド商会はどうだったの?」
ローズが食事の手を止めて、聞いた。
「ええ、アシュリー様のお父様にお会いしましたの。とてとステキな方でしたわ。それにミレドールの品はどれも噂通りのきれいなブルーでしたわ」
「ほう、リリスは何を見てきたんだい?」
ダーウィンも会話に加わった。
「ツボにラペルピン、それに生地を拝見したんです。特にラペルピンの石は見事でしたわ。光の加減で淡いブルーがピンクやグリーン、ほかにもいろんな色に変化するんですよ」
「そうかそうか」とダーウィンは頷くと、ローズに目配せしたことには誰も気付かなかった。
「ただそのラペルピンはどこかの高貴な方が購入された後だと仰ってましたわ。あんな珍しい品を手に入れるなんて、王族かもしれませんわね」
リリスの言葉にローズが「そうそう」と言って微笑むと、アーウィンに視線を移した。それにダーウィンも手を止めて、アーウィンに向き直った。両親の様子にアーウィンは「なっ、なに?」と少し戸惑いの表情を浮かべた。そしてダーウィンはリリスたちが驚く事を口にした。
「今日、王家から打診があってね。来年アーサー殿下の入学を機にアーウィンを殿下の側近に付けたいとの申し出があったんだよ。ありがたいお話だから受けたからね。アーウィン、頑張りなさい」
「えっ!僕がアーサー殿下の側近?!」
アーウィンは非常に光栄な話に固まった。
「お父様、殿下の側近にはすでにカスティージャ伯爵家がいたはずでは?」
リリスは驚きもそこそこに口を挟んだ。
「うむ、ただカスティージャ伯爵家の令息はリリスと同学年だろう?今度の殿下入学を機に同学年の貴族から、うちとニジェール伯爵家が選ばれだというわけだよ。それにダートライアル学院からも選ばれてるはずだよ」
「まあ、そうなんですの?!」
リリスの納得した様子にダーウィンは頷くと、アーウィンに言った。
「アーウィン。私が陛下をお支えしているように、将来、お前が殿下を誠心誠意お支えしなさい。期待しているよ」
「アーウィン、お父様も私も協力は惜しみません。頑張るのですよ」
ローズも感慨深げに頷くと、優しく声を掛けた。両親の言葉にアーウィンは「はい!お任せください」と力強く宣言したのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日、ローズたちは朝早く領地へと戻っていった。去り際にアーウィンは何とも憎たらしいセリフを置き土産として言い放ったことに、リリスは虫の居所が悪かった。
「姉さん、今度来たときはもっと成長しててよね。殿下側近の僕の姉として恥ずかしくないようにね。よろしく」
馬車を見送り自室に戻ったリリスは扉を閉めるなり「アーウィンのバカぁ」と令嬢らしからぬ声で叫んだ。その声にベッドで寛いていたネージュとメイルはビクッと顔を上げ、何事かとリリスを見た。そして廊下ではパタパタと走ってくる足音がし、扉の前で止まると「お嬢様、いかがされましたか?」とマリーの心配する声がした。リリスは深呼吸すると「マリー、驚かせてごめんなさい。大丈夫だから」と声を掛け、侍女を返した。
そうして屋敷には再び束の間平穏が戻ってきた。
「リリス様の気になったのは、どれかしら?」
「あっ、これです!」
リリスが指したのは、ブレスレットだった。金地にチョコレートブラウンの石が付いている。そしてよく見ると、その石に金色のキラキラが混じっていた。
「これはブラウンダイヤモンドねぇ。それに金色の混じり物が入っているから、安価な物よ。とても公爵令嬢が身に付ける代物じゃないけど、いいのかしら」
「この石が気に入ったので。こちら購入しても構いませんか?」
ベイガーが「もちろんよぉ」と手を叩いて喜んだ。そしてリリスは「請求は屋敷へお願いします」と言うと、大事そうにブレスレットを手に取った。
アリーナがブレスレットをじっと見て「あぁ、なるほどね」と言った。それにリリスは微笑むと「似てるでしょ?」と言い、腕にはめた。二人のやり取りに他の三人も「あー」と察した様子だった。
その後ベイガーは仕事があるからと言って去っていき、リリスたちは最初の部屋へ戻った。そして、しばらくみんなで会話を楽しんだあと、商会を後にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
屋敷に戻ったリリスは、明日領地へ戻ると言うローズたちと賑やかな夕食を共にしていた。
「エルムンド商会はどうだったの?」
ローズが食事の手を止めて、聞いた。
「ええ、アシュリー様のお父様にお会いしましたの。とてとステキな方でしたわ。それにミレドールの品はどれも噂通りのきれいなブルーでしたわ」
「ほう、リリスは何を見てきたんだい?」
ダーウィンも会話に加わった。
「ツボにラペルピン、それに生地を拝見したんです。特にラペルピンの石は見事でしたわ。光の加減で淡いブルーがピンクやグリーン、ほかにもいろんな色に変化するんですよ」
「そうかそうか」とダーウィンは頷くと、ローズに目配せしたことには誰も気付かなかった。
「ただそのラペルピンはどこかの高貴な方が購入された後だと仰ってましたわ。あんな珍しい品を手に入れるなんて、王族かもしれませんわね」
リリスの言葉にローズが「そうそう」と言って微笑むと、アーウィンに視線を移した。それにダーウィンも手を止めて、アーウィンに向き直った。両親の様子にアーウィンは「なっ、なに?」と少し戸惑いの表情を浮かべた。そしてダーウィンはリリスたちが驚く事を口にした。
「今日、王家から打診があってね。来年アーサー殿下の入学を機にアーウィンを殿下の側近に付けたいとの申し出があったんだよ。ありがたいお話だから受けたからね。アーウィン、頑張りなさい」
「えっ!僕がアーサー殿下の側近?!」
アーウィンは非常に光栄な話に固まった。
「お父様、殿下の側近にはすでにカスティージャ伯爵家がいたはずでは?」
リリスは驚きもそこそこに口を挟んだ。
「うむ、ただカスティージャ伯爵家の令息はリリスと同学年だろう?今度の殿下入学を機に同学年の貴族から、うちとニジェール伯爵家が選ばれだというわけだよ。それにダートライアル学院からも選ばれてるはずだよ」
「まあ、そうなんですの?!」
リリスの納得した様子にダーウィンは頷くと、アーウィンに言った。
「アーウィン。私が陛下をお支えしているように、将来、お前が殿下を誠心誠意お支えしなさい。期待しているよ」
「アーウィン、お父様も私も協力は惜しみません。頑張るのですよ」
ローズも感慨深げに頷くと、優しく声を掛けた。両親の言葉にアーウィンは「はい!お任せください」と力強く宣言したのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌日、ローズたちは朝早く領地へと戻っていった。去り際にアーウィンは何とも憎たらしいセリフを置き土産として言い放ったことに、リリスは虫の居所が悪かった。
「姉さん、今度来たときはもっと成長しててよね。殿下側近の僕の姉として恥ずかしくないようにね。よろしく」
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そうして屋敷には再び束の間平穏が戻ってきた。
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